「彼ピできず!!!!」
教室の中、苦渋の表情で大声を出す関根萌子。
時期はもう冬休みの前日で、クリスマスイブを彼ピと過ごしたかった関根的には今日がタイムリミットだったのだろう。
「ドンマイ」
吉田芹那が軽くフォローする。が、萌子は止まらない。
「ばやしこはいいよね! 彼ピいるし!」
「え? 誰の事?」
ばやしこがポカンとする。
すると関根は「ほら出た! 自覚ない系ヒロイン!」と指差して叫ぶ。
「ばやしこ、高瀬くんとほぼ付き合ってるのに『え、彼ピ? そんなのいないけど?』みたいな顔するのはやめろ!」
「いや、高瀬にはまだ告られてないし、付き合ってないけど?」
「それがむかつくんだってば!! バスケに影響出るとかそういう理由で告られてないだけで実質付き合ってるじゃん!」
「そうなのか?」
俺こと高瀬ライトのほうを振り向くばやしこ。
「いや……実はいま
これはマジだ。親父は何を思ったのか再婚しようとしているらしい。詳しい話はまだ訊けておらず、そもそも大人同士の話だ。いくら精神年齢が30才の転生者でも簡単には済みそうにない。なにより、俺の外見は中学一年生なのだ。どうしたものかと真剣に悩んでいた。
「そうなのか。じゃあ気長に待ってるよ」
ばやしこの心の広さよ……。
「中学一年生で親への挨拶とか、砂糖のように甘い会話が辛い……」
関根は口から角砂糖を吐いている(比喩)
「で、山田はどうなんだ?」
珍しく吉田が山田に恋愛の進展を質問する。
「私、初めてで上手くできなくて……」
山田の発言に、女子グループの空気が凍る。市川に突き刺さる氷のような視線。
「ち、違う違う違う!!」
全力で手を振る市川。
「誤解だ! 山田と漫画について語り合ったんだが、ちょっと親御さんと連絡ミスがあってごたごたしてしまってだな……」
「え、じゃあイッチ、杏奈ん
関根がジト目で言うと、
「ま、漫画を借りに……」
市川が肯定している。山田家訪問か。原作には無かったが、なんか色々フラグを立ててそうなイベントだな。
「それで話は変わるが、皆は冬休みの予定どうなってる? 市川は?」
俺は話題を変えて質問する。
「えっと、クリスマスの後は父方の実家に帰省して、秋田で3泊4日くらい過ごす予定だ。大晦日あたりには帰ってきて、正月を迎える感じだな」
「そうか……秋田に帰省か……」
原作では二年生の冬、市川は秋田で、山田のために雪景色を撮ろうとして利き腕を骨折してるんだよな。
でも俺が何か言ったところで信じてくれるわけはないし……まあ一応言っておくか。
「雪国慣れしている市川に言うのも変な話だが、雪の中で歩きスマホしないようにな。アレはかなり危険だから」
「わ、分かった」
さて、こんな忠告で未来が変わるのだろうか。そんなことを思いながら、俺は他の皆の冬休みの予定を聞き出していくのだった。