東方訪問記   作:白い花吹雪。

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糸を操り、人形や生物を意のままに操る魔法使い。
外の世界では七色の…などと謳われるが、その由来は打ち出す虹色の糸を相手に取り付けて意識と体の自由を奪い、半永久的な隷属をさせる能力に由来する。
同性愛者だが、この世界ではよくある嗜好。



2-2 懐疑

里なる場所へ向かうため、二人は東へ道なりに進んでいた。

しかし、その途中で思わぬ妨害に出くわすことになる。

 

 

「待ちなさい!」

突然、後ろから高い声に呼び止められた。

 

振り向くと、青いスカートに金髪の女が立っていた。

 

「…誰だ?」

 

「私の台詞よ!あなた達、どこから来たの!」

姜芽には何だかよくわからないが、警戒されている事はわかった。

 

「あー、俺達は外の世界、ってとこからきて、それで…」

すると女は、途端に険しい目で二人を睨んできた。

 

「やっぱり外来人なのね…。何のために、どうやってこの世界に来たのかしら」

 

「俺達は、知り合いにこの世界に連れてこられたんだ。

けど、船が爆発して、それで…」

姜芽としては精一杯説明したつもりだった。

しかし、納得してはもらえなかったようだ。

 

「何をわけわかんないこと言ってるの!

とにかく、あんた達はすこぶる怪しい。悪いけど、大人しくしてもらうわよ!」

女は指先から白く細い糸を出し、それを投げかけてきた。

 

「おっと!」

龍神は横に動いて躱しながら、

「酷い言い草だな。俺達は普通の外来人だぜ?」

と言った。

 

 

「ふーん、普通、ねえ…」

女は一度目を閉じ、そしてぱちっと開けた。

 

「私の糸を容易く避けれる奴が、普通だなんて言っても説得力ないんだけどね」

 

「そうか?」

 

「ええ。それに」

女は、龍神を突き刺すような目で見た。

 

「あんた、私の事を知ってるでしょ?」

 

「えっ…?」

今の今まで姜芽は気づかなかったが、女は小さな人形を召喚していたのだが、龍神はそれを紐状にした電気で縛って動きを止めていた。

 

「おっ、気づいたか。ああそうだ、お前の事は知ってるよ」

 

「いつ、どうやって知ったのかしら」

 

「それをお前が知る必要はない。俺はお前を知っている、ただそれだけの事だからな」

 

すると、女は目を鋭く光らせた。

「ああそう…。なら、吐かせてあげる」

女の手に虹色の糸が現れた。

それは龍神の体を包むように伸び、彼の体の各部目掛けて数本が伸びる。

 

危険を察知した姜芽は、

「斧技 [大地裂斬]」

 

斧で糸を真っ直ぐに切り裂き、龍神を解放した。

 

「っ…!」

 

「龍神に手を出すな。なんなら俺が相手になってやる」

 

「へえ…。いいわ、なら、最初にあんたを加工してあげる」

女は両手を腰の高さで広げ、技を詠唱した。

 

「糸符 [レインボーストリングス]」

複数の光り輝く虹が、姜芽に向かって伸びてきた。

姜芽はそれを、

「炎法 [炎盾マーズ]」

盾状の゙炎で防いだ。

 

「へえ、糸の能力者か…」

姜芽は襲い来る糸を焼き払い、そう呟いた。

「私のような能力持ちと、戦った事があるの?」

 

「ああ。まあお前とは何もかも違うけどな。種族も戦い方も…な」

 

一方で、龍神は何やら驚いていた。

「初めて見る技だな…お前、こんなの使えたっけ?」

 

「あら、知らないの?」

 

「知らないというか…まあ、そうだな。知らないな」

 

「何でも知ってる訳じゃないのね」

 

「ああ。俺はあくまでもお前らのお話を聞いた事があるだけなんでね」

 

「いつ、どこで聞いたのかしら」

 

「言うと思うか?」

 

「まあ、言わないでしょうね」

 

「わかってるじゃんか」

 

「そうね…だからこそ、あんた達を自由にさせる訳にはいかない。糸符 [スパイダーホール]」

 

大きな蜘蛛の巣のようなものを打ち出してきた。

姜芽はこれを焼き払い、龍神は受け止めた。

 

「な…受け止めた、ですって…!?」

女が驚きの声をあげた。

 

「蜘蛛の巣て…。まあいい」

龍神は蜘蛛の巣を丸め、電気を流す。

そして、女に向かって投げた。

 

「[電撃蜘蛛糸]…なんてな」

女は見事に痺れ、倒れて動かなくなった。

 

「…!!」

 

「まだ意識があったか」

 

女は殺意に満ちた目を向けてくる。

そこで、姜芽が交渉を持ちかけた。

 

「あのな…もうやめよう。俺達は、お前にもこの世界にも敵意はないんだ。今、色々とやばいんだろ?

