僕ヤバ世界のヤバイやつ   作:クラゲ大好き侍

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僕はバイトした

LINEにて。

 

  「おねえ、今日はバイトで遅くなる」

 

「バイト!? 京ちゃん、中学生は原則、アルバイトできないんだよ?」

 

  「高瀬さんちで月に一回ほど作り置きのハンバーグを大量に作るらしい」

 

  「なので」

 

  「ちょっと雇われてくる」

 

「ハンバーグ作りか……それならOK」

 

「か?」

 

「(考え込むスタンプ)」

 

 

 

 

 スタンプを送ってきたおねえとのLINEを打ち切る。

 

 僕は高瀬の家の呼び鈴を押して、中に招き入れられる。

 

「ようこそ市川。材料はでかいボウルに用意しておいたから、さっそくハンバーグのタネを作っていこう。家庭科の授業だとでも思って、混ぜて、ちぎって、こねて、叩いて、空気を抜いて、置いておく。最後に焼いて、冷凍庫にぶちこむ。簡単な仕事だぜ!!」

 

 高瀬は自分と父親の分の、毎日のご飯を用意しているスーパー中学生というか、だいぶ偉いやつだ。だが、毎食冷凍食品やコンビニ弁当だと飽きがくるとのことで、時々手作りの作り置きをするらしい。それも結局は冷凍してしまうのだが、味に変化があると飽きにくいということらしい。

 

 いまいちありがたみが分からないのは、僕が両親に恵まれているからなのだろう。

 

「お、おう。テ、テンションがいつもと違うな……やることは分かったが、それでバイト代はだいたい幾らになるんだ?」

 

「時給1000円で、2時間くらいかかるだろうから、トータル2000円でどうだ?」

 

「は? どうだ、じゃないが? 中学生にとって2000円は大金だぞ。お得すぎるだろう」

 

「市川……分かってないな」

 

「何が?」

 

「将来……仮に……市川がモテたとする。美容院に行くのはまあ追加の小遣いをもらえばいいだろう。だが、デート代は別なんだぞ。映画見るにしても1500円。パンケーキと飲み物で2000円。ゲームセンターで欲しいぬいぐるみを取るために3000円。普通の中学生に払えるか? この大金が」

 

「……払えないと思う」

 

「だろう?? つまりデートのための軍資金としてお小遣いを貯めておく必要があるんだよ!!」

 

「な、なるほど……?」

 

 エプロン姿でハンバーグの材料を混ぜながら熱弁する高瀬。要するに将来大金が必要になったときのために、つべこべ言ってないで全額貯金に回せという意図らしい。

 

「もちろんデートプランは双方合意のもとに決めるのが理想ではある!! あるが!! ついつい予定を超えて楽しんでしまうのがデートというもの!!」

 

「うん……」

 

「なので市川には定期的にうちに来て、バイトにせいを出してもらいたい!! そして俺は(推しの市川の)手作りハンバーグが食える!! WIN-WINだ!!」

 

「……自分がモテている状態が1ミリも想像できないんだが、理屈は分かった。タネのサイズはこんな感じでいいか?」

 

「うーん。俺たちは大人に比べて手が小さいから、もうちょっと小さめのタネでやろう。小さめのハンバーグでも2個食えば問題ない」

 

「なるほど」

 

 僕と高瀬は黙々とタネを作る共同作業を続けていく。材料がほぼ無くなり、タネを置くスペースも無くなってきたあたりで、高瀬は準備していたフライパンに次々とタネを放り込み、焼いていく。香ばしい匂いが広がる。

 

「あとは粗熱を取って、ジッパー付きのポリ袋に入れた後、冷凍庫にぶちこんで終わりだ!!」

 

 実際、いろいろやっているうちに2時間くらいの時間が経過し、僕は報酬として2000円というバイト代を手に入れた。

 買いたいものは色々あるが、高瀬との約束なので、全額を貯金に回すことにする。

 

 

 

 

  「おねえ」

 

  「バイト終わったから、今から帰る」

 

「京ちゃん、バイト代は何に使う予定なの?」

 

  「全部貯金する」

 

  「あとで使うかもしれないから」

 

「散財しないならいいって」

 

「お母さんが」

 

「言ってたよ」

 

 

 

 

 高瀬が楽しそうだったので、僕もたぶん楽しかったんだと思う。僕と高瀬のなんだか良く分からない時間が、こうして過ぎていくのだった。

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