時は少し
「いまごろ杏奈とばやしこはダブルデートの真っ最中か……」
関根がポテトをつまみながら愚痴を吐くと、吉田がそれを受けた。
「高瀬がばやしこ狙いなのは知ってたが、市川は山田狙いだったのか?」
関根はメロンソーダをすすりながら、ぼそっと言う。
「うんにゃ。それ、逆かもしれん……」
「は?」
吉田がポテトを持ったまま、動きを止める。
「イッチ(市川のこと)は、ばやしこ曰く、いつも図書室にいるらしい。で、杏奈が最近お昼休みや放課後のつきあいが悪いのは……」
「マジか。山田が市川に会いに行ってるってことか?」
「私もお邪魔虫になるのは嫌だから直接見たわけじゃないし、確証は無いんだけどね……」
関根がストローでメロンソーダを飲む。吉田もコーラを飲んだ。パチパチと音がする。
「あー、彼ピ欲しいー☆ って言ってるだけでスパダリがやって来るわけじゃないのは分かってる。でも付き合ってはいない段階とはいえ、こうも急激な進展を立て続けに見せつけられると……脳が破壊される……」
「まあ、置いてきぼりくらった気分にはなるよな……」
コップを振って氷を溶かしながら、関根は続けて語る。
「料理部に籍を置いてはいるものの、彼ピに手料理を振舞えるのはいつになることやら……?」
「足立とかは?」
「あれは女子なら誰でもいいタイプでしょ。できれば私より身長と学力が上で……」
「それ学年4位が言っていい台詞じゃないだろ……」
「そこなんだよね……同学年で高望みしすぎとなると、あとは先輩って手もあるけど……あんまり接点無いし……。もしや高校か大学まで、彼ピはおあずけ? はぁ~」
関根のため息に、吉田も同調する。
「うちの中学、私に睨まれただけでビビる、気合の足りないヤツしかおらんもんな」
「うん。……ん? LINEの通知?」
『市川にぬいぐるみ取ってもらった(写真)。体調早く良くなるといいね!』
「杏奈、さっそく
「これ取るの難しいやつじゃね? 高瀬はともかく、市川の財布大丈夫か?」
「高瀬くんちで作り置きの料理作るバイトしてるらしいし、たぶん大丈夫でしょ」
関根がストローを吸うと、ジュースが氷だけになる。吉田も同じく。二人は追加のドリンクを頼むために、席を立った。
「……高瀬のやつ、未来予知でもしてんのかな?」
「ほんとそれな!」
当たらずとも遠からずな推理をしながら、二人の暇な時間は過ぎていく……。