僕ヤバ世界のヤバイやつ   作:クラゲ大好き侍

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キリがいいので初投稿です。


僕らは合流した

 終業式が終わり、翌日。クリスマス・イブ。

 

 とはいえ陰キャである僕、市川京太郎には特に予定は無い。

 せいぜい、夕飯時に家族でささやかなクリスマスパーティーを行うくらいだ。

 そのために、母はクリスマスチキンの買い出しに、父はホールケーキを受け取りに行っている。

 僕は特にやることが無いので、家でゴロゴロして過ごす。

 

「今日の昼間ってひま?」

 

  「ひま」

 

 山田からのLINE。それも、特にイベントに繋がるということもない。はずだ。

 

「じゃあ」

 

「わん太郎の散歩、手伝ってほしい」

 

「公園近くのベンチのところで合流ね」

 

  「りょ」

 

 いや待て……。よくわからんが、よくわからんイベントが始まろうとしている……。

 僕は外行きの上着とパーカーに着替えると、外に出る。

 

 一体、山田は何がしたいんだ。犬の散歩の手伝いって何だよ。

 考え過ぎて頭がぐるぐるするのを抑え込み、僕はベンチのところまでゆっくり歩いていく。冬なので当たり前だが、少し肌寒い。

 

「ワンワン、キャンキャン、ワフーン!」

 

 そこには、パーカーを腰に巻き、軽装で犬語を話す山田が居た。僕が唖然としていると、山田もこちらに気付く。

 

「……何か用?」

 

 平静を保ったような声。だが、明らかに顔が赤い。恥ずかしい行為だったという自覚はあるのか。

 

「なんで犬語なんだ……」

 

「だって日本語じゃ、わん太郎に通じないでしょ」

 

「どっちにしろ、だろ……」

 

 どちらからともなく、二人でベンチに座る。気まずい沈黙。

 

「犬の散歩って、どう手伝えばいいんだよ」

 

「あ、あれはウソだよ」

 

「じゃあ、用事があるわけじゃないのか」

 

「ううん。用事はあるんだよ」

 

 ん? どういうことだ? 山田の言葉に、思わず首を傾げる。

 

「私、昨日の萌子の気持ち、ちょっと分かるかもって思った」

 

 あの、「彼ピできず!!」っていう魂の叫びのことか?

 

「去年まではね。パパとママと、クリスマスを過ごすのが普通で、そういうイベントなんだなって思ってたんだけど」

 

 一人でケーキを食らう山田が容易に想像できるな。

 

「大人になったら、イブって、それとは別の意味も持つんだろうなって思って」

 

 つまり山田も、彼氏を作りたいということか? ズキッと心が痛む。

 まあそうだよな。山田くらいの美人なら、呼吸をするように彼氏を作れるわけで……。

 

 僕は、ネガティブな思考に飲み込まれそうになる。

 

「それで、今日の昼間は市川と過ごそうかなって思った」

 

「え?」

 

「だって、夕方から夜にかけてはパパとママが料理とかプレゼントとかを準備してくれてるでしょ? だから、空いてるのって昼間しかないから……」

 

 要するに、僕は山田のひまつぶしに呼ばれたのか……?

 

「山田なら、すぐ彼氏とか作れるんじゃないのか?」

 

「えっと……彼氏がいたことはないし、今もいないよ!」

 

「そ、そうなのか」

 

「うん」

 

 ベンチに座ったまま、時間が流れる。犬も吠えず、静かにしている。気まずい……。やらかしてしまった気がする。

 

「皆、私のことを可愛いっていうけど、それは取り繕った外見のことで、私自身を見てくれてるわけじゃないでしょ? 初めてだったんだよ、私のこと見てくれる人……」

 

「そうか」

 

 誰なんだ。その見てくれる人とやらは。

 

「だから、今日の昼間は市川と過ごす!」

 

 ん? さっきも言っていたが、どうしてそういう結論になるんだ?

 山田は、イブに僕と一緒に居たい? そのために、僕を用事も無いのに呼びだした?

 

 あれ? もしかしてこれは……。

 

 山田の手と、僕の手が触れる。心臓の鼓動が早くなる。

 

 もしや……これは……、僕の思い違いでなければ……、クリスマス・イブ・デートというやつなのでは????

 

 いや……待て待て待て……2人でベンチに座っているだけだぞ? キスもハグもしてな……手、手はちょっと触れてるけど……してないわけで。これをデートと呼ぶのはいささか自意識過剰すぎないか?

 

「あれっ? 杏奈ちゃん? と、京ちゃん?」

 

 唐突に、至近距離でおねえの声がする。顔を上げると大学帰りの服装のおねえがいた。まるで、このまま通り過ぎようと思っていたら山田と僕を見かけたという感じの声だった。

 

「クリスマスイブデートかぁ~!?」

 

「なっ!? いや、違……」

 

「違うの?」

 

 ……咄嗟に否定しようとするも、山田に真正面から肯定されてしまうと、否定もできないわけで。

 

「あ、えーと……」

 

「夕方までには帰ってきなよ!」

 

 クールに去るおねえに複雑な感情を向けながら、僕は、もうどうにでもなれと思いながら山田の手を握り、数秒後、握り返されるのだった。

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