東方訪問記   作:白い花吹雪。

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5-4 死せる皇女の為のレクイエム

扉を開いた先の階段を上がると、2人の妖精…もとい妖精メイドが襲いかかってきた。

どちらも剣を手に持っているが、その技と手つきはそこまで手慣れを感じさせるようなものでもなく、耐久も高くはなかった。

しかし、これらがかつての人間であり、化け物の牙にかかって命を落とした者たちのなれの果てであると思うと凛は何とも言えない気持ちになった。

 

 

「ねえ、あおいさん。なんか、この階に来てから変な魔力を感じない…?」

 

「あら、奇遇ね。あたしもそんな感じしてた」

 

「あ、やっぱり?これ…何なのかしら。今までとはまた違った化け物が出てくるってことかしら」

 

「さあね…まあでも、こっから先は吸血鬼由来のやつしか出てこないと思うけど」

 

「吸血鬼…か」

その名の通り人の血を吸って生きる不死身の怪物、ということであれば、ノワールでも戦ったことがある。

ノワールの吸血鬼は、異人の一種である「正の吸血鬼」と高位のアンデッドの一種である「負の吸血鬼」に分けられる。そして後者はその強さに応じていくつかの階級に分けられており、上位の階級のものともなると下手な高位の異人よりも強い。

最も、母数が少ないのでそうそうお目にかかることはできない…が、凛とて長きを生きてきた上位の異人だ。高位の負の吸血鬼とは、幾度か剣を交えたことがある。

 

魂を正しく導くのが使命である種族の凛にとって、吸血鬼のようなものは「道を外れた魂」であり、例外なく粛清の対象だ。故に、その存在を認知した時には脇目も振らずにそれを追いかけ、必ず裁いてきた。

ノワールでは、吸血鬼は死神と同じく凛の種族としての敵だった。

だが、こちらではどうなのだろう…。

 

 

 

 

しばらく進むと、ドアが開放された部屋が出てきた。

恐る恐る中を覗くと、誰かがいた。

それは紫の髪に、ピンク色のワンピースをまとった少女…といった姿をしていたが、こうもりのような翼を持っていたことから人間ではない。

なんとなく察した…あれが、この世界の吸血鬼なのだと。

 

それは俯いていた…と思いきや、突如頭を抱えて唸りだした。

さらに、体を仰け反らせたりくねらせたりしながら低い声で唸り続ける。

その様子は、凛には苦しんでいるようにも見えた。

 

「どったの?なんか苦しそうだけど…」

あおいが部屋に入って声をかけた途端、女は飛びかかってきた。

その目は血走っており、牙はやたら鋭く光っており、何やら必死になっているように見える。

 

「あら、ずいぶんご機嫌斜めみたいね。…来るタイミング間違えたかしら」

 

「…!」

女は腕を押し込み、あおいに噛みつこうとする。

しかし、あおいも馬鹿力だ。何なく押し返す。

 

「まあまあ、待ってよ。うちらはあんたとお話したいの。あの2人がどこにいるか…知らない?」

 

「…」

あおいの問いには答えず、女はただひたすらにあおいの首を噛もうとする。

 

「まるで獣ね。ちょっと前までは仮にもお利口なお嬢様だったのに…いつの間にこんなになったの?」

 

「…な…に…」

何やらかすかに言葉を発した。

よく聞き取ると、このように言っていた。

「なにを…知って…い…る…!」

 

「何って…まあ、あんたたちに関することはおおむね、かな。ただ、ちょーっと予習になかったことが頻発してるけどね」

 

「よ…しゅう…?」

 

「そ。例えば、あんたがこんな理性のない怪物になってたこととか。いっつも引きこもってるはずの()()()()()がいないこととか、あと…」

あおいは一度目を閉じ、

「妹様の気配がまるでないこととかね」

と、どこか冷笑するように言った。

 

それで、女は何か感じたようだった。

 

「い…妹…?」

 

「そ…ま、あたしはあくまで外から途切れ途切れに見てただけなんだけどね?あんたには、同じ血を分けた妹がいたはず。なんでか、ここに来てからまったく気配も何もないけどね」

 

「…」

 

「えーっと…確か、生まれつきえげつないパワーだか能力だかを持ってて、それが怖かったから…妹に超えられるのが、姉として耐えられなかったから、地下に幽閉した…んだっけ?さしずめ嫉妬と恐れ、ってやつを抱いたわけよね。あんたに限った話じゃないけどさ、化け物のくせに、変に人間っぽいとこあるもんよね」

 

あおいは、さらに文言を連ねる。

「しかしまあ、こうして実際に来てみるとやっぱ違うわ…()()()従者のお出迎えもだし、領主様への謁見もそうだし。でもさ、こーんな館にこれっぽっちしかいないんじゃあちょっと寂しくない?あんた、今までよくこんな寂しいとこで生きてこれたわね。…あ、ごめん。他にもお仲間がいたんだった。えーと、確か…さっきも言った妹様と、あと…()()()()()()()()()()なんかいたわよね?」

 

その時、女は目を大きく見開いた。

「い…もう…と…」

 

「そう、妹。あんたにはいたはずよ…たった1人の家族であり、同じ日を生き延びた大切な者が。…あいつのことを忘れて、しかも自身もこのザマじゃ、パパたちにも顔向けできないわね。500年も何してたんだ、何の『為の』時間だったんだ…ってキレられるわよ?『亡き』国の、元『王女』様!」

 

女は、もはやあおいの言葉など聞いていなかった。

 

「いも…いもう…と…」

震えながら言葉を発する。

そして、

「あ…あぁぁぁあ…!!!」

頭を押さえて唸った。

 

その口からは穢れた血が飛び散り、自身もまた床に伏した。

 

しかし、それでは終わらなかった。

彼女の『運命』を狂わせ、『セプテット』をかき乱し、すべてを奪ったもの。

それが、ついにその命と肉体までもを奪ったのだ。

 

 

 




凛「ね、ねえ…これ、大丈夫?かなり毒の強い内容だったけど…」

あおい「さーね。でもこのくらいでキツいとか言うほど、ここまで見てくれる人はやわじゃないでしょ」

凛「そ、そうかしら…」

あおい「そもそも今回と前回のタイトルだって、見る人が見れば悪意たっぷりだしね。…あ、ちょい真面目なこと言わせてもらうと、あたし達の話の中に出てくる表現、描写はすべて『創作』の中でのものであって、『現実』に即したものではないですからね。どんなブラックなネタ、毒発言があっても、それだけは忘れないでくださいね」

凛「それで通じるかしら…」
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