魔術廻戦 作:Comet08
「本当だ、混じってるよ。ウケる」
五条が虎杖をじっくり観察している時だった。
パシンッ
屋上に姿現し特有の乾いた音が響く。
伏黒は思わず反射的に身構えたが五条は「来たね」とニカっとした顔になって振り返った。少し離れた所か現れたのはスーツにコートを着込んだ男だった。右手には杖が握られている。
theイギリスと日本のハーフという顔立ちでブロンドに近い金髪は父親譲り。名は倉内瀬理。ミドルネームはセバスチャンだが本人はあまり好きではない。杖をしまうと手を開いたり閉じたり、自身の眉毛が揃っている事を確認しながら倉内は一行に近付いてきた。
「久しぶり悟、来たことない場所に呼びつけるの勘弁してよ。バラけたらどうしてくれんの」
「倉内先生…!」
「こんばんは恵」
「瀬理なら大丈夫でしょ。久しぶりだねぇ。そういえば用事とか大丈夫だった?」
五条は少し声の調子が上がった様子で挨拶した。
「えぇお陰様で半年ぶりの日本食が、デートが延期になりましたよ」
倉内は生徒の手前ではあったが不満たっぷりの声で五条に返事した。
「げ…。ぼく硝子に殺されんじゃん」
これはしまったと五条はおでこに手をあてて上を見上げる。
「せっかく帰国に合わせて料亭予約してたのに」
「それはメンゴ」
「今頃、庵先輩と2人でその店に行ってるよ。それと後で説教ですねって灰原が」
「まじ?雄ちゃんの優しいやつがいちばんキツいんだよ」
「ってよく見たら恵ボロボロじゃん。大丈夫?」
「だいぶギリギリでしたけど何とか。五条先生が来るの遅かったんで」
伏黒はイヤミを込めて答えた。
「めぐみちゃんったらひど〜い」
倉内はコートのポケットに腕を突っ込んでしばらくゴソゴソしてから瓶を何本か取り出した。
「どうせ土産買うのに忙しくしてたんだろ」
「バレた?テヘペロリン⭐︎いやね、ここのずんだ生クリームが最高なんだよ」
「可愛くないぞ。ハナハッカは…これ、じゃないこっちだ。とりあえずこれ頭にかけときな」
「ありがとうございます」
伏黒は倉内から差し出された小瓶を受け取るとキャップを外して一滴、二滴と傷口にかけた。顔は苦しい表情になったがみるみると傷が塞がっていく。
「それで指は?」
倉内は伏黒に治癒魔法を施しながら五条の隣に立っている虎杖を見て尋ねた。
「あーそれなんだけどね」
五条は少しバツが悪そうに上裸になってる虎杖に視線を移した。
「ごめん、俺たべちゃった」
虎杖はさっきと同じセリフを繰り返した。
「マジ?」
「「「マジ」」」
伏黒、虎杖、五条は揃って返した。
「ほらゲーってやったら出てこない?」
「それがもう完全に混ざってんのよ。近くで見れば分かるんだけどさ」
「そっか…ちょっと失礼するよ虎杖くん」
「はいっす」
倉内は近付きながら、おもむろに聴診器を取り出すと虎杖の胸や背中にあてた。それから手首の脈や目元なんかを確認すると納得したような顔でお礼をいうと立ち上がった。
「どう瀬理」
「ほんとに混ざってるね。魂はあくまでも別のようだけど、、、それに何というか完璧すぎる。超健康体」
感心と疑念が混じった声で倉内は言いながら聴診器をしまうと今度は伏黒の怪我の様子を見始めた。
「というわけで宿儺と変われるかい?」
五条は準備体操しながら虎杖に告げる。
「スクナ?」
「君が喰った呪いだよ」
「多分できるけど」
「じゃあ10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」
「でも…」
「大丈夫、ぼく最強だから」
「ここでやんの?」
「ここじゃなくていつやんのよ。年寄りを説得する材料は多い方がいいでしょ?というわけで恵とこれをよろしくね。ちょっと離れてて。まぁ指一本なら夜蛾センとかナナミンでもまだ余裕が出るぐらいだしどうって事はないけど」
「かなりの上澄みじゃないと駄目って話ね」
「まぁそうとも言える。なんといっても単純な強さでは測れないいわゆr…
「後ろ!」
