東方訪問記   作:白い花吹雪。

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かつて何だったのかわからない人型の化け物。
わかるのは目に映る物全てに憎しみと嫉妬を抱く事と、その身に纏った負の感情の強さ。
そして、極端に光に弱い事だけ。




5-4 恨む者

女を倒した途端、霧が晴れた。

「あいつの仕業だったのか」

 

あたりを見渡してみると、もうすぐそこに扉があった。

龍神はさっそく駆け寄って手をかけたが、開かない。

「ありゃ、開かないな」

 

「こいつ鍵持ってたぞ」

姜芽が、女の死体から見つけた鍵を龍神に見せた。

 

その鍵を使うと、扉が開いた。

 

 

 

扉の向こうには、さらに奥へと続く通路があった。

そこを通る途中、姜芽はあるものを発見し、立ち止まった。

 

「…ん?」

 

「どうした?」

 

「見ろよこれ」

姜芽が壁に見つけたもの。

それは一枚の絵画だった。

 

「なんだ…?」

見た感じ、どこかの屋敷のようだ。

この世界に存在する建物だろうか。

…と、本来ならそれだけで終わるところだが、姜芽はこの絵に妙な不気味さを感じたのだ。

 

「この絵…なんか気味悪いな」

 

「そうか?」

龍神は、絵をよく見て、あっ、と声をあげた。

 

「何かわかったのか?」

 

「わかった…というか、この絵…もしかして地霊殿か?」

 

「なんだそりゃ?」

 

「こいし様とか、あいつの姉とか、さっきの奴…火燐とかが住んでる館だ。光のない地の底、地獄にも近い所にあるって聞いたことがある」

 

「地獄…ねえ」

 

「なんでこんなものの絵がここにあるんだ?…てか、なんかめくれてるな」

龍神は絵の右上のめくれている部分を掴み、軽く引っ張った。

すると絵が剥がれ落ち、その下から別の絵が現れた。

 

それは、今剥がした絵と同じ建物を描いたものだった。

しかし、窓や入口の扉が壊れ、廃墟のようになっている。

「これもまた薄気味悪いな…」

 

「…」

龍神は、何やら絵を凝視していた。

 

「…どうした?」

 

「この絵から、強い力を感じる。強い…負の感情だ。

憎しみとか恨みがメインだが、一番は…嫉妬、かな」

 

そこまで言って、龍神ははっとした。

「そうか、もしかしたらこれは…」

 

「…?」

 

「姜芽、次に出てくる奴の見当がついた。たぶん、橋姫だ」

 

「橋姫?」

橋姫、というのは姜芽も聞いたことがある。

確か、人間界の妖怪、あるいは女神の一種。

 

「…あ、橋姫って言っても化け物のほうの橋姫な。

まあ、この世界の橋姫は…正確には、何だかよくわからん化け物だけどな」

 

「よくわからん…って」

 

「こっちの橋姫ってのは、ありとあらゆる存在に嫉妬と憎しみを抱いて殺そうとする化け物だ。けど、その嫉妬と憎しみが一体どこから来てるのかは誰にもわからん。

そもそも奴自身が一体何者で、元々何だったのか、どんな姿をしてたのか、よくわからない。

今あいつに関してわかるのは、こいし様達に仕える化け物の一人であること。そして、異様なまでに強い憎しみと嫉妬を纏っていること…それくらいだな」

 

「憎しみと嫉妬…どっちもとるに足らない感情だな。

まあ、小悪党にはぴったりな気持ちだけど」

嫉妬や妬み、恨み、憎しみといった感情に囚われた者がろくな目に合わない事は、姜芽もよく知っている。

 

「小悪党…ま、そんなもんかもな」

 

 

 

奥へ進むと、小さな部屋に出た。

床には4つの謎の絵が書かれた床があり、部屋には4つの人間のような何か…もとい化け物の像も置かれている。

そして奥には、大きな両開きの扉がある。

 

「これは…」

 

「誰でもわかる簡単な仕掛けだな」

化け物の像と床に書かれた絵は同じものだった。

姜芽が像を押してみた所、やはり簡単に動かせた。

「よし、あとはこいつを…」

 

改めて床の絵と化け物の像を見比べる。

今押したのは、2つの翼を持つ天使のような何かの像。

一方、目の前の床に書かれた絵は、5つの目玉のようなものをまわりに浮かせた女の絵。

その横に、今の像と同じ絵が書かれている。

そして、今見た絵と同じ、目玉の女の像も姜芽の後ろにあった。

姜芽は、天使の像と目玉の女の像をそれぞれ、同じ絵が書かれた床に押して乗せた。

 

「龍神、そっちはどうだ?」

 

「終わったよ」

 

