MEMちょの父親が雨宮吾郎だったら   作:座右の銘

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MEMちょ親子の連続攻撃によりアクア陥落。
復讐なんてやめて幸せになってくれマジで。




MAMちょは看護師さん その5

今日の今ガチの収録では、夏らしく浴衣を着て花火で遊んだ。

 

ゆきちゃんとノブ君の距離が縮まって良い感じに盛り上がっている。私とアクたんは粛々と調整役をこなし、安全圏をキープできれば上等。番組としてはこのままいけば問題ない。私のYoutubeチャンネルへの導線も問題なく機能するだろう。

 

花火遊びも一通り終わるころにはすっかり暗くなっており、今はロケバスの中でくつろいでいる。隣に座っているのはアクたんだ。

 

「アクたんはいいのぉ?ゆき争奪戦に参加しなくって。売れたいなら私よりあっちに絡むのが正解だと思うよぉ。」

「俺はいい。番組が終わるまで安全圏でやり過ごす。」

「野心がないなぁ。」

 

いつもの好青年を演じる彼ではない。カメラが回っていない時だけ見せる、大人びた雰囲気の彼。薄暗い車内で静かに佇む姿も画になる。なんてかっこいい人なんだろう。

 

私とアクたんの距離はかなり縮まったと思う。番組に出演するタレントとしてだけではなく、ただの男女として。もう友達というには無理があるくらいには親密な関係だ。このままいけば、カップル成立も夢じゃない、と思う。

 

「ねえアクたん。アクたんは私のことどう思ってるの?」

「まあ、結構いいなとは思ってるよ。」

 

しかし、アクたんは一向に本心を明かさない。彼の態度を見れば私を女性として意識していることは分かる。ただ、言質を取られるのを嫌がるかのように気持ちを言葉にしてくれない。

 

めんどくさい女と思われたくないのであまり聞かないようにはしているけど、いくら何でもはぐらかしすぎだ。恋愛リアリティーショーに出演しているのだから、カップル成立を匂わせた方が番組だって盛り上がるのに。のらりくらりと私からのアプローチを躱して一体何のつもりなのだろうか。

 

ああ、もどかしい。

 

「MEMはゆき争奪戦に絡んでこなくていいのか?目立てるぞ。」

「私はこのままおバカ系癒し枠キープできればそれでいいかなぁ。自分のチャンネルにお客の導線引くのが目的だし。」

 

ゆきちゃんとノブ君の関係に首を突っ込む必要はない。だって、私が心惹かれている人は今目の前にいるあなただから。今更ノブ君やケンゴ君なんかに私が靡くことは無い。そんなことは彼も分かりきってるはずなのに。

 

「・・・アクたんがマジでアプローチしてくるなら話は別だけど?」

 

ここ最近、毎週同じようなことを聞いている。返事はいつも決まって、『あまり期待はするな』だ。でも、今日は違う返事が聞けるんじゃないかと淡い期待を抱いてしまう。

 

どうせ今日も答えは同じだろう、そう思っていた。

 

「本当に俺なんかでいいのか?」

「えっと・・・」

 

アクたんの予想外の返答に言葉に詰まる。自分ではキミとは釣り合わないとでも言いたげな、何とも後ろ向きな返事だ。

 

何をそんなに悩むことがあるのだろう。私達は相思相愛で、付き合っちゃいけない理由も特にない。恋愛リアリティーショーとしてもアプローチすると決めて動いた方が目立ちやすいはず。

 

これまでの態度だっておかしい。お互い明らかに異性として意識している状況であっても、私からの好意をはぐらかし続けてきた。

 

・・・アクたんには何か恋愛に積極的になれない事情がある。私はそう結論付けた。ならば、その事情とやらを何とかしないことには始まらない。ほんの少しとはいえ多少は前向きな返事を貰えたのだ。今なら、話してくれるかもしれない。

 

まずは深呼吸。年長者らしく落ち着いた雰囲気で行こう。そして、出来るだけ優しく。

 

「ねぇ、アクたん。何か悩んでる?自分は恋愛なんてしちゃいけない人間だ、とか考えてない?」

「いや、別に・・・」

 

何かあるんだな、と思った。それを言うべきか迷っているな、とも。

尋常ではない雰囲気だった。

 

「いいんだよ、たまにはお姉さんに甘えても。ほら、ゆきちゃんとノブ君も寝てる。誰も聞いてないから安心して?」

「えっと、その・・・」

「ゆっくりで良いよ。」

 

こんなに辛そうに悩むアクたんは見たことがない。よほどのことがあるに違いない。

やがてアクたんは決心したようで、ぽつりぽつりと話し始める。

 

「・・・殺したいほど憎んでる奴がいるんだ。」

「うん。」

「そいつに復讐するためだけに、俺は生きてる。」

「うん。」

「ずっと、子供の頃からずっと、そのためだけに生きてきた。」

「そうなんだ。」

「でも、本当はもうそんなことやりたくなくて。」

「うん。」

「MEMとの時間は楽しくて、でも、復讐をやめるわけにはいかなくて。」

「大変だったね。」

「お前を巻き込みたくない。」

「うん。」

 

想像を絶するほど重たい話。

 

アクたんがこんな心の闇を抱えていたなんて。どうして気づいてあげられなかったんだろう。10年越しの青春に浮かれて恋に恋して、アクたんのことをちゃんと見てなかったんじゃないか。

 

なんて自己中な女だろう。

 

「ねぇ、部外者にとやかく言われたくないかもしれないけどさ。ちょっと聞いてくれる?」

 

ちゃんと向き合おう。彼には幸せになってほしい。彼にとっての幸せを、彼と一緒に考えたい。

 

「その人を殺したら、アクたんは幸せになれる?」

「それは・・・」

「少なくとも私は嫌だな。アクたんに人殺しなんかになって欲しくない。」

「うん・・・」

「そんな誰も幸せにならないような事なら、やらない方が良いと思うな。」

「でも、俺に幸せになる資格なんて、」

「そんなこと言わないで。幸せになろうよ、アクたん。キミはもう十分頑張ったよ。」

「うぅ・・・」

「だからもう、自由に生きてよ。」

 

アクたんは泣いていた。綺麗な顔をくしゃくしゃに歪めて。その表情に抱えていた葛藤の大きさが現れていた。

 

優しくアクたんを抱き寄せる。私の胸で泣きじゃくる姿は、いつもの大人びた雰囲気ではない、年相応の幼さがある。ようやく私に本心をさらけ出してくれた。そのことが何よりも嬉しい。

 

これで、少しは彼の支えになってあげられただろうか。

 

 

 

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