僕ヤバ世界のヤバイやつ   作:クラゲ大好き侍

49 / 61
僕は訪問した その1

 朝のタワマンの16階。前回の自由研究のときは山田に案内されて入ったから、インターホンを押すのは、これが初めてだ。

 

 インターホンを前にして、僕は一瞬ためらう。

 ……本当に押していいのか? いや、呼ばれたんだから押すのは当然なんだが。これじゃ、高瀬の家のインターホンを押せなかった山田を笑えないな。

 僕の指がボタンに触れ、軽く押し込む。

 

 ピンポーン。

 

「市川京太郎です。漫画を借りに来ました」

 

 しばしの静寂。鼓動が少しだけ速くなる。

 

「市川! 入っていいよ!」

 

 開錠されるドア。大人びた服装の山田の姿。玄関で靴を脱ぎ、廊下の突き当り、リビングへと向かう。

 

「あれ? ご両親は?」

 

「今日はパパとママはいないよ?」

 

 え?

 僕の思考が一瞬止まる。

 いや、ダメだろ!?

 両親が居ない家に男を上げるな!! 何か間違いがあったらどうする!!

 

「山田……今度は親がいる時に呼んでくれ」

 

「え? それって親への挨拶……的な?」

 

「いや、それもあるが……僕も男なんだから多少は警戒心を持ってくれという意味だ」

 

「そ、そっか。じゃ、そこで待ってて。卒アル持ってくるね」

 

 卒業アルバム開示タイム……。躊躇が無いのは強者の余裕か、山田だからか……。たぶん山田だからだな。

 

「じゃじゃーん」

 

 山田は卒業アルバムを胸の前で持ち、得意げに笑っている。

 

「さて、私はどこでしょう?」

 

 ウォーリーを探せか??

 

 嬉しそうにページをめくる山田。本人は余裕の表情だが、こっちはそれどころじゃない。小学生時代の山田……? いったいどんな感じだったんだ?

 

「これだろ」

 

 周囲から浮いている山田の完成度よ。

 

「ここと、ここと、あと、ここ」

 

「……すぐ見つけるなあ」

 

 あっ。キモい動きだったか? そう思って固まっていると耳元で山田が囁いた。

 

「……今度は市川の卒アルも見せてね?」

 

 僕が赤面して倒れていると、ふと視線を感じた。

 ん?

 視線の先には……茶色い毛並みの小さな犬が、じっとこちらを見つめている。

 え、犬!?

 次の瞬間――

 

「ワンワンワンワン!!」

「うわっ!!」

 

 至近距離で吠えられ、思わず仰け反る。

 

「わん太郎、ふせ!ふせ!」

 

「ワフーン!」

 

 伏せの姿勢を取る犬。

 

「こちら、わん太郎。犬だよ」

 

 犬なのは見てわかるだろ……。

 

「えっと、ずっと『ふせ』させておくのも可哀想だし……部屋、いく?」

 

「ああ……」

 

 何気なく答えたものの、言葉の意味を理解した瞬間、再び僕の思考が止まった。

 部屋……って、まさか……山田の……!?

 脳内で警報が鳴り響く。心拍数が上がる。

 

 いや、待て待て待て!! 女子の部屋って、男子が入っていいものなのか!?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。