東方訪問記   作:白い花吹雪。

1 / 77
序章
プロローグ・始まり


 

幻想郷周辺 スキマにて

 

「…?あれは…?」

 

スキマの妖怪は、それを見て目を留めた。

 

そこにあったのは、見慣れぬ形の飛行船。近づいてみると、それは明らかにこの世界のものではなかった。

 

(外の世界のものか…。でも、こんなものは見たことがない。自力でここに入り込んだのか? 忘れられるような存在には見えないし…何かあるかもしれない)

 

そう考え、ひとまず乗組員に話を聞いてみることにした。

 

入り口らしき場所はすぐに見つかったが、扉は開かない。仕方なくスキマを使い、内部へと足を踏み入れた。

 

 

 

歩きながら船内を見渡す。ぱっと見はどこにでもある飛行船のように見えるが…。

 

「内装自体は特に変わったところはない。でも、自力でスキマに入ってきたくらいだから、ただの船ではないはず」

 

独り言を呟きながら進んでいくと、大きな扉が目に入った。

 

近づくと、自動で開く。

 

その奥には制御室らしき部屋があった。機械が並ぶ中、一番大きな椅子に座った人物がいた。女性のように見えるが、何やら慌ただしくモニターを操作している。

 

「ねえ、貴女がこの船の船長?」

 

「!?」

 

女はひどく驚き、勢いよく振り向いた。

 

「な、何者だ!? どうやって入ってきた!?」

 

「心配しなくても大丈夫。私はこの空間の主で、いつも通り見回っていたら、貴女の船を見つけたの。気になったから声をかけただけ。…で、貴女はここで何を?」

 

「…そうか…」

 

女は一度うなだれた後、ぱっと顔を上げた。

 

「よかった!なら、私とこの船をここから出してくれないか!?」

 

「…?どうしたの?」

 

「私は凛央(りお)、まあ…こことは違う世界の、科学者兼司祭だ」

 

彼女は、状況を語り始めた。

 

「この船は《ベイトーア》と言って、私が7年かけて作り上げた、空間と時空を超えることができる船だ。試運転も兼ねて、様々な世界を巡っていたんだが…突然ワープ機能が暴走して、闇雲にワープを繰り返した挙げ句、ここで停止した」

 

「へえ…」

 

「しかも、その後調べたら船自体が完全に壊れていた。だから、この得体の知れない空間で立ち往生していた、というわけだ」

 

スキマの妖怪は、その話を聞き終え、ひとつ呟いた。

 

(空間と時空を超える船…ねぇ。そんな代物があったとは驚きだけど、確かに見た感じ動けそうな様子じゃないし、多分この人の話は本当。偶然ここに迷い込んだのね…)

 

(…まあ、このまま放っておくのもかわいそうだし、何よりこんなところに居座られても困る)

 

そう考えた彼女は、凛央に提案する。

 

「なら、貴女…幻想郷に来る?」

 

「…げんそう…? それは何だ?」

 

知らないのも無理はない。

 

「この空間のすぐそばにある世界。私もそこに住んでいるわ。悪い人には見えないし、帰るのを手伝ってあげる。うちの庭で、船の修理をしなさい」

 

「本当か!? それはありがたい…感謝する!」

 

「お礼はいいから。さ、行きましょう」

 

こうして、妖怪はその船を幻想郷へと招き入れた。

 

 

 

 

「おお……これが……」

 

幻想郷の風景を前に、凛央は息をのんだ。

 

「素晴らしい……なんと美しい世界なんだ……」

 

そして、ふと思い出したように口を開く。

 

「そうだ…貴女の名前は?」

 

「私は八雲紫。さあ、こっちよ」

 

こうして、異界の旅人・凛央は幻想郷へと迎え入れられた。

 

——しかし、この時はまだ誰も知らなかった。

 

彼女がこの世界に来たのは、決して偶然ではなかったこと。

 

そして、この出会いが——この世界を、地獄へと変えていくことを。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。