適当に済ませても良かったけど、せっかくなので書きました。
「イケる!!これイケるきたぁあああ!!」
俺たちが作成した動画は24時間後に7万4千RTを達成。黒川あかねのイメージを変革すると同時に『今ガチ』の人気を決定づけるものとなった。
次の週の収録。MEM、ゆきと共に控室でくつろいでいると、黒川あかねがやってきた。メンタルが回復し、次の収録から復帰するのだという。
「これからはさ、あかねもちょっとキャラ付けた方が良いんじゃない?やっぱ素の自分で出て叩かれるとダメージ大きし。」
MEMの一言で、今後の今ガチでのあかねのキャラをどうするかという話になり、なぜか俺に白羽の矢が立った。
「アクたんはどういう女が好み?」
「なんで俺に・・・」
「今男キミだけだから。理想の女性像を教えてあげてよ。」
今惚れてる女は目の前にいるんだがな。良くこんなことを俺に聞けたものだ。まあ、適当に答えておけば問題ないだろう。下手にアイのことを言って家族関係を探られたくもない。
「顔のいい女。」
「うっわ最悪。」
「ルッキズムの権化出たな。」
別にいいだろ。顔が可愛いのは重要だ。もうめんどくさくなってきた。適当にMEMに投げておこう。
「っていうか、俺に聞いたらMEMみたいな人って答えるだけだろ。今付き合ってるんだし。」
「それもそうかぁ。」
「ごめんねアクア君。ちゃんと自分で役を作ってみるよ。」
結局、黒川あかねのキャラは本人が責任をもって考えてくるという、なんともつまらない結論になった。
その日の帰り道。俺はいつものようにMEMと一緒に街を歩いている。
今日はこのまま監督の所にでも寄って帰ろうかと思っていたとき、ソイツは現れた。
「やあ。ここのところずいぶんと楽しそうにしているね。」
疫病神、とでも呼べばいいのだろうか。復讐を誓ったあの日から度々俺の前に現れる、明らかに人間じゃない何か。復讐のヒントをくれることもあれば、復讐心が落ち着いたころに現れて憎悪を煽ってくることもある。
こいつが何者で、何を企んでいるのかは分からないが、遭遇して嬉しい相手ではないことだけは確かだった。
「ねえアクたん。この子なに・・・?何もないところから急に出てきて・・・」
「良く俺の前に現れるんだが、俺にも分からない。俺の復讐に一枚かんでるのは間違いないけどな。疫病神とでも呼べばいいんじゃないか。」
「ひどいなぁ、疫病神だなんて。あたしは君の望みを叶えてあげようと思ってるのに。」
「黙れ。復讐はもう終わりだ。そんなことをしても誰も幸せにはならない。」
復讐はもうやめた。俺はもう自分の人生を生きると決めたんだ。アイもきっと俺の幸せを望んでるに違いない。
なのにこいつは俺の前に現れた。どうせまた復讐を続けろと暗に諭してくるんだろう。これまでと違ってMEMの前にも表れたってことはよほど焦ってるのか。
「そっちのお姉さん。いいこと教えてあげようか。」
「・・・」
「返事くらいしてよ。まぁいいけど。あなた、お父さんの事キライなんでしょ?」
「!?なんでそんな事しってるのさ。」
「理由はどうだっていいよ。大事なのは、そのお父さんが今まさにあなたが思いを寄せてる人に生まれ変わっちゃったってことなんだから。」
「適当なこと言わないで。アクたんがお父さんの生まれ変わり?笑っちゃうね。行こう、アクたん。・・・アクたん?」
MEMが同意を求め俺の方に振り向くが、彼女の求める返事は出来なかった。疫病神の言葉の意味が理解できずにいたからだ。
生まれ変わりをこいつ知っているのは良い。しかし、なぜそれをMEMに伝える?意図が読めない。予想外の展開に動揺を隠せない。
「分かりやすく動揺してるね。それじゃあ自分は雨宮吾郎ですって言ってるようなものだよ?」
「ねえアクたん。この子が言ってることって・・・」
「お姉さん、ほんとのことが知りたければお母さんに聞いてみるといいよ。」
「黙れ疫病神。これ以上喋るな。」
「ねぇ、良いこと教えてあげようか。本当はね、君と結ばれるのは黒川あかねだったはずなんだ。それがあたしが知ってるシナリオ。でもおかしいんだ。とあるネット番組が始まってからあたしの知ってるシナリオと違うことが起こり始めたの。なんでか分かる?」
「・・・」
「お姉さんだよ。あなたが彼の決心をうやむやにしちゃったの。ねぇ、今からでもいいから身を引いてくれないかな。キライなお父さんが彼氏なんていやでしょ?」
疫病神は消えるようにその場から居なくなった。