僕ヤバ世界のヤバイやつ   作:クラゲ大好き侍

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僕ヤバ原作10巻が届いたので、初心に返って初投稿です。


僕は三者面談した

 午前中の休み時間。

 

「あー、彼ピ欲しいー」

 

「最近萌ちゃんそればっかりだな……」

 

 教室内で関根がまたいつもの台詞を言い、吉田が呆れている。

 そして、小林の上に座る山田。いつもの女子たちの光景。

 

「そういやイッチ、今週あたり三者面談あるじゃん。成績とかどうよ?」

 

 関根から突如振られた話題。

 

「が、学年2位はキープしてるし小テストの結果も悪くないが、逆に言うとそれだけだな。あ、あんまり積極的に授業には取り組めてはいない。体育は見学に回ることも多いし……」

 

 そう。地獄の三者面談……。母さんが学校に来て、担任の先生と話す……。そういうイベントだ。

 あれ? じゃあライバルの高瀬は? 気になって視線を向けると。

 

「ん? 市川。心配しなくても大丈夫だぞ。三者面談には父さんが都合付けて来てくれるらしいから、俺のことは気にするな」

 

「あ、ああ」

 

 でも、僕には分かる。口では強がっているが、高瀬が大丈夫じゃないときの表情をしているから。

 僕は忘れていたんだ。三者面談に母親が来るということ。それ自体が、環境に恵まれている証拠なのだということを……。

 

 

 

 

 放課後。

 

「あ、市川のお母さんだ」

 

 廊下にある待ち合いの椅子。柱の陰から出ようとしたところで、山田の声が聞こえる。

 山田の「や」と市川の「い」……。普通、名字の順序的には一緒にならんだろ……。なんでこうなった……!?

 

「山田杏奈の母です」

 

 キリっとした教育ママ的な姿を見せる山田母に対して、

 

「市川京太郎の母です」

 

 特におめかしもしていない普通の母さん。き、気まずい……。ご、合流しづらい……。

 

 柱の陰に隠れて、僕は親同士の遭遇をやりすごす。

 

「それにしても京ちゃん遅いわね……」

 

「そこの柱の陰に隠れてたりして!」

 

 山田!! なんでそこで的確に僕の行動をトレースしてくるんだ!! ますます登場しづらくなるじゃないか!!

 

「次、山田杏奈さん」

 

「あ、呼ばれたので行ってきます!」

 

 山田と山田母が呼ばれた直後、僕はスッと柱の陰から現れ、着席する。

 

「あら、京ちゃんホントに柱の陰に居たのね……」

 

「やめてくれマジで恥ずかしい死ぬ」

 

 

 

 

 そしてしばらくして呼ばれ、始まる地獄の三者面談。

 

「まず、市川京太郎くんは、非常に良い成績を維持しています。授業の予習復習もしているようですし、そちらについては心配していません。

 体育は苦手で、見学に回ることもあるようですが、得意なことと苦手なことがあるのは普通のことです」

 

「はい」

 

「ですが、これだけは言っておきたい。市川京太郎くんには、いつも助けられています」

 

 先生はいったんそこで言葉を区切る。

 

「というと?」

 

 母さんが身を乗り出して訊くと、

 

「数年前に母親を亡くしたばかりの、高瀬ライトくんの良きライバルとして、同じ部活動の友人として、心の支えになってくれている。これはなかなか出来ないことです」

 

 先生が僕をほめる。

 

「た、高瀬のほうこそ、僕の心の支えになっています。ライバル宣言をされたのは高瀬からですし、林間学校に行くように強く勧めてくれたのも高瀬です」

 

「それでも、です。どんな事情があっても、クラスメイトと対等に接することができる。それだけでも、とても立派なことです」

 

「僕は……ライバルの高瀬と、これからも切磋琢磨していきたい。それだけです」

 

「京ちゃん……」

 

 ここまでは褒められてばかりだが……これはあれか? 上げて落とすパターンか?

 

「また、最近の市川京太郎くんは、具体的に誰とは言いませんが、別のクラスメイトともよく会話するようになってきています」

 

 や、山田のことか~~? 先生には全部筒抜けか~~??

 

「担任の私としては、市川京太郎くんに『学校に行くのが楽しい』と思ってもらえるなら、本人にとっても、他のクラスメイトにとっても、良い影響があるのではないかと思っています」

 

 確かに、最近の僕は学校が楽しいと感じている。それは高瀬が居て……山田が居るから。

 もっというなら、恋というものを知ったから。

 

「が、頑張ります」

 

 そして、地獄の三者面談は終わった。

 

 

 

 

「京ちゃん、高瀬くんと仲良くやれてるみたいね。別のクラスメイトっていうのも気になるけど……もしかして女の子かしら?」

 

「学校でそういう話をするな! 恥ずかしいだろ!」

 

「恥ずかしいってことは女の子なのねー。あらあらうふふ」

 

「誘導尋問よくない!」

 

 そんなやりとりをしていると、下駄箱の前にいる山田が目に入った。振り向いた山田と目が合って。

 

「あ、市川! また明日ね!」

 

「お、おう」

 

 隣に母さんがいるにも関わらず、僕は山田の笑顔に見惚(みと)れてしまっていた。




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