僕らは、山田の部屋でもう少し君オクを語り合った。
具体的には、君オクはアニメ版、実写映画版など、様々なメディアミックスが行われていること。
声優さんや俳優さんには、その時々の若手声優・若手俳優(女子高生の役に入り込みやすいためらしい)が起用されていること。
まだ実写ドラマ化はされていないが、そのうちされるんじゃないか等々、芸能界的な意見を色々聞いたりした。
そんなこんなで、あっという間に時間は過ぎていき、13時を回る。
「じゃあ、お鍋食べよう!」
キッチンでの昼食が「一人鍋」(僕もいるから厳密には二人鍋か?)という信じられない事実を飲み込み、なんとか調理を手伝って煮えた具材をパクついていると。
「あ! ママから、これから帰るってLINEが来てる!」
「えっ!」
「どうしよう。今日は市川が来るって言ってないんだよ」
「なぜ言わない!?」
「パパもママもお仕事があるって言ってたから、仕事休んでまで家に居てもらうのが悪い気がして……」
「じゃ、じゃあ今からでも良いから連絡してくれ。何も言わずに男子を家に入れたというのは色々と不味い」
「どのくらい不味いの?」
うん、山田は事の深刻さをよく分かってないな。箱には入ってないけど箱入り娘タイプか……。
「最悪、俺が山田家を出禁になるかも……」
「そ、それはダメ!」
慌てて、スマホを操作する山田。
『ママへ。連絡忘れててごめんなさい。今日は市川を家に呼んで君オクの話をしていました。
市川にも言われたけど、親が居ない時に男子を家に呼んだことは反省しています。本当にごめんなさい』
「送信!」
さあ、どうなる? さすがにブラックリスト入りか?
ピロン♪ とすぐにLINEの返信音が鳴る。
『後で詳しく話は聞くけど、連絡入れてくれたのは安心した。市川くんにも一言謝っておいてね』
「こ、これは、ギリギリセーフ……か?」
なんとか首の皮一枚繋がったのか? そう思って、山田のほうを見る。
「ごめん市川……」
ぽろっ、と山田の目から涙がこぼれる。
その瞬間、僕は息をのんだ。
「私、男子を家に呼んだこと無くて、親への連絡のこととか、市川とどう接すればいいかとか、ぜんぜん分かってなくて……」
声が震えている。
怒られるかもしれない不安、僕に迷惑をかけたことへの罪悪感、そして、自分がうまくやれなかったという悔しさ。
いろんな感情が絡まって、涙になったのだろう。
ああ、前に高瀬が言ってたな。山田もまだ中学一年生。大人びて見えるけど、やっぱりまだまだ子供でもあるんだ。
だから、僕は。山田の頭の上に手を伸ばす。
「泣くな。最初から上手く出来るやつばかりじゃない。今度は……ご両親がいるときに、堂々と遊びに来るから」
「……本当?」
物事に絶対なんて無い。でも。山田が泣くのを止めるためなら。
「絶対。約束する」
僕、市川京太郎は、山田杏奈と、山田家への再訪を約束した。
「ただいま。杏奈ちゃん、大丈夫だった?」
「うん……ごめんねママ……ちゃんと事前に連絡できなくて……」
「市川くんは?」
「君オク7、8、9巻を借りて帰ったよ。『今度はちゃんとご両親がいるときに遊びに来ます』って言ってた」
「そう……」
「ママ、私ね……」
一拍を、置いて。
「市川京太郎が……好きです」
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