MEMちょの父親が雨宮吾郎だったら   作:座右の銘

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その3の続き。宮崎旅行編。
アクアは未来を見て生きてるので死んださりなちゃんより今生きてるMEMちょの方が大事ってことにした。
ルビーはアクアを信じてたけど、アクアはMEMの味方をするんだろうなーとかそんな感じです。


私のお父さん? その4

MEMちょがせんせの遺体を見つけた。

 

MEMちょは相当落ち込んでた。まあ、面識がないとは言え会いたいと思っていた父親が死体で見つかったんだから無理もないか。

 

「俺はこれからMEMのところに行く。落ち込んでるだろうからな。」

 

「じゃあ私も行く。」

 

お兄ちゃんは優しい。まるでせんせのように。

 

でもここ最近、その優しさはMEMちょに向いている。まあ付き合っているから当然なんだけど、なんだかお兄ちゃんをMEMちょに取られたみたいでちょっと嫌だ。

 

いや、実際に取られてるのか。

 

そんなことを考えている間にMEMちょの部屋に到着していた。

 

MEMちょの表情は少しやつれた感じだった。頭を掻きむしったのか、髪はボサボサになっている。

 

「MEM、大丈夫か。顔色が良くないぞ。」

 

「さすがにこれはショックだよ。受け止めきれない。」

 

落ち着かない様子だ。声が少し震えている。

 

お兄ちゃんがMEMちょの隣に座り、話しかける。

 

「時間をかけて消化していけばいい。今日はもう考えるのをやめて寝よう。」

 

「そうだね・・・」

 

その時だった。MEMちょが大事そうにポケットからあるモノを取り出した。

 

"アイ無限恒久永遠推し!!!"

 

私がせんせにあげたキーホルダーだ。量産品の別のキーホルダー?いや私が間違えるはずない。傷のつき方、インクの剥がれかたまで完全に覚えている。間違いない。

 

思い出のキーホルダー。忘れるわけがない。だってあれは、私がせんせにあげたものだ。なんでMEMちょが持ってるの。それは・・・それはあなたが持っていていいものじゃない。

 

私は冷静じゃなくなった。

 

「どうしてMEMちょがソレを持ってるの?」

 

自分でも驚くくらい冷淡な声で尋ねる。

 

怒り?嫉妬?悲しみ?自分でもよく分からない、ドロドロした気持ちが心の中を埋め尽くしていく。

 

「それはあなたが持っていていいものじゃない。」

 

MEMちょもお兄ちゃんも驚いた顔をしている。

 

「返してくれる?」

 

沈黙は数秒だった。その数秒の間にMEMちょの表情が驚きから怒りに変わっていく。

 

「返してって何!?なんで?なんでルビーに返さなきゃいけないの。これは私のお父さんの形見なんだよ。私が持ってて何が悪いの!?」

 

普段のMEMちょからは想像できない、子供の癇癪のような叫び声。

 

なんであなたが怒るの?怒りたいのはこっちの方だ。父親の形見?そんなの関係ない。それは私とせんせだけの思い出だ。

 

「それは私がせんせにあげたものなんだよ。もともと私の物なんだから私が持つべきでしょ。」

 

「意味わかんない!適当なこと言わないでよ!」

 

意味不明なことを言ってる自覚はある。それでも、気持ちは抑えられない。あのキーホルダーを私とせんせ以外の人が持つなんて、娘であっても許せない。

 

「二人ともやめてくれ!」

 

止めに入ったのはお兄ちゃんだった。

 

「ルビー、一つ聞きたいことがある。」

 

凄く真剣な顔。不安と、覚悟の表情だ。

 

「君はさりなちゃんなんだね?だからあのキーホルダーのことを知ってる。違うか?」

 

「なんで・・・、なんでお兄ちゃんがそのことを知ってるの・・・?」

 

さりなは私の前世の名前。キーホルダーは私がせんせにあげたもの。つまりそういう事?