無駄な争いはしたくない。だから…な?」

 

女は姜芽を睨みつけていたが、やがて肩を落とした。

 

「…わかった。ただ話は聞かせてもらうからね」

 

「ああいいとも。別に、やましい事もないしな」

 

 

 

そして、女は一通り2人を問い詰めた挙げ句、ふてくされながら去っていった。

―去り際に、「変なことしたら許さないからね!」と釘を刺していったが。

 

「はあ、終わったな。

あいつ…アリス、って言ったっけ?ま、状況が状況みたいだし、仕方ないかもしれないが…」

 

「ほんっと、困った人形使いさんだな。

大人しく家で百合ってていただきたいもんだ」

前半はともかく、後半の台詞はどういう意味だろうか。

 

龍神は、昔から皮肉や悪口をよく言う。

しかし、その知識と技量、魔力は本物だ。

 

とは言え、癖の強い人物なのは間違いない。

姜芽は長い付き合い故にそこの所を理解しているが、彼に姜芽以外の友人は少ない。

故に、殺人鬼などやっているのだろう。

 

「…てか、さっきから会うの女ばっかだな」

これまでに見た男の住人は、一人だけだ。

 

「そりゃな…この世界で男は絶滅危惧種だからな」

 

「え?」

 

「この世界の連中はほぼ全部女だ。そして、その大半は人間に似て非なる存在。妖怪、吸血鬼、妖精、神、悪魔、魔界人、魔法使い、仙人、邪仙、鬼、亡霊、幽霊、月人、蓬莱人…こんなもんか。

ちなさっきのアリスは確か魔法使いだ。それでこいつらは…ようは異人みたいなもんだと思えばいい。

ま、俺は奴らを一括して化け物って呼ぶけどな」

 

「そりゃまた、なんで…?」

 

「別に大した理由はない。強いて言えば…」

 

その時、甲高い悲鳴が聞こえてきた。

悲鳴の方を見ると、森にいたような化け物に襲われている少女の姿があった。

 

「!行くぞ!」

姜芽はすぐに走り出し、化け物に駆け寄る。

 

 

 

「斧技 [マキシムストライク]」

 

姜芽の技で、化け物は即死した。

 

「大丈夫か?」

龍神が少女に寄り添う。

 

「う、うん…ありがとう」

 

「君はなんでこんな所にいるんだ?」

 

「西の村にいるおばあちゃんに会いに行ってきて、今帰ってきたところなの。

だけど、お父さん達とはぐれちゃって…」

 

「こんな状況で出かけるのか?…まあいい。先に里に行ったんじゃないか?」

 

「そうかもしれない。あと、お兄さん達、変な格好してるね。

もしかして、外の世界から来たの?」

 

「ああ」

 

「それじゃ、こっちに来て」

 

二人は、駆け出した少女の後を追う。

 

 

うっすらと霧が出てきた。

そんな中襲ってきた化け物を、龍神は一太刀に斬り捨てた。

「あの化け物、ここにもいるんだな」

 

すると、少女が反応した。

「あいつらの事、知ってるの?」

 

「いや、なんにも。君は知ってるのか?」

 

「わたしも詳しい事はわかんない。でも、あいつらはあちこちにいる。

わたしの友達も、あいつらに襲われて…」

 

「…そうか、それは辛かったな」

 

「…。とにかく、もうすぐで里につくよ」

 

進む事に霧が濃くなり、少女の姿が見えにくくなっていく。

 

視界に気をつけながら、二人は進む。

 

 




『里』
正式名称は「人間の里」。
この世界で最大の人間の集落であり、唯一邪悪な化け物が入る事を許されない場所。
人間に対し有効的な種族の者も複数居住している。
それ故、最も人口の多い場所でもある。
この他にも人間の集落は各地に存在するが、それらはいずれも化け物の脅威に日々脅かされる危険な場所となっているため、里に比べると人口はかなり少ない。



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