「高瀬おまたせー。お昼ごはん出来たよ」
「ありがとう小林。いただきます」
キッチンの机に並べられる、久しぶりの(自分以外が作った)手料理に、手を合わせ、感謝する俺。ごはん、卵焼き、納豆、リンゴ!
「いただきます!」
たぁくんが続けて挨拶し、
「いたます!」
めぇくんもそれにならう。
言うまでもないかもしれんが、ここはばやしこの家だ。LINEで会話しているときに、今日は弟たちの子守を頼まれていると聞いて、それでもいいとわがままを言って来させてもらった。
原作8巻までの知識しか無いので、ばやしこに弟が2人いることは知っていたが、たぁくんとめぇくんとは正真正銘の初エンカウントとなる。
「なんか悪いね! 子守りまでしてもらっちゃって」
「大丈夫。俺こう見えて精神年齢高いんで」
将来的には自分の義弟(おとうと)たちになるわけだし、好感度稼がないとな……。
「ライトはじじい」
「じじー」
くっ。子供に正体を見抜かれている。ばやしこには見抜かれていなさそうなのが救いか。
「高瀬はじじいなのか?」
いや、見抜かれてたか。さすが女子の観察眼、恐るべし。
「まあ、その……母さんが死んだときショックでさ。ちょっと精神年齢が30才まで上がったんだよね、俺」
「ちょっとで済ませていい話か?」
「うーん、ちょっとじゃ済まないかも。父さんもびっくりして、医者にも何度もかかったし」
はは……と笑いながらじゃないと話せないことだ。さすがに小学生にもなって、実は別の世界から転生してきたんですとか言われても信じられないだろう。タイミングもタイミングだ。母の死のショックで頭がおかしくなったというほうがよっぽど考えられる。だから俺は――
「よしよし。辛かったな……」
椅子に座っていた俺は、立っているばやしこに抱きしめられる。
あれ? 俺、何で泣いて……。
そうだ。俺は――辛かった。転生がどうとかで頭が混乱していて、母さんが死んで悲しくて、泣きたいのに泣くタイミングを逃して、俺は――本当は、たくさん泣きたかったんだ。
「ごめん母さん……俺、泣いてやることもできなくて……」
ぽたぽたと涙を流す俺。ばやしこの前で、カッコ悪いな、と思いながらも、止めることができずにいる。
「よしよし」
「たぁもよしよしする」
「めぇも」
その後、めちゃくちゃ泣いた俺を、ばやしこはよしよしし続けてくれて「辛くなったらいつでも言いなよ? こっちは弟二人もいて慣れてんだから!」と笑って元気づけてくれて。
こんなんばやしこにガチで惚れ直すしかないだろ!! 精神年齢が何才とか、原作クラッシュとか知ったことか。もうばやしこしか勝たん!! 将来的に入籍します!!
そんな感じで3人に弄られながら、子守の仕事を手伝い、その日の夕方に帰った俺こと高瀬ライトなのであった。