東方訪問記   作:白い花吹雪。

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1-2 訪問

「さてさて、あいつの化けの皮を剥げるようなものはないかな…」

早速探索を始めようとする姜芽を、

「まて」

龍神が止めた。

 

「どうした?」

 

「姜芽も同じ考えだと思うが…俺たちに対して、あいつが急にあんなにフレンドリーになるのは不自然だ。何かあるんだろう。

それをはっきりさせるためにも、この船を調査しよう。

でも、この船はかなり広そうだ。時間は30分って言ってたし、あまり時間がない。

だから、別れて行動しよう」

 

龍神のいう通りだと思った。

 

「わかった、じゃ、俺はそこの梯子の上の通路の向こうを調べる。

龍神は、普通にこのまま真っ直ぐ行ってくれ」

 

「わかった。何か怪しい物を見つけたら報告を頼む」

 

そう言って、二人は別れた。

 

 

 

目の前にあった梯子を登ると、その向こうに通路があった。

姜芽はその左右にある部屋を一つ一つ調べていったのだが、凛央が言っていた通り、どの部屋もほとんど使われていないらしく、何もなかった。

 

(うーん、怪しい物は特に見当たらないな…)

 

別に動いて、同じように船内を見て回っている筈の龍神からの連絡もない。

 

…と、いうことは、やはり凛央は何も企んでいない、何も裏でやっていないということだろうか?

 

(しかし、どうだろうな…。

何もないに越した事はないんだが、気になるな…

そう言えば、目的地は確か、幻想郷とか言ったな。

龍神と凛央は知ってる?のか知らないけど、俺は知らないぞ?ノワールでも人間界でも聞いた事ないが…

一体どこにある、どんな世界なんだろう?)

 

そんな事を思っていた時。

 

グラッ!

 

再び船全体が大きく揺れた。

 

「またか!今度はなんだよ!?」

 

すると放送が聞こえてきた。

「姜芽、龍神!聞こえるな?異常事態だ!機関室で何か起きたようだ、見に行ってほしい!

機関室は船の船尾にある!」

 

声の主は凛央のようだ。

 

「機関室…って、入るなって言ってた所だよな?でもまあ、何かあったってんなら…」

 

そう呟き、機関室があるという船尾の方へ向かう。

 

走っている途中、龍神に会った。

 

「姜芽!放送、聞いたか!?」

 

「ああ。機関室で何かあったから、見てこいって言ってたよな?」

 

「だな。すぐに向かおう。

にしても、一体何があったんだろうな…?」

 

「行って見ればわかることだ。とにかく急ぐぞ!」

 

そんなやり取りを交わしながら、二人は機関室へ急ぐ。

 

 

 

機関室に到着…

 

「ここだな、入ってみよう」

 

そして入ると、この船のエンジンらしき大きな何かの装置があった。

 

「これがエンジンか…?一体どうしたんだ?」

そう呟いていた、その時。

 

「ふたりとも、機関室についたようだな!調べてみたら、エンジン自体には問題は起きていないようだ。

しかし、どうやら壁に穴が空いたらしい!

その部屋には壁を塞ぐ為の鋼板がいくつかある筈だから、それを使って塞いでほしい!」

 

放送でそう言われたので探してみると、入って右側の壁にそれらしきものが立て掛けられていた。

 

「あれだな。で、その壁はどこだ?」

 

しかしこの壁も、すぐに見つかった。

入り口からだとエンジンに隠れて見えなかったが、奥の壁に大きな穴が開いていた。

 

何かが外側からぶつかったような形の穴だが、一体何がぶつかったのだろうか?

龍神はそう思ったが、今はそんな呑気な事を考えている場合ではない。急いでこの穴を塞がなければ。

 

「しかし、これでどうやって塞げばいいんだ?」

 

するとこちらの言葉が聞こえていたかのように、凛央の放送が聞こえてきた。

 

「その鋼板を溶かして、穴を塞いでほしい!

お前たちならできるだろう、頼む!」

 

その口調からして、いつになく焦っているのがなんとなくわかった。

 

「わ、わかった。龍神、そっち持ってくれ」

 

「ああ」

 

鋼板の左を龍神、右を姜芽が持つ。そして穴に立て掛ける。

 

それを熱して溶かし、穴を塞ぐ。

 

穴は大きかったが鋼板も割と大きく、そして溶けたことで広がったのでなんとか塞ぐ事ができた。

 

「よし…凛央!塞いだぞ!」

 

そう叫ぶと、

 

「感謝する!

さあ、もうすぐだ、操縦室へ戻ってきてくれ!」

 

放送でそう言われた。

タイミングが良い、やはりこちらの会話が聞こえていたのだろうか?それとも、あっちには船内のどこで何がおきているのかがわかる仕組みでもあるのだろうか?

