情報処理部の部室で高瀬と話すようになってからしばらくして。
今日、僕はなぜか高瀬と恋バナをしていた。
「バスケ部の女子なんだけど」
「へー……バスケ部……」
おいおいおいおい、イケメン学年1位様の狙いはやっぱり学園カースト頂点の山田杏奈か???? 僕の殺戮のカウントダウンが始まる前にLv999のナイト様が立ちはだかるという寸法か????
僕はその瞬間、めちゃくちゃ焦った。心臓はバクバクするし、体はガタガタ震えだすし、もう何が何だか分からんほどに焦った。
せっかく仲良くなった高瀬が、イケメン学年1位様が、山田を狙っているという推測が当たっていたとしたら、正直どうなっていたか分からない。
「ぶっちゃけ小林なんだよね」
その台詞に、僕がどれだけ安堵したか。もう、それが一つの答えだったのだろう。
僕は高瀬のことが好きだ。もちろん同性の友達として、だが。
じゃあ、山田は? あんなに殺したいと思っていた相手に、誰かが想いを寄せている……かもしれない、と思うだけで発生するこの良く分からない感情は何だ?
「高瀬は、や、山田のことはどう思ってる?」
僕は思わず訊いてしまった。馬鹿!!!! わざわざ終わった話を蒸し返して何を聞いてるんだ僕は!!!!
「そうだなあ。俺が言わなくても市川なら気付くと思うけど……山田は外見は大人びていると思う。でも、心は市川と同じ、中学生の……女子だと思う」
「中学生の女子?」
あの山田が?
「そう。中学生の男子が青春したいように、山田も中学生の女子っぽい青春を夢見てる」
高瀬が言うことは、なぜだか事実であるように思われた。僕が山田のことを殺したいと考えているように、山田も中学生の女子っぽい青春を……たとえば恋愛のことを考えているのだろうか。
しばらく僕は山田のことについて考えていた。
図書室に居ても、家に帰っても。夜、自分のベッドでシコって眠りに落ちる直前まで。
それは、山田を殺したいと思う想いよりも、なんだか単純で。もし山田が僕のほうを見てくれたら、なんて、絶対にありえない妄想をして。
「んー。京ちゃん、なんか最近ぼーっとしてない? 好きな子でもできた?」
おねえに指摘されるまで、僕はその気持ちが何なのかにすら、まったく気づかないほどだった。
「で、できてない!!」
「えー。その反応、なんか怪しいなー」
「あ、怪しくもないから!!」
ご馳走様!と叫んで、僕は朝ご飯を食べ終え、バッグを持って自転車で学校に向かった。
学校に行けば、高瀬と……山田がいる。陰で見下されていたとしても、絶対に振り向いてくれなくても、今は、それでいいと思えた。