アクアは毎日寝る間も惜しんで作業したんですよね・・・MEMちょ宅で。
原作ではさらっと流されてたけど事案なのでは。
「俺には映像編集のスキルもあるし、素材さえあれば・・・。」
「なるほど、つまりアクたんは『私達目線の今ガチ』をやりたいんだ。」
朝チュンからわずか15分でこの話題を振るかね普通。ついさっきまで私にデレデレだったくせに。もうちょっとイチャイチャしても罰は当たらないと思うけど。
まあ、あかねを助けたい気持ちは伝わってくる。こんな優しい彼だからこそ私も惹かれたんだ。さすがに緊急事態なので己の欲望はその時が来るまで押さえておく。一旦ね。
アクたんの計画としては、嘘偽りない今ガチメンバーの姿を動画にすることで、あかねのイメージを回復するという事らしい。うん、勘所は悪くない。
幸い私はバズらせのプロだし素材も揃ってる。後はアクたんが映画監督から学んだという映像編集テクで映像を作ればいい。今ガチメンバー(というか主に私とアクたん)の力を合わせてあかねを助けるのだ。
「アクたん。そうと決まれば善は急げだよ。急いで動画作ろう。」
「ああ。MEMはYouTuberだよな?機材は揃ってるか?」
「モチのロンだよぉ。好きなだけ使いな!・・・あれ?」
「どうした?」
私は気づいてしまった。
私も動画編集するから分かるけど、決まった型がない動画をゼロから作成するのってものすごい時間がかかる。まあ、1日や2日では終わらないだろう。しかしあかねのことを考えれば1秒でも早く動画を発信したい。時間は無駄にできない。
つまり、今日から毎日アクたんが我が家に来る。
翌日。
「いらっしゃい♡」
「まんまと嵌められたな・・・俺。」
「まあいいじゃないの。君の心のケアにもなるんだしさぁ。」
「・・・そうだな。」
さっそく動画制作に入る。
私はYouTuber。彼は映画監督の弟子。今回の動画はジャンルで言えばドキュメンタリーであり、アクたんの領分に近い。必然的に動画作成の作業の多くを彼が請け負うことになる。
学べることは多かった。YouTubeと映画ではこうもやり方が違うのかと驚くこともあれば、YouTubeにアップする動画に取り込めるテクニックもある。
映像作成に関わるもの同士、会話は大いに盛り上がった。この動画制作を経て、私たちのより関係はより親密なものとなるのだろう。
「そろそろ夕飯にしようか。食べてくでしょ?」
「悠長に喰ってる暇はないぞ。」
「分かってるって。アクたんは作業を続けててよ。私がご飯作るから。」
「ああ、頼む。」
メインで作業するのはアクたんなので、実際の所私の出番はかなり少ない。意見を求められることはあるにせよ、基本的には素材と機材を提供した時点で私の仕事のほとんどは終わっていた。
私に出来ることは、アクたんのパフォーマンスが落ちないようにサポートすることだ。内助の功ってやつ?さすがに気が早いか。
さて夕飯のメニューは何が良いかな。アクたんの好きな料理って・・・。ああ、好物聞いておくんだった。とりあえずは作業しながら食べられるものにしよう。サンドイッチとかでいいかな。
私は手際よく夕飯の支度を終え、アクたんの待つ作業部屋へ向かう。
「お疲れさん。夕飯出来たよ。」
「ありがとう。そこ置いといてくれ。」
「んもー。なんか感想とかないの?せっかく彼女が料理を振舞ってあげてるのにさぁ。」
「今はそれどころじゃ・・・」
「ちょっとは休みなって言んの。」
「分かったよ。」
家で彼に手料理を振舞う。世の乙女が憧れるシチュエーションじゃなかろうか。
本当はもっとべったりくっついて甘々な時間を過ごそうと思っていたけど、彼が動画編集に精を出す姿を眺めているのも悪くない。
アクたんはサンドイッチを食べながらも画面から目を離さない。その横顔もかっこいい。ほんと、この顔面は反則だと思う。
「イチャイチャできなくて寂しいかと思ったけど、こういうのも悪くないかも。」
「何のんきなこと言ってんだよ。」
「そういうとこだよアクたん。息抜きだって必要だよ。頑張り続けるだけじゃパフォーマンスも落ちる一方だし、そのうち壊れちゃうよ?ほらちゃんと食べな。」
「助かる。」
まあなんにせよ、アクたんの力になれたようで良かった。
PC画面とにらめっこする彼を眺めながら食べるサンドイッチは乙なものだった。