「あーうちの山田、水着とかNGなんで~~」
早朝、ナンパイこと南条ハルヤ先輩が山田に猛アタックを仕掛けているのを、小林がガードしている。ものすごく嫌な光景だ。
僕は聞き耳を立て、横目でチラチラと様子をうかがう。
「肌の露出もNGなんすよ~~」
「いや、普通の服でいいんだけど……普通にうちにゲームとかヤリに来ない?」
ナンパイの露骨なお誘いに、女子バスケ部の小林が、鉄壁のディフェンスを見せている。
「あ、でも、俺としては、小林さんが来てくれたら嬉しいかなって……」
なるほど。将を射んと欲すればまず馬を射よ、か。
外堀を埋めるためにターゲットを変えたナンパイ……。このナンパイのお誘いに、小林は一体どう対応する?
「あー、私『も』行けないです。ほいほい他の男についてかないようにって、高瀬に言われてるんで……」
「高瀬くん……? ああ、あの学年1位の?」
「そうなんすよ。まだ付き合ってはいないんすけど、たまに渋谷でデートしたりする仲ですし」
「え? ちぃ? そうなの?」
「うん。そうだよ。高瀬んちゲームたくさんあるし、いつでも来ていいよって言われてる」
「そ、そうなんだ……」
僕は高瀬から話を聞いているから驚きはしないが、ナンパイは驚いているようだった。まさか小林に恋愛経験があるとは思わなかったのだろう。
「そうなんすよ~~。だから南条先輩と遊ぶのはNGですね~~」
朝のHRの時間が近づき、ナンパイが自分のクラスに引き上げていく。よし! よくやった小林!
「皆おはようー」
高瀬もいいタイミングで入ってきたな!
「ちぃ、高瀬くんとどこまで進んでるの?」
放課後、高瀬が帰宅したタイミングで、山田杏奈が親友の小林ちひろに質問をぶつける。
「あ、そうか。山田に言ってなかったっけ。夏休みに、高瀬と渋谷のバスケショップ行ってさー。色々消耗品を買ってもらったんだよ」
「し、渋谷デート……」
山田が驚愕している。
「そんで、もらってばっかじゃ悪いからってうちに来てもらったんだけど……ほら、私、弟二人いるじゃん。その面倒を見てもらったりしてさー」
「い、家への招待……家族ぐるみの付き合い……」
そこは既に山田も似たようなことしてるだろ。
「そんで最近はLINEでよく話す感じかなー」
チラっとこっちを見る山田。
「わ、私も市川とよくLINEするし……」
「ほーん。山田は市川くんと仲いいもんなー」
「萌としてはかなり複雑な心境なんだよね……ばやしこから『高瀬にデートに誘われたんだけど、どうしたらいい?』ってLINEが来たときには地球滅亡するかと思ったし……」
「私も意外だったなー。高瀬、バスケ女子が好きって言ってたけど、ここまであからさまにばやしこ狙いだったとは思わなかった」
関根と吉田が失礼なことを言うと、小林が応える。
「まあ私も恋愛はよくわかんないんだけどさ、高瀬とは今は友達以上親友未満みたいな感じかな!」
山田はなぜチラチラとこっちを見るんだ。
「い、いいなあ……私はまだ漫画を貸しに市川の家に行ったくらいで……」
「え? 杏奈、最近イッチの家に行ったん?」
「あ、うん。自由研究のときぶり、2回目だよ。市川のお父さん、お母さん、お姉ちゃんとも会ったし」
「マ!?」
教科書を眺めて聞いてないふりをしていると、関根が近づいてきた。
「イッチ……まさかとは思うけど、杏奈を部屋に連れ込んで、押し倒したりしてないよね?」
「……し、してない!」
危なかった……関根にうっかり本当のことを言ったら、いくら事故でそうなったとはいえ、
だがその直後、関根は赤面する山田の顔と、僕の顔を交互に見て――
「え? ヤッた!?」
ゲスい推測を声に出すのだった。
注:ヤッていません