「小林さん、今日バスケ部休みでしょ。うちにゲームしにこない?」
俺は昼休み、勇気を出してばやしこを家に誘ってみる。周囲の仲良しグループの視線が痛い。
「いいのか?」
満面の笑みで応えるばやしこ。
「……俺以外の男子には、ほいほいついていっちゃダメだよ?」
「なんでだ?」
安定のばやしこ。それでこそばやしこだ。
「高瀬くん、萌もゲームしに行きたいなー? なんて……」
「萌子も行くならあたしも行く」
うっ。萌子に続きにゃあまでも参戦か。これではばやしこと二人きりなど夢のまた夢か……。
っていうか俺はハーレム派じゃないんだよ。あと、NTRダメ絶対。
「山田さんも来る? あ、でも条件があって……」
「条件? 条件ってなに?」
山田がいぶかしむ。
「もし山田さんが来るなら、市川も誘いたいんだよね。ほら、学年1位の男子と学年2位の男子が同伴なら、いろんな意味で安心でしょ」
「な、なんで俺が同伴になると安心なんだよ……」
市川が反発の意志を見せようとするが、
「嫌なのか?」
「い、嫌じゃないが……?」
どうやら嫌ではないらしい。というわけで、そういうことになった。
うちにはゲーム機が多い。母さんが死んだあと、父さんにゲーム機を買うけどいいか? と確認したところ、いくらでも買っていいと言われたからだ。家事を任せるのだから、それくらいは出す、と。
なので、俺は今、ばやしことまるおカートをプレイしている。何回かプレイするうちに、何かを察したように萌子とにゃあが、次いで山田と市川が離脱した。
「マジでばやしこ目的だったのか……」
にゃあが安心したように息を吐き、リビングの大型TVでゲームを楽しむばやしこを見て言う。
「萌にもワンチャンあるかと思ってたのに、高瀬くんはばやしこ目当てだったのか……がっくし」
萌子はうなだれている。
「イッチはいいなあ。あのイケメン高瀬くんに指名されちゃうんだから」
「ま、まあ男女比バグってたからしゃーない」
「市川くんって高瀬くんと仲いいの?」
山田の質問に、市川はなんとか答える。
「お、同じ情報処理部で、べ、勉強面ではライバルという関係だが?」
まるおカートで、ばやしこの追撃をギリギリかわしつつ1位をもぎ取り、俺は市川にフレンドコードを交換しようと話しかける。
「俺とフレコ交換しようぜ市川。ゲーム機とゲームがあっても対戦できなきゃ楽しくないし」
「わ、分かった。ライバルだし、フレコくらい交換してもいいだろう……」
俺は推しの市川とフレコ交換ができてめっちゃ嬉しい。
「そろそろ親が帰ってきちゃう時間か?」
にゃあの発言に、全員の動きが止まる。にゃあも言った直後に気づいたのか、しまったという表情で口に手を当てる。
「ああ、そうだな。父さんが帰ってくるかもしれないから、今日はこのへんで解散しようか。皆、今日は俺と遊んでくれてありがとな」
俺はなんとか言葉を絞り出し、みんなを玄関から送り出した。
帰り道。僕たちは歩いていた。
「高瀬、母親いなくて、ほぼ家で一人きりなんだよな。父親は仕事から帰るの遅いみたいだし、タイミングの悪いこと言っちゃったな……」
「そーなのかー」
「わ、悪気が無かったのは高瀬も分かってると思う。後で、俺のほうからごめんって言っておく」
「市川がかわりに謝る話じゃないだろ……」
「でも、この中で一番高瀬と仲がいいのは俺だから……俺は俺ができることをしたい」
「なんか、市川くんってカッコイイね」
山田がいきなりそういう突拍子もないことを言うから、僕はそっぽを向いて。
「い、いちおう、俺も男子だし……」
良く分からない台詞で、お茶を濁すことしかできなかった。