持久走大会での僕の順位は、真ん中よりちょっと上くらいだった。
運動系の部活に入っている足立にはギリギリ及ばなかったものの、順位は同じくらい。ゴールした後、足立に「市川、お前すげーな!」と言われたりした。
思ったより、いや、かなり健闘していた。高瀬には、あとでお礼を言っておかねば……。
図書室で、山田と言葉を交わす。
「市川、すごいじゃん! 先生も褒めてたよ!」
「……覚えてないのか」
「え? 何を?」
「前日に『明日の持久走大会、がんばってね!』って山田が応援してくれただろ」
「え……私が応援したから、頑張ったの?」
「あ、いや、べ、別にそういうわけではないが……?」
「ふーん。そうなんだ」
山田がニヤニヤし始める。美人だとニヤニヤしても様になるんだな。まったく、この世は不公平に満ちている。
「じゃあ、ご褒美にこれをあげよう」
紙箱からアーモンドチョコを1つ取り出し、差し出してくる山田。
ここは神聖な図書室だぞ。これじゃまるで共犯じゃないか。そう思いながら、僕はそれを受け取り、カリッと食う。
「これで共犯だね」
言いながら、山田も追加のアーモンドチョコを食っている。
「……まあ、これで冬のイベントもだいぶ消化した感じか」
「え? クリスマスと大晦日、初詣もあるよ!」
「冬の学校行事という意味で言ったんだが……」
「ああ、なるほど……」
会話が止まりそうになるが、山田がふと何かを思い出したように顔を上げる。
「そういえば市川。『君オク』、どこまで読んだ?」
「あ、借りてた6巻まで読み終えた」
「……!」
山田の目が輝く。
「ど、どこが一番良かった?」
その勢いに圧されて、僕は少し考えてから答えた。
「え、ええと……主人公の親友のみりあが先生に恋心を抱くも、先生には意外な過去があり……っていう引きが凄かったな(いや公務員に
「私もその展開が気になった! みりあの恋の行方はどうなっちゃうんだろう……ってすっごく引き込まれた……。
7巻から9巻まで、また市川の家に渡しに行くね!」
……言うか、言わないか。いや、言うなら今だろ。
僕は意を決して口を開く。
「そ、その件なんだが!」
山田がビクッと反応する。
「今度は俺が……山田の家に行ってもいいか?」
「え」
山田が目を瞬かせる。
ダメか……? やはりこれは友達の距離感で、そういう関係になりたいわけではない……のか?
「う、うん! 全然いいよ! 私の家で、夜まで『君オク』を語り明かそう!」
「いや夜まではダメだろ。親御さんに迷惑かけるわけにはいかん」
「じゃあ夕方まで!」
いや、そういう話でも無いんだけどな……。ちょっと僕は山田の無防備さに呆れながら、スマホのカレンダーアプリに、新たに増えた予定を入れるのだった。