東方訪問記   作:白い花吹雪。

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6-3 疑似居住区

足音の正体は、ここまでに見たのと同じ化け物…「レノール」の大群だった。

それらはみな、斧や(くわ)を持っていた。

魔弾を放ちまくったが、一発では倒せず何発か当ててようやく倒れる。

さらに、倒しても倒しても押し寄せてくる。

「キリがないな…!」

 

「面倒だ…近接で行くぞ!」

龍神はそう言い、一人で大群に突っ込んでいく。

「お、おい!大丈夫なのか!?」

 

龍神はまず先頭にいた個体にの額にナイフを突き刺し、そのまま押し倒して後頭部を床に叩きつけた。

その後素早くジャンプし、雷を落として残りの敵を掃討した。

 

「おお…!やるな!」

 

「進むぞ!いずれ増援がくる!」

 

「えっと…どっちに行けばいいんだ?」

 

「とりあえず、こっちだ!」

通路の左側を通っていく。

 

 

 

通路の先にあった階段を上ると図書館のような部屋に出た。

そこには1体のシャベル持ちのレノールがおり、二人を見るや否や向かってきた。

姜芽はその顔にストレートを打ち込み、更に敵を掴んでバックドロップをかました。

レノールは頭が砕け散り、あたりに血と肉片を撒き散らした後に溶けた。

 

「ナイスドロップ」

 

「なんか久しぶりに決めたな」

そんな事を話しつつ進んでいく。

その声を聴いたのか、新たなレノールが現れる。

これは龍神が飛びかかって頭を貫いた。

 

その後も随所にレノールがおり、こちらを見つけると襲ってくる。

姜芽は斧で頭をかち割ったり、ストレートからのバックドロップ、アッパーとストンプのコンボ、斧を変形させて剣で体を貫いたりし、龍神は刀で切る、素早く背後にまわりこんで首を斬る、蹴りを当ててからのストレート+斬撃、後頭部を掴んでの掌打、切り上げのコンボ…といった攻撃を繰り出す。

近づかれた場合は、片腕で武器を持っている方の腕を封じつつ武器を奪ってカウンターを決める。

そうして、敵を倒しつつ進む。

 

途中の分かれ道はとっさの判断で行く方を選ぶ。

看板や案内図が見当たらないため、デタラメに進む他はない。

最初の分かれ道を右へ進むと左側の襖が開き、数体のレノールが襲ってきた。

その中には二人よりも大柄なもの、逆に子供程度の身長しかないものもいた。

 

龍神が大柄な個体の頭を掴み、首を短剣で掻き切る。

姜芽は斧を振り下ろし、子供サイズの個体を真っ二つにする。

残りのレノールは、仲間が倒れても全く怖じけづかずに攻めてくる。

そいつらは龍神が全員斬り倒した。

 

それとなく今敵が出てきた部屋を覗いてみると、テーブルと座椅子が置かれており、テーブルの上に何かの鍵が置かれていた。

どこで使えるものかはわからないが、ひとまず回収しておく。

 

 

 

部屋を出て進んだ先のドアには鍵がかかっていたが、先程の鍵では合わなかった。

「面倒だ、ぶち破ろう!」

姜芽が斧でドアを破壊した。

 

部屋の中を見渡す間もなく、敵が寄ってくる。

どれも、棍棒やツルハシなどの近接武器を持っている。

最初に接近してきたのはシャベルを手にした個体。

そいつは龍神が頭に電撃を食らわせ、頭を吹っ飛ばした。

さらにそのまま次にきた2体の頭を掴んで壁に叩きつけ、床に倒してそれぞれの頭を踏み潰し、次の敵を掴んで引き寄せつつ短剣を刺す。

姜芽も負けていられないとばかりに、刀を持つ個体の突きを避けつつ顔にストレートを打ち込み、倒れた所へ魔弾を撃ちこむ。

後ろからきた敵も素早く察知し、首を掴んで前に放り投げた。

そいつは頭を壁にぶつけ、紫の血を撒き散らして倒れた。

「これで終わりか?」

そう姜芽が言った直後、何やらやかましい声が聞こえた。

声の方向を見る。

 

「まだいたのか」

敵が大挙して押し寄せてきた。

今回のは、妖怪がベースのもののようだ。

先頭の個体に魔弾を当てるが、先程までのレノールより硬い。

さらに、後ろにいる個体のうちの一体が高々とジャンプして飛びかかってきた。

それは、姜芽が斧を頭に刺して迎撃した。

と思いきや、倒れても手を伸ばしてくる。

 

「このっ!」

 

斧を一旦引き抜き、後頭部に振り下ろす。

血が飛び散り、今度こそ動かなくなった。

こいつらは、先ほどまでのものより強いような気がした。

 

まだ敵は多くいる。

そこで姜芽は、

「炎法 [絨毯熾火(じゅうたんおきび)]」

敵の足元を発火させ、焼き払う。

 

「おおかた、付喪と小鬼が混ざってる…ってとこか。

まあ人間だけじゃ、数が全然足りんわな」

刺し貫いた敵の死体を放り投げながら、龍神は言う。

「って、おお!一気に焼き払ったのか!いいじゃんか!」

 

 

黒焦げになった敵の死体が消えてゆくのを横目に進む。

あとはもう一本道で、迷うことはなかった。

そして…

 

 

 