伏黒の警告にものともせず、難なく攻撃を捌いていた五条だったが何度か拳を交えてから宿儺は距離を取ったところで標的を変える事にした。
『いつの時代も厄介なものだな呪術師は!ならば!』
「えっ、こっち?ちょいちょいちょい」
宿儺は倉内の喉に目掛けて腕を伸ばした。ところが間合いを一気に詰めたところで宿儺は突如として体が軽くなったような感覚に陥って、踏み込みが狂う。そのまま前のめりに姿勢を崩した宿儺だったが
『何っ…?!』
顔を上げた瞬間には倉内の回し蹴りが腹部に直撃。痛みや重みは殆どない。ただ体は重力が軽くなったようにそのまま吹き飛び、空を舞っていた。
「Petrificus Totalus !」
倉内が杖を向け、何か声を発したところで宿儺に再び体の重みが戻ってくる。と同時に全身が金縛りに遭い、両腕を伸ばして気をつけ!の状態で石像と化した宿儺はザサァーと地面をスライドして地面に伏せた。
「はち…きゅう…そろそろかな」
「そろそろかなじゃないんだわ!悟が言い出したんだから勘弁してくれる?」
「いやぁ突然のことで手が回らず」
「この人ずんだ生クリーム味堪能してました」
「残ってる喜久福はぜんぶ恵が食べていいよ」
「えぇ?!オレのだし!絶対あげない」
戻ってきた虎杖は横になった状態で3人に覗き込まれている状態になっていた。
「大丈夫だった…?あれなんか体動かないんすけど」
「ごめんごめん」
倉内は杖を再び虎杖に向けて軽く振る。
「おっ動けるようになった!」
「いやぁ驚いた。ほんとうに制御できてるよ」
「でもうるせーんだよな」
「それで済んでるのが奇跡だよ」
トン
* * *
「そんじゃ瀬理。彼連れてくから学校直したら恵、高専に送っといてー」
「わーったよ。修繕費請求しとくね⭐︎」
倉内はにっこりと五条に返した。
「え“…冥さんみたいな事言わないでよ。この顔に免じてさ〜、というかそういう現場修復の報酬が直々に総監部から降りてるでしょ」
「あのジジイ共、毎年少しづつ額を削ってきてるんだよ。そのうち桁を減らしてくるレベル」
「まじ?じゃついでにその嫌味も言っとく。あと欧米呪術界への根回しよろしくぅ!それじゃお疲れサマンサー!」
そう言い残すと五条は虎杖を担いで文字通りその場から消え去った。
「おいそっちは本当に金とんぞ!ってもう居ないし」
「最悪ですね。あの人」
「仕返しに喜久福の中身を全部激辛蛙チョコレートと入れ替えといた。待ってる間に食べていいよ」すると倉内は五条が持っていったはずの大福をコートから全部出すと恵に渡した。
「いただきます」
ニヤッとした伏黒は遠慮なく大福の包みを開けてかぶりついた。
「すぐ戻る」
倉内は屋内に入っていきながら杖を構えると杖先が僅かに光る。ゆっくりと杖を振ると崩れた壁や歪んだ柵が段々と元の形に戻っていった。瓦礫の砂ひとつ残さずに校舎が修復されていく様は壮大なマジックショーを見てるようで何度か同じ光景を目にしてきた伏黒もやはり目を見張る光景があった。大福を食べる手は止めなかった。
「数匹残ってた呪霊もついでに片付けてきた。さてと、まずはこの巻き込まれた2人を病院に届けるけど…どうせだから大臣のお土産買ってから戻ってもいい?あー大臣ってのはイギリスの呪術省トップね。この調子だともう一回イギリス往復しないと行け無さそうだし…あ、それ1個ちょうだい」
倉内は杖を振ってその場に現れた担架に虎杖の先輩2人を寝かせるとそれをぷかぷか空に浮かせた。
「はい。それくらい全然付き合いますよ」
伏黒は快く残ってた大福を倉内に差し出した。
「ん確かにうまいな。やっぱスイーツは甘党のチョイスに限る」
「あの人、お菓子のセンスだけは悪くないですよね」
「あと顔」
「それで終わりです」
「相変わらずのようだね悟は」
「この前なんて目の前で親父と殴り合いの喧嘩したんですよ。母さんも居たっていうのに」
「どっちが勝った?」
「母さんもですけど姉が止めたんで、津美紀姉さんの勝ちです」
「納得の結果だね」
大福を堪能しながら一行は学校を後にした。
誤字脱字等は随時訂正致します。更新頻度は凄まじく低いかもしれません。