僕ヤバ世界のヤバイやつ   作:クラゲ大好き侍

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僕は帰省した その2

 秋田の実家、2日目。

 

 僕、市川京太郎は、特にやることがないので、半纏(はんてん)を羽織り、祖母と姉と一緒にコタツに入ってミカンを食べたりする。

 ミカンについては、ダンボール一杯に入っているので、無くなる心配はない。

 

 あと、田舎のコタツ事情には詳しくないが、練炭は危ないので十年前に電気こたつに変えたらしい。練炭っていうのはアレだ。練炭自殺で使うやつだと本で読んだ。取り扱いを間違えると一酸化炭素が出て、人が死ぬこともあるらしい。実物を見てみたかったが、無いなら仕方ないな……。

 

 姉が隣で祖母に近況を語っているのがウザいが、毎年恒例のことなので諦めている。

 

「それでね、京ちゃんは学年2位をキープしながらライバルの――」「高瀬」「そうそう、学年1位の高瀬くんと切磋琢磨してるんだよ」

 

「あんれまあ」

 

 姉の口から、一年分の情報がどんどん共有(シェア)されていく。ここは僕も補足しておくべきか。

 

「高瀬とは同じ情報処理部に入ってて、週一の部活動では色々話す」

 

「どんな話してんの?」

 

「そこは企業秘密で」

 

 恋バナだとは言えない。

 

「えー、教えてよ!」

 

「まあ、高瀬はすごい奴なんだ。イケメンだし、ずっと学年1位キープしてるし、運動も元バスケ部だからかなりできるし、林間学校のしおり作りでも高機能な印刷アプリを使いこなして活躍してたし」

 

「え? なんじゃそりゃ。スーパー中学生か?」

 

「スーパー中学生だな」

 

 高瀬の家庭環境が複雑なのは、言う必要が無いので伏せておく。

 

「それってもしかして、京ちゃんの恋のライバルでもあるってこと!?」

 

 姉が焦ったように言う。

 

「いや、恋のライバルではない。高瀬は女子バスケ部の小林のことが好きって言ってたし」

 

「良かったー。実は京ちゃん、いま恋してるらしくてさー」

 

「それは言うな。不確定要素が多すぎる」

 

「えー」

 

 明らかに恋バナしたそうな姉。

 

「京ちゃん……なんか大人っぽくなっだな?」

 

 祖母の台詞に、うん、と頷き返す。

 

「大きさは変わらないけど」

 

「黙れ」

 

 なぜ姉は一言余計なのか……。と思いながら、ミカンを剥いていると、LINEのメッセージが届いた音がする。

 また山田の飯テロか? とスマホの画面を見ると。

 

やまだあんな

 

「いまひま?」

「ビデオ通話していい?」

 

 いやいやいや、このタイミングでビデオ通話したら祖母と姉にバレるだろー!!

 とりあえず「今はちょっと無理」って返して、夜に掛けてもらえれば……なんとか……。

 

ピロリロリロリン

 

 も、もうビデオ通話が掛かってきている……なぜ……どうしてこんな状況に……。

 覚悟を決めて出るしかない……か……。スワイプし、ビデオ通話を始める。

 

「ど、どうした?」

 

 メガネと部屋着……よっぽど急いでいたのか?

 

「えっとね、市川、初詣……って、いく予定ある?」

 

「行くが」

 

 家族とだが……。

 

「ホント?」

 

「じゃあ、場所と日にち、後で調整するね」

 

 ……んん?

 

「またラインする!」

 

 唐突に切断されるビデオ通話。嵐のような出来事……。

 

 というか、山田は気付いていないようだったが、祖母と姉に斜めからちょっと見られてしまった。

 

「あらーめんこい子だねー」

 

「そうなんだよ~。京ちゃん、夏休みの自由研究もこの子と一緒にやったりしててさ~」

 

 結局恋バナが始まってしまった……。もうダメだ……死ぬ……。

 

 僕はこの空気に耐えられず、布団の敷いてある部屋のほうに退避するのだった。

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