しばらくして、広い部屋に出た。

そこにはソファーやテーブル、テレビなどがあり、旅館の広間のような部屋だった。

 

警戒しながら進んでいると、突然テレビの電源が入った。

そして…

 

凛央(りお)!」

 

「調子はどうかな?」

そこに映る凛央は、相変わらず不敵な笑みを浮かべた、美しくも恐ろしい女だった。

 

 

「まさかあれだけの化け物を全て倒してくるとはな。敵ながら天晴れよ」

 

「やっぱり、ここまでの連中は全部お前がけしかけてたんだな」

 

「そうだ。下等な妖怪と人間にはウイルスを投与し、C.S.T.として試験運用した。一部の住民はウイルスを投与した上で洗脳し、お前らを始末するための捨て駒にしたのだが…やはり、駄目だったようだな。まあいい。…お前らが奴らと戦ってくれたおかげで、それなりのデータが取れたからな」

 

「お前、ルナスクの復活が狙いなんだよな?」

 

「いかにも。だとしてどうする?」

 

「なら聞く。なんでこの世界に来た?」

 

「簡潔に言うと、この世界が私にとって都合の良い世界だったから、だ。」

 

「それは薄々感づいてたよ。で、お前はたったそれだけの理由で、ここでバイオテロを引き起こしたのか?」

 

「それだけ、とは見る目がない奴だな。

簡潔に言うと、と言ったはず」

 

「他に理由があるのか?」

 

「当然だ。…折角だ、この際全て話してやろう」

 

「そりゃどうも。聞かせてみろよ」

 

そして、凛央は語りだした。

「まず、話は半年前に遡る。お前らに敗れた後、私は偶然壊れた飛行船を見つけ、修理した。

そしてその内部データを整理していた時、偶然にもこの世界の情報を発見した。

詳しく調べてみた所、多くの人外が人間と共に暮らしている世界であり、一部には特殊な能力を持つ者もいるという。さらに、この世界は完全に独立した世界で、ノワールでもその存在は知られていない…とわかったのだ。

これをみて、私はすぐに閃いた。この世界の連中、あるいはその能力を使えば、これまでになかったC.S.Tが作れる。そしてあわよくばそれらを量産して売りさばき、いずれはルナスクを復活させよう…とな!」

 

姜芽は思わず身構えた。

 

「この世界のことも徹底的に調べ上げ、緻密に計画を練った。

まずはスキマにワープし、八雲紫をまんまと騙してここに入り込み、奴の能力と存在を剥奪した。

次に、計画の邪魔になると考えられる者を片っ端から無力化ないし排除した。連中からの能力の剥奪と記憶の改変、そして地上の地殻変動は、そのためにやった事だ」

 

「そして?」

 

「地上の各地にウイルスを容器ごと落とし、連鎖的に様々な生物を感染させた。

この世界は狭いが、住民どもの繋がりは無駄に濃い。瞬く間に感染が広まってゆくだろう…。地殻変動や有名な連中からの能力の剥奪、それらによって不安や恐怖を煽れば、いずれ変異する者が現れる。その中から、C.S.Tないしその候補となりそうなものを選りすぐろう。私はそう考えたのだ。

その結果、多くのC.S.T及びその候補が生まれた。

それはお前たちも見たはずだ」

 

「ああ、嫌って程見たよ」

 

「あれはほんの一部。そしてこれからも増える…」

 

「なに…!」

 

「地上の奴らの大半は、既に感染している。いずれ恐怖や不安から発症し、化け物となるだろう…薄汚い魔女も、そのお仲間も、人里の連中も、森や花畑、湖や山の連中も、地の底の連中も、全て!

やつらが全て変異し、地上が化け物の跋扈する地獄となった時、私の計画は次の段階へ移行する。

全てを…この「楽園」を、1から再構築する!

私が…新たな世界の創造主となるのだ!」

凛央は、両手を伸ばして嗤うように言った。

 

「大層な目標だな。だが、いつからそれが果たせると錯覚してたんだ?」

 

「お前らこそ、私の邪魔を出来るとでも思っていたのか?なら、それはまさしく「幻想」。現実と幻の境目がついていないようだな」

 

「いいや、違うね。必ず、お前の企みを食い止める!」

 

「まだ幻に囚われるか。

よかろう、その眠りから覚ましてやる。左を見ろ」

言われるがまま左を向くと、明かりが向いていないのでよくわからないが、得体の知れない獣のような何かが立っていた。

 

「これは…?」

 

「そいつは今回開発したC.S.Tの中でも高い完成度を誇る。そいつの元が何かわかるか?」

 

「…何だろうと関係ねえ。はっ倒すだけだ!」

 

「ほう?お前にはこの「楽園」の知恵があったと思ったのだがな。

ヒントをやろう、『紫の付属品コンビと白狼、犬のキメラ』…これだけでわかるか?」

龍神は、はっとした。

「…!まさか!」

 

「結局何なんだ、こいつは!」

 

「この場合の無知は好きになれんな。そいつに名前をつけるとすれば…」

 

「そいつ」はオレンジ色の目を開き、二人を見つめる。

スポットライトが当てられ、今まで暗がりに隠れていた化け物の全容が少しずつ明らかになってゆく。

それは猫のような狼のような爪と、獣と人間のそれを組み合わせたような体、そしてなんの獣かよくわからない顔をした、異様な姿の怪物だった。

 

「…そうだな、V-4とでも言っておこうか」

 

 

 

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