弱り切ったアクアのメンタルにMEMお姉さんとの情事はもはや劇薬。
MEMとMAMは親子だ。よく似ている。揃いもそろって、俺の心を揺さぶるのが上手い。特に俺を驚かせることについては、この二人の右に出る者はいないだろう。
「あ、アクたん。起きちゃった?」
気が付くと、すぐ目の前にはMEMの横顔があり、ささやき声で俺に話しかけてくる。吐息が耳にあたってくすぐったい。
確か俺は、MEMの家に居て、ソファーでMEMとくっついてたら寝てしまって、それから・・・?
「ちょっと待て!」
ものすごい勢いで跳ね起きる。同じベッドでMEMと寝ている。MEMが同じベッドで。目の前にMEMが。え、待って。
分かりやすく慌てる俺に対し、MEMは冷静だ。いや、余裕を感じるのは確かだが、それだけではない。何か、獲物を品定めする肉食獣のような・・・。
あ、分かった。喰われるんだ、俺。
俺はこの後行われるであろう行為も含め、すべてを悟った。
「もう、帰るには遅いよねぇ。アクたん疲れてるみたいだしこのまま一緒に寝ようか。」
時刻は深夜2時。確かに帰るには遅すぎる。もう駄目だろうが、一応悪あがきはしてみる。俺は悪くないからな。
「俺は床かソファーで寝よ、」
「ダメ。もう逃げられないよ。」
MEMが俺を逃がすまいと抱き着いてくる。思いついた言葉を言い切る猶予すら与えられず、不意打ち気味に体を密着され、MEMの女性の身体を意識してしまう。首に回された腕から滑らかな素肌の感触を感じる。髪からシャンプーの香りがする。
否が応でも反応してしまう。MEMしか見えなくなる。何も考えられなくなる。
そこからは先のことは、皆さんのご想像にお任せしたい。
・・・
目覚めは快適だった。この何年かで間違いなく一番気分が良い。
「アクたん、気分はどう?まぁ、その様子だと聞くまでもないんだろうけど。」
「はい。とても良い、です。」
「アクたんって意外とチョロいんだねぇ。」
「くそっ。何も言えねぇ・・・。」
あの後俺たちは、熱い夜を過ごし、そのまま眠りについた。今の状況を一言で説明するなら、朝チュンだ。それ以上ふさわしい言葉はない。
反論の余地はない。MEMと寝たおかげで、気分が良くなった。10年以上復讐心を燃やし続けてボロボロになったはずの俺の心を癒したのは、他でもないMEMだ。認めざるを得ない。
だが素直に認めるのもなんとなく悔しいのだ。俺がチョロい男だってことを。
「言っておくが、普段はこんなチョロいわけじゃないぞ?誰にでも付いていくわけじゃねぇし。人は選んでるつもりだ。それに、ちょっと今回のは特殊というか、俺の精神が弱ってるタイミングでもあったしな。あんな状態じゃなければもう少し違った結果になってたはずだ。分かるよな?」
「アクたん、饒舌だねぇ。よしよし分かった分かった。お姉さんが悪かったよぉ。機嫌直して?」
「だからっ、そういうんじゃねぇって。」
「はいはい、分かってるよぉ。」
「ああもう、好きにしろ。」
「はーい。好きにしまーす。」
ダメだ、この人には敵わない。
文字通り顔を真っ赤にして反論する俺を、楽しそうな顔で軽くあしらうMEM。悔しい気持ちは確かにあったのだが、それさえも彼女が隣にいてくれるという安心感の前に、溶けてなくなってしまった。
頭をなでられるだけで安心してしまう。声を聴いてただけで頬が緩む。もうどうしようもない。
俺はもう、この人なしでは居られない体になってしまったみたいだ。