あれから2週間が経った。
「おーい、終わったぞ」
龍神の声が響く。
彼は、凛央が使っていた船を修繕·改良し、ノワールへ戻れるようにしたのだ。
「わかった」
姜芽はと言うと、朝起きてからずっと、子供たちやこれまで会ってきた者たちの相手に追われていた。
「みんな、悪いが俺達はもう帰らなきゃない」
姜芽がそう言うと、子供たちは口々に言った。
「えー!もうー?」
「まだお話したいよ!外の世界のこと、もっと聞きたいよ!」
「ずっと里にいてよ!そしてまた、私たちを助けてよ!」
そうは言われても、ここに居座り続ける訳にはいかない。
この世界とノワールのつながりは、これっきりにせねばならないのだ。
「…ごめんな、俺達には待ってる奴がいる。
それに、向こうでもやんなきゃない事があるんだ」
「でも…」
「あんまりわがまま言わないの」
その声の主は…
「お、あんたらか」
いつぞやの巫女と、金髪の魔女二人と医者、それに数人の
「あんた達…?外来人の分際で、随分と暴れてくれたじゃない。
私の仕事を奪うだけ奪って、何もよこさないでいなくなるなんて、いい度胸じゃないの」
「いや、奪ったつもりは…」
「問答無用!」
と、ここで止められる。
「まあまあまあ。気持ちはわかるけど、落ち着こうな?」
「むぅ…あんたはどっちの味方なのよ…」
「勿論、私は霊夢の味方だぜ。けどよ、ここは正直になろうな?」
「っ…」
「本当はお前も感謝してるんだろ?私にはわかるぜ。ほら、素直に言えよ」
「う、うっさい!
私はこいつらに、少しも感謝なんかしてないんだからね!」
姜芽は、この世界の住民は基本的に誰が誰だかよくわからない。だが、霊夢だけははっきりとわかる。
「とにかく、今回は完全に私達の出る幕がなかったな。
霊夢は認めたがらないけど、私もお前らには感謝してるよ」
「僕も同様だ。霊夢ですらどうしようもなかった今回の異変を、君らは外から颯爽と現れて、解決した。本当にすごいし、感謝している。君らがいなければ、今回ばかりは本当にヤバかっただろう」
「私からも、ありがとうね。…あの時、敵だなんて言ってごめんなさいね」
「なんだ、そんなことか。気にしちゃいない。…さて、そろそろ行かなきゃだな」
龍神は、船内で発進前に最後の点検をしていた。
「エンジンよし、両翼よし、電源よし…完璧だな!」
と、ここで、誰かが入ってくるのに気づいた。
そしてその直後、こめかみに鈍く光るものを認めた。
「…誰かと思えば。なんだ、暗殺でもしに来たのか?それともリベンジか?」
彼は、彼女を嘲笑うように言った。
「…本当はそうしてやりたい所ね。けど、今回はそれより大事な用があるのよ」
「というと?」
「お嬢様から、あなた達にと預かってきた伝言があるのよ…」
「…ほう?どういう意味だ?」
「さあね、私にもよくわからないわ。けど、あなた達なら、今わかんなくてもいずれわかるでしょう?」
「そうかもな」
「帰るんなら、さっさと帰りなさい。
なんなら、帰る前に…顔にここに来た証を刻み込んでげるわ」
「根に持ってんな。
そんなんだと、妹様に嫌われんぞ?」
「…相変わらずウザいわね。あ、もしまたこっちに来る事があったら、是非館(うち)に来てよね」
「ご主人様のご命令か?」
「いいえ。私自身の考えよ」
「あんたにしちゃ、珍しい事を言うな。
何だ、フルコースでも食わせてくれんのか?
霊夢も連れてっていいか?」
「…そしたら、あんたと霊夢に出す料理にだけは毒を入れておくわね」
「そりゃ恐ろしいなあ。で、本当の目的はなんだ?」
「何かしらね。言わなくてもわかるでしょ?」
「…まあな。
まあ、何回やっても同じ事だとは思うけどなぁ?」
「…はぁ、もういい。
じゃ、さっさと帰りなさい。
…今度来るまでに、怪我とかしないでよね。
あんたに怪我とかされたら、私もお嬢様も困るんだもの」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもない!
とにかく、早く出てってよ!あんたなんか、顔も見たくないわ!」
「…やれやれだ。これだからメイドって奴ぁ…
っと、そろそろ来るな…」
「よし、龍神、出発だ!」
「ああ。あばよ、東方世界!」
船は飛び立ち、空間を、結界をすり抜ける。
スキマを飛び続け、ノワール周辺の空間へ出て…
二人は帰還した。
出発した時から、殆ど時間が経っていなかった。
時間の流れが違ったのか、龍神が行き先を操作したのか。
姜芽はドアを開き、意気揚々と叫んだ。
「さーて、二度寝するか!」
龍神「ふー、終わった終わった」
姜芽「ん?何を勘違いしてんだ?」
龍神「…は?逆にまだあんのか?」
姜芽「ああ…むしろ、ある意味ここからが本番だ」
龍神「…」
姜芽「てわけで皆さん、話はまだもう少し続きます。
どうか、お付き合いください」