ルビー、アクアはちょっとお辛い感じなので、MEMは甘口で。
前世バレは無しで、何も知らないMEMがアクアにひたすら愛されるのが良い
アクア的には使命感から始まった交際だがMEMのことは女性として普通に好き
「お疲れさん。また明日ね。」
「お疲れー。MEMちょ編集頑張ってね。」
B小町のライブに向けた練習を終えて、今日はもう解散だ。私以外は。
「はー。やっぱり疲れるねぇ。YouTuberとアイドルの2足のわらじは。しかもアイドル活動は裏方まで引き受けちゃったし。」
「でも楽しいんだろ?」
「んふふー。まあね。」
ここ最近のお仕事は忙しいながらも本当に楽しい。それは、夢が叶ってあのB小町の一員になれたというのが一つの大きな理由だ。でも今はそれだけではない。
隣でPCを開いてアクたんが作業を始めている。B小町の二人が帰った今、事務所のこの部屋には私と彼氏の二人きりだ。
そう、彼氏。私はアクたんと付き合っている。
「まさかアクたんが私にアタックしてくるなんてねぇ。」
「別にいいだろ。」
「いいけどさぁ。やっぱ気になるんだよねー。なんで私なのさ。」
「・・・好きだからだよ。」
恥ずかしがりながらもちゃんと答えてくれる。
この表情を見るために何度このやり取りをしたか分からない。本当にかわいい表情をするし、そもそも顔が良い。普段冷静な分、ギャップもすごい。何度も見たくなって当然だ。
「じゃあ逆に聞くけど、なんでMEMはOKしたんだ?」
だって、こんなにかっこよくて頭が良くて優しい人が突然現れて、B小町になる夢を叶えてくれたら運命感じるしかないじゃん。とは恥ずかしくて言えなかった。
「そりゃあ、頼れるお姉さんとして少年の一世一代の告白を成功させてあげたいと思ったまでだよ。」
「なんだそれ。」
これもいつものやり取り。
アクたんにとって私は初めての彼女らしい。あかねのことを聞いたらビジネス彼女として数ヵ月付き合っただけだからノーカンなんだって。ごめんねあかね。アクたん、私が取っちゃった。
あかねにとってアクたんは命を救ってくれたヒーローかもしれないけど、私にとっては夢を叶えてくれたヒーローだからね。簡単には譲れないよ。
「ねえアクたん。もうこっちは今日の作業終わるよ。」
「こっちはもう少しかかるな。」
「じゃあ待ってるね。」
「ああ。」
仕事が終わって手持無沙汰になり、とりとめのない思考がぐるぐると回りだす。
アクたんが私に告白してきたのは、私のお父さんの話をして少しした頃だっけ。あの話をして以降、なんか急に明るい感じになったというか、思いつめたような表情をしなくなった。ルビーは昔のお兄ちゃんに戻ったみたいとか言ってたっけ。
なんでかは分からない。もしかしたら父親を知らないことを悩んでたのかも。同じ境遇の私がインフルエンサーとして活躍してるのを見て吹っ切れたとか?いやないか。
ルビーと何か話したのかなぁ。悩んでたのは実はルビーの方で、何か気持ちの変化があったのかも。それでアクたんまで元気になっちゃった?
ほんと、アクたんはルビーのこと大好きだなぁ。
まあそんなことはどうでもいい。アクたんは元気になった。そして今は私を愛してくれてる。それだけで十分。ごめんねルビー。お兄ちゃんは私のことが好きみたい。
「終わったぞ。」
やっとアクたんの仕事も終わったみたい。待っていたのは時間にして20分くらいだけど、倍以上待たされたような気もする。
「やっとイチャイチャできるねアクたん♡」
アクたんに抱き着く。彼もすかさず抱きしめて頭をなでてくれる。
「相変わらず人が見てないと甘えん坊だな。」
いつもの平坦な声じゃない。まるで父親が幼い娘をあやすような、気持ちがこもった声。
私が甘えるとき、アクたんは絶対に拒絶しない。まるでそういう義務やルールが存在して、それを律儀に守っているかのようだ。アクたんの恋愛観はちょっと変わってるのかも。
「だって私25だよ?もう子供じゃないんだし、さすがに人前ではねぇ。」
「それはそうだ。まあ、MEMはアイドルなんだし外では気を付けないとな。」
子供がお父さんに甘えるのって、こんな感じなのかなぁ。アクたんって落ち着きがあって大人びてるし。それに、お母さんから聞いたお父さんの人物像は、アクたんとびっくりするほど一致してるんだよねぇ。
性格はもちろん、女たらしなところもそうだし、なんと医者を目指しているのも同じなのだ。
「ほんとアクたんって、話に聞いた父さんにそっくり。お母さんが好きになっちゃったのもわかるなぁ。」
この人の重荷になりたくなくて、勝手に身を引いてしまう気持ちもね。
「・・・お前は勝手にいなくならないでくれよ?」
そう言いながら、私をより強く抱きしめる。ああ、愛されてるなぁ、私。
アクたんは大切な人を失うのをすごく恐れる人だ。あかねが炎上した時もそうだったし、唯一の肉親であるルビーのことを過保護なくらいに大切にしている。
かなちゃんだってそうだ。いつも気にかけてることを私は知ってる。ああ、そういえばかなちゃんもアクたんのこと好きだったっけ。ごめんねかなちゃん。アクたんに選ばれたのは私なんだぁ。
「何度も言わなくたって分かってるよぉ。私がいなくなったらアクたん泣いちゃうもんね?」
そう言いながら、アクたんをより強く抱きしめる。私はいなくならないよって意思表示。
アクたんは恥ずかしがり屋で多くを語らない。だからこそこうやって、いなくならないでくれって何度も言ってくれるのが嬉しい。
私は間違いなくアクたんの大切な人だって分かるから。