東方訪問記   作:白い花吹雪。

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かつて何者かに襲われ、命を奪われた人間。
幼い娘を想うあまり、ある人物(冥界の主か、あるいは閻魔の類いとも言われている)と契約を交わして仮の肉体を持つ存在となったが、その肉体にはすでに終わりが近づいている。


4-1 冥界

「で、どうするの?」

 

「とにかく探し歩くしかないでしょうね。屋敷でもあれば別だけど…基本、ここは目印とか家とかない世界だからね」

 

「そう…」

俄に疑問に感じた。

家がないのなら、何故屋敷があると思うのだろうか?

 

 

 

 

あれから数十分。姜芽たちの気配は全くない。

いや、いるとは限らないが。

それにしても、ここはなんとも不思議な場所だ。

空は真っ暗なのに、視界は明るい。

 

「ねえ、これ…帰れるの?」

 

「さあてねえ。誰か捕まえない限り望みは薄いわねえ」

 

「…はあ!?どういうこと!?」

 

「そのまんまよ。てか、凛さん霊騎士なんだし、いつでも現世に帰れるんじゃない?」

 

「それはノワールの話!こんな勝手わかんない世界で、現霊往来が出来ると思う!?」

現霊往来とは霊騎士の特殊能力の1つで、任意で現世と死者の世を行き来できるというもの。

基本的にいつでも使える能力で、ワープする先の場所も任意で選ぶことができる。

「…悪かったわね。ま、まず早いとこ誰か見つけましょ」

 

「…」

全く、あおいは何を考えているのだろうか。

そもそも、こんなだだっ広い世界で住人に会えるのか?

そう思った矢先、凛の目にあるものが止まった。

 

「あら?あれって…」

 

虚空をふわふわと漂う、白い人魂。

亡霊、だろうか?

 

「あれは…霊魂、ね、凛さんなら話聞けるんじゃない?」

霊騎士は、普通の人間や異人と言語による意思疎通が出来ない亡霊や魂と話せる能力がある。

「そうね。試してみましょう」

 

凛は人魂に歩み寄り、左手をかざした。

人魂の動きが止まり、凛の手と白く淡い光で繋がった。

これは魂と意思疎通が出来ている事を意味している。

 

「…」

凛は口では喋らないが、時折頷いたり目を見開いたりしながら霊魂と会話した。

そして…

 

「わかった。ありがとうね」

光が消えると同時に、あおいは聞いた。

「なんて言ってたの?」

 

「わかった事は3つ。まず、彼は姜芽達を見てないけど、ここの主?なら知ってるかも知れないんだって」

 

「あれ男だったの?てか、ここの主って…」

 

「それと、その主ってのは白玉楼?っていう屋敷に住んでるらしいんだけど、それはあっちにあるそうよ」

凛は、東の方角を指さした。

 

「あー、はいはい…なるほどね。で、わかった事の3つ目は?」

 

「3つ目はね…これが一番大事な事のような気がするんだけど…彼、ヨーキ?だかって人の使いで、私達を待ってたらしいのよ」

それを聞いて、あおいは目を見開いた。

 

「え、本当?」

 

「ええ、確かにそう言ってた。その人の所まで連れていってくれるらしいから、彼について行きましょう」

 

「そう…ね。しっかし、あの爺さんがねえ…うちらに何の用なんだか…」

 

そんな事を呟きながらも、あおいは凛に、凛は人魂についていく。

 

 

 

 

連れてこられたのは古い民家だった。

「ここらしいわ」

 

あおいは何も言わず、凛についていった。

 

民家の中はワンルームだった。

そしてその中央に、和服を来た老人が座っていた。

 

「おお、来て下さいましたな…」

 

「あなたが、私達を呼んだ人?」

 

「いかにも。わしは…」

 

「妖忌の爺さん、よね」

老人が名乗る前に、あおいがその名を呼んだ。

 

「これはたまげた。何故わしの名を知っておる?」

 

「この世界のことは、外では結構有名でね。大体の調べはついてるのよ」

 

「そうか…ならば、わしの孫の事は知っておるか?」

 

「勿論。妖夢、よね?」

 

「うむ。あやつの事で、お前さん方に頼みがありましてな」

 

「何かしら?」

 

「お前さん方、これからあやつのいる屋敷へ向かうのじゃろう?」

 

「そのつもりでいたんだけど…何?」

あおいが言うと、老人は辛そうに言った。

「もし、あやつがあやつでなくなっていたら…どうか、助けてやって欲しくての」

 

「…どういうこと?」

 

「原因はわからぬのだが、今この世界では生身の者が突如として恐ろしい怪物に変貌する異変が起きておりましてな。信じたくはないが、あやつもいずれ変わるかもしれぬ。そうなれば、多くの者に迷惑をかけてしまう。その前にあやつを楽にしてやりたいが、わしにはとても出来ぬ。だから…」

 

凛には、この世界の事はよくわからない。だが、この老人が言っている事はわかった。

自分には孫がいるが、その孫も感染するかも知れない。もしそうなったら、お前達が楽にしてやってくれ―

要は、そういうことなのだろう。

「…わかった。もしあなたのお孫さんが変わってしまったら、その時は私達が―」

 

「たのむぞ…どうか、この老いぼれの最期の願いを聞き届けて下され…」

 

 

 

民家を出て、人魂から聞いた通りに東に向かった。

 

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