 

とにかく何にせよ、もうすぐ着くらしい。

取り敢えず言われた通り、操縦室へ戻ることにした。

 

 

戻っている途中、またしても船全体が大きく揺れた。

 

しかし、今度は先ほどまでとは違うようだ。

何故なら、喧しいほどの音量で、あちこちにある赤いサイレンが鳴り響いたからだ。

 

「今度は生半可な事じゃない、本当に重大な事があったのかもしれん!急いで戻ろう!」

全速力で操縦室まで走った。

 

しかしその途中、突然…

 

 

船自体が大爆発した。

 

「うわっ!何だ!?」

 

隙間の中に飛び散る、無数の船の残骸。

 

その中には、2人の男の姿もあった。

 

「なんで…爆発…?」

 

「知るかよ…」

 

ふと、姜芽は周りの空間が変わっていることに気付いた。

 

空間の中に人の目のようなものが規則正しく、無数に並んでおり、それらが一斉にこちらを見つめてくる。

 

少なくとも姜芽の知っている空間ではないが、ここはなんという空間なんだろうか。いずれにしても、気味が悪い場所だ。

 

そうしているうちに、ふわふわと漂い、どこへともなく流されていった。

 

 

 

 

凛央は船の爆発地点から一歩も動いておらず、なにやら不敵な笑みを浮かべていた…

 

「これで役者は揃った。それではまた後程…」

 

 

 

 

 

 

やがて二人は目を覚ました。

 

そこでは何もせずとも体が浮いていた。

まるで無重力空間の中にいるような感触だったが、呼吸は出来るので空気はあるのだろう。

 

しかしその不思議な感覚も、(少なくとも姜芽は)周りの光景を見ると吹き飛んだ。

この空間はこういう模様…なのだろうか。

しかし、それは模様というにはあまりにも不気味だった。

無数の目玉が浮いていて、それらが一斉にこちらを睨んでくるのだから。

 

(気味悪いな、早く出よう…)

姜芽はなんとか動こうともがいた。

 

暫くもがいているうちに、泳ぐように動くと上手く進めると気付いた。

ここで龍神も目覚めたらしく…

「大丈夫か。…まあ大丈夫だろうな。しかし、いきなり爆発するとは…」

そして話題が現実的な方向に向いた。

 

「で、ここからどうやって出るんだ?」

 

「知らん。でも、とりあえず近くの世界に一旦避難して、そこで落ち着けた方がよさそうだ」

 

「…それもそうだな。全く、凛央の奴…」

 

二人は取り敢えず、近くの世界に移動することにした。

 

「っていっても、どのくらいの距離にどんな世界があるのか、見当もつかないな…。

それに、こんな気味の悪い空間があるなんて、見たことも聞いたこともなかった。一体どこなんだ、ここは?」

 

姜芽がそう呟くと、

「まあ、とりあえずでたらめにさまよってみて、適当な世界に入れそうな所を見つけて、そこからそこに入る、これでいこう。というか、他に方法が無さそうだ」

龍神がそう言った。

 

「…だな。そうしよう」

 

姜芽にも、他の方法らしい方法がわからなかった。

こうなってしまった以上は仕方ない。どんな世界につくかはわからないが、とりあえず最寄りの世界に行きたい。

そして、そこでとりあえず一息つきたい。そう思った。

 

 

 

 

それから2分。

早速、一つの裂け目を見つけた。

 

その裂け目からは、縦に走る一筋の光が差し込んでくる。

そこまで大きくはないが、1人なら通り抜けられそうだ。

 

「あそこにしよう」

姜芽はその裂け目に近付き、覗き込んでみた。

 

裂け目の向こう側は、やはりどこかの世界に通じているようだった。

見渡してみると、山や街、川、それに屋敷のような建物も見えた。

どうやら上空に空いている裂け目のようだ。

建物は全体としては密集しておらず、自然が豊かな世界のようだ。

 

「…そんな物騒なとこではなさそうだし、いいかな」

 

そんな事を呟いていると、

「おい、どんなとこなんだよ?見せろ」

後ろから押された。

 

「ちょ、やめ」

 

そう揉めていると、裂け目が突然一気に裂けた。

当然バランスを崩し、裂け目の向こうへ落ちてしまった。

 

「あ!」

 

龍神が手を伸ばしたが、間に合わなかった。

 

「ああ…。

すぐに追いかける…前に周りを見て…」

 

 

 

 

 

 

裂け目は思ったより高い場所に開いていたらしく、地上まではかなりの高さがあった。

 

頭から落ちながら、下に…落下地点には何かあったということだけわかった。そして、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

甲高い悲鳴が響き渡る。

 

 

 




『冥月龍神』
今回のもう一人の主人公。姜芽とは幼い頃からの友人。
元は人間だったが、姜芽と比べると心が歪んでおり、ノワールに来てからは、心を持たず、血と戦いを求めて彷徨うとされる「殺人鬼」という異人になった。
電気を操る[電操]の異能を持ち、武器には刀と弓、ブーメラン、短剣を用いる。

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