毎年恒例の秋田への帰省。車でだいぶ走った先に、雪に包まれた実家がある。
この季節は普通に寒い。
「あんれまあ 京ちゃん大っぎぐなって……」
祖母から見ると、一年ぶりだから成長しているように見えるのだろうか。
「あんまり変わらんだろ……」
「あんまり変わらないよね?」
しかし、おねえに言われると腹が立つ。これが反抗期……。
「これから伸びるからいいんだよ」
そう言って
おねえは布団を敷くが、おねえと同じ部屋、同じ布団で寝るのは嫌だ。
何より、ゴミ箱が
あと、去年の帰省と違うのは……やはり山田の存在……。
「あ、京ちゃんのスマホに通知来てるよ」
姉の声に心臓が跳ねる。
僕は即座にスマホを手に取る。名前は……見られてないか?
これは……山田からのLINE……飯テロ画像だ。
最近は、対抗して飯テロ画像を送り返すこともあるが、だいたい5:1か、もっと多いくらいの割合で飯テロされている。
夜になったら、きりたんぽの写真を撮って送ってやらないと……。
いや、この返信は義務ではないし……努力義務ですらないが……? 流れで……まあ、なんとなく……?
「友達に飯テロされてんの?」
「ま、まあ……」
画面は隠しているので、なんとか名前の部分は見られずに済んだ。
やまだあんな、なんて、姉が見たら絶対ウザいくらい弄ってくるに決まっている。なんとか隠し通さねば。
「秋田に着いた」
「おー!」
「雪しかない」
「雪だるまとか作らないの?」
「もう中学生だぞ」
「私なら作るけどなぁ」
そういえば、山田が雪を見たいと言っていた気がする。僕は「ちょっと散歩してくる」と言って外に出る。
寒い……。鼻が痛い……。
雪だるまは無理でも、雪ウサギくらいなら作れるか……?
そういえば、「雪の中で歩きスマホは危ない」って高瀬が言っていたな。僕はポケットにスマホをしまい、葉っぱと木の実を探す。
葉っぱはいくつか見つかったが、なかなか、雪ウサギの目になりそうな赤い木の実が見当たらない。
「しかたない……砂利で代用するか……」
僕は雪ウサギ(試作)を完成させ、写真を撮る。もうちょっと斜めから撮るか? いや、光の加減も考えたほうがいいか? と、ちょっとテンションが上がっていると。
「あー、かわいいー。京ちゃん、雪ウサギ作ったんだー!」
姉に発見され、テンションが氷点下まで下がる。
「写真なんか撮って誰に見せ……あっ! もしかして杏奈ちゃんに?」
「べ、別にそういうのではない……」
誤魔化そうと試みるも、ウザ絡みモードに入った姉はなかなか止まらない。
「もう帰る」
僕はそう言って、実家に戻る道を歩き始めた。
夜。暗い中、布団に入りながら、夕食の時に撮った、きりたんぽの写真を山田に送る。
「きりたんぽ」
「おいしそう」
「あと」
「雪ウサギ(試作)」
「かわいい!」
「目は赤くないんだね」
「赤い実が見つからなかった」
「だから試作」
「なるほど」
山田とのLINE。これまでの人生で、帰省は退屈な行事だと思っていた。
でも。こうして遠く離れた山田と話していると、退屈な気分は全部消えていって。残るのは、楽しいという気持ちだけ……。
「京ちゃん、まだスマホ弄ってるの?」
「な……見るな!」
「露骨に慌てるってことは、相手は杏奈ちゃんかぁ~?」
「変なところで推理力を発揮するな! も、もう寝る!」
LINEにも、メッセージを送っておく。
「姉がウザいので」
「もう寝る」
「おやすみ」
「おやすみ」
(燃えるカマキリ猫のスタンプ)
相変わらず、何を伝えたいのか分からんスタンプだ。
今日は車移動とか雪ウサギ作りとかで疲れた。明日もあるし、おねえの言う通り、早く寝よう。