「俺は見たぞ! 市川が渋谷でぬいぐるみを取ってるところを!」
休み時間の学校で繰り広げられる男子の会話の一部。そこに一瞬で気を取られる。
「あ、やば……」
俺こと高瀬ライトはしまったという顔をする。そういや足立の恋心のことすっかり忘れてたわ。
原作が二年生スタートだから、約1年早いんだよな。でも恋に早いも遅いも無いよな……。
次の理科は移動教室だから、今は女子グループが移動中でごっそり不在なのが救いか。
「ちょっと見てたら、なんかすげー綺麗なお姉さんに取ったぬいぐるみあげててよー。どこで会ったんだよ。紹介してくれ!」
あっ……デート相手が山田だとは気付いていない感じか。
「恋愛で市川に先を越された!? という脳破壊から立ち直るのに1週間かかったし、クラスで言っていいものかさらに1週間悩んだんだけどよー。どうなんだ市川、ホントのところはー?」
市川にウザ絡みに行く足立。やめたほうがいいぞ。今の市川は強いから……。
「あれは山田だ」
初手、エターナルフォースブリザード。空気ごと周囲を凍らせる。相手は死ぬ。
「や、山……田……?」
よほどびっくりしたのか、目を白黒させる足立。
「知らないのか。山田はモデル業をやっていて、身長に合わせた私服を着るといつもと違ってすごく大人びて見えるんだ」
とたんに饒舌になる市川。
「モ、モデルやってるのは知ってる。でもなんで市川と渋谷に……」
「それは俺から説明しよう」
「高瀬!!」
下ネタにもたまに応えてやることで
「その日は女子グループと俺と市川で渋谷に遊びに行くことになったが、女子グループにたまたま体調不良者が出て、4人になったんだ。つまり、俺、小林、市川、山田の4人で遊んでいた形になるな」
「そ、そうはならんだろ……」
「なっとるやろがい!!」
ボケとツッコミの応酬。
「くっ……、市川……後で詳しく聞かせろ……俺だけにこっそりナニがあったのか教えてくれ……」
「なんで自分から脳を破壊しに来るんだ?」
鬼気迫る表情の足立に、市川は理解不能な目を向ける。
「はいはい。みんな理科室に移動しないと次の授業に遅れちゃうよ」
手を叩いて皆を誘導するのも学年一位のつとめだ。
「ファッション誌の今月号、明日持ってくる」
市川が足立にそう言うと、足立はとたんに掌を返し、マジかよ! ファッション誌って高いから助かる! 皆で見ようぜ! とか言い出す。
というか、俺とばやしこの進展については誰も触れないあたり、ちょっと複雑な気持ちになるんだが? まあいいか……俺の心は海よりも広いからな……。