 

「・・・ねえ、もしかして、そうなの?貴方は、せんせーなの?」

 

「そうだ。」

 

居てくれたんだね。こんな近くに。私、ずっと探してたんだよ?

 

「これ、探してたんだよ。」

 

そういって、MEMちょが大事そうに持つキーホルダーに視線を向ける。

 

「君が持っててくれたんだね。MEM。」

 

そう言い放ったアクアはまるで父親が娘の行いを褒めるような、優しさに満ちた表情をしていた。

 

 

 

・・・

 

 

 

しばらくアクアと私の説明が続いた。最初は疑っていたMEMちょも本人しか知りえないはずの情報の数々を聞き、私たちに前世の記憶があることに納得してくれた。

 

そして、話題はキーホルダーへと戻る。

 

「事情は分かったよ。確かにこれはルビーがお父さんにあげたものなんだね。」

 

「そうだよ。それは私とせんせの思い出の品なの。私が持つべきものだよ。」

 

「お父さんにあげたんでしょ?だったらこれはもうお父さんの物だよ。そしてそれを受け取れるのは娘である私じゃないの?」

 

話し合いは平行線。MEMちょは頑として私の意見を聞いてくれない。

 

だから私はお兄ちゃん、いや、せんせに決めてもらうことにした。せんせは裏切らない。私の味方をしてくれるに決まってる。絶対に。

 

「お兄ちゃん、いや、せんせは私が持つべきだと思うよね。」

 

でも、お兄ちゃんの答えは私の期待通りじゃなかった。

 

「いや、MEMが持つべきだ。父親との唯一の形のある繋がりなんだ。それに、見つけたのはMEMだしな。ルビーも過去に縛られるのはやめよう。俺たちはこうして生まれ変わったんだから。」

 

意味が分からない。

 

「なんでなんでなんで!?なんでそんなこと言うの!?ずっと大事にするって言ったよね。あの時の言葉は嘘だったってこと?そんなの納得できない。どうせすぐ死んじゃうから?ああそうか、死んだら約束守ってるか確認なんてできないもんね。その時だけ私を喜ばせれば良かったんだ!」

 

「そうじゃない。俺はもう過去に縛られることをやめたんだ。君のことを傷つけたいわけじゃないし、さりなちゃんを助けられなかったことは本当に後悔しているんだ。」

 

「だったら!」

 

「だからこそだ!芸能界に入ってMEMと再会して、彼女の夢を叶えることになって、そして前世の自分の実の娘だと分かったとき、決心したんだ。もうあんな後悔はしたくないって。目の前の大切な人を絶対に幸せにするって。」

 

お兄ちゃんの顔は真剣そのものだった。

 

つまりはそういう事。もうお兄ちゃんは私やママよりMEMちょが大事ってことなんだ。お兄ちゃんはもう前を向いて生きている。ママの死を乗り越えて、MEMちょを幸せにするっていう新たな目的が出来たから。

 

「アクたん・・・。アクたんは私が前世の娘だから良くしてくれてるの?」

 

MEMちょがお兄ちゃんの顔を心配そうにのぞき込んでいる。

 

「気にしないでくれ。今更父親面しようって話じゃない。きっかけはどうあれ、お前のことを一人の女性として愛してる。それだけだ。」

 

その言葉に嘘はない。十数年一緒に暮らしてきたから分かる。

 

だからこそ、辛い。

 

「なあ、ルビー、いや、さりなちゃん。もう過去に囚われるのはやめてくれ。病室から抜け出して、やっと自由に生きられるんじゃないか。」

 

まだそんなこと言うんだ。

 

「アイみたいに格好良い衣装着て可愛い歌うたって皆にコール貰ったり、大きなステージに立って皆に喜んでもらって、こんな夢を叶える為にアイドルやってんだろ!」

 

どうせそんなこと、みんなに言ってるんでしょ。

 

結局、私はたくさんいる患者の中の一人だったってことだ。せんせにとって本当に大事な人は私じゃなかった。

 

嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきみーんな嘘つき。

 

せんせは最初から私のことなんて見てなかったんだね。

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