龍神は、2本の鬼のような角を持つ女の像と、陰陽師のような格好をした男の像を動かしたようだった。

「お、OKだな」

 

そして、扉が開いた。

「旧作連中の像とは…無駄に趣があるな」

龍神がそんな事を言った。

 

 

 

 

扉の向こうには、複数体の化け物がいた。

二人がそれらを適当にあしらうと、何かが降りてきた。

 

それは、金髪に緑の目をした女だった。

「おっ、出てきたな」

女は龍神の言葉には答えず、姜芽に飛びかかった。

姜芽がそれを回避すると、女はすぐに技を使った。

無数の黒い球が降り注ぐ。

 

姜芽は飛び退いたが、足に数発食らった。

被弾した所に強い痛みを感じて押さえると、皮膚が黒く変色していた。

それは、カビのようにみるみる広がっていく。

同時に、体を芯から蝕まれるような感触を感じる。

「…!」

 

「姜芽!」

 

「大丈夫だ!これは…呪いか…?」

 

そうしている間にも女は右手に赤い球を作り出し、龍神にそれを巨大化させて飛ばしてきた。

龍神はそれを避けたが、球は彼を追尾してきた。

 

「ちっ…面倒なもの出しやがる…!」

 

龍神はそれから逃げつつ、女に飛びかかる。

女は龍神の攻撃を躱したが、彼を追ってきた球に被弾した。

そして女が怯んだ所に、龍神は技を打ち込む。

「刀技 [メドールスラッシュ]」

 

女は一度のけぞったが、すぐに体勢を立て直して球を撃ち出して反撃してきた。

龍神はそれを躱しながら女に近づき、その胸を斜めに切り裂く。

 

次は姜芽を狙ってきた。

魔法陣のようなものを展開し、そこから波動のようなものを撃ち出してきた。

結界を張って防ぐ。

 

(っ…)

被弾した箇所が強く痛む。

それは次第に広く、強くなっていく。

そして、とうとう膝を崩してしまった。

「なっ…!」

同時に結界を張る力が弱まり、結界が割れてしまった。

 

盛大に被弾したが、倒れたりはしない。

この程度のダメージは、よく受けるものだ。

炎の術を使おうとした…が、踏ん張れず魔力を上手く制御できない。

いや、それ以前に立つことも出来ず、崩れるように倒れた。

 

女が襲いかかってきたが、すばやく斧を剣に変形させ、その腹に突き刺し、魔弾を打って吹き飛ばした。

そして自身の体を包むように結界を張り、解呪の魔法を使う。

ノワールの魔法で解けるか心配だったが、大丈夫だった。 

 

呪いを解いたら、次に回復の魔法を使う。

これでもう大丈夫だ。結界を解き、技を放つ。

「斧技 [レイドスレイヤー]」

女の左腕を切り落とす。

そのまま、姜芽は頭に斧を振り下ろした。

 

左腕を失い、頭がばっくりと割れてもなお、不気味な瞳を光らせ、まだ戦意が消失していない事を伝えてくる。

今度は龍神に向かってきた。

龍神が刀を振り上げて斬りつけると、血を噴き出しながらも果敢に向かってくる。

 

さらに、部屋の奥に例の化け物が複数体現れた。

 

「面倒だ…締めよう」

龍神はそう言って女に電撃を浴びせて痺れさせ、刀を構えた。

「奥義 [蒼龍刀]」

瞬速で払い抜け、女の体を横に切り裂く。

 

すると、女の腹の避けた所から不気味な肉塊のようなものが飛び出し、動き出した。

 

「おっと…?」

 

それは、うねうねとうごめいてこちらへ伸びてきた。

そして、姜芽と龍神に襲いかかった。

「まるでびっくり箱だな」

姜芽はそう言いながら、伸びてくる肉塊を掴んで燃やす。

龍神は返り血を浴びながら肉塊を切り刻んでいたが、姜芽が肉塊を燃やしている事に気づくと離れ、こちらへ向かってくる化け物の相手をした。

 

やがて根本まで火が届き、女の体は炎に包まれた。

肉塊は苦しむようにもがいたが、まだ動きを止めなかった。

そこで、姜芽が光魔法を使うと、あっけなく力尽きて動かなくなった。

それは、丁度龍神が化け物を片付け終わったのと同じタイミングだった。

 

 

「龍神」

 

「大丈夫だ。こっちも今終わった」

 

「結局何だったんだ、こいつ」

 

「喋ってなかったから、操られてたか、頭をやられてたかしたのかもしれないな。ま、どっちにしろ大した事じゃないが」

部屋の奥を見ると、先程化け物が出てきた通路が開いたままだった。

二人は、迷うことなくそこへ進んだ。

 

 

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