「これからどうする?」
「そうねえ…とりあえず、外に出てみましょうか。あそこから屋上に行けるっぽいわ」
奥にある扉が開いており、その先の階段が見えていた。
屋上に行くと、何もなかった。
しかし、大事なのはそこではない。
あおいは端まで行き、下を見下ろした。
「うん、これくらいなら飛べる。凛さん、行きましょ」
下までは10メートル以上あるが、異人は体が人間よりずっと頑丈かつ強靭なので、このくらいの高さなら飛び降りても問題ないのだ。
「いえ、その必要はなさそうよ。…あれを見て」
凛の指さした方を見て、あおいは絶句した。
空の一部が大きく崩れたように割れており、その奥に何か大きな、長いものが浮いている。
「あれ…何…?」
「わからない。けど、少なくともこの世界の者が作ったものじゃない気がする」
「…確かにそうね。行かないわけにいかないわ」
というわけで、凛たちは飛び立った。
近づくにつれ、壊れた空の向こうには狭間のような異空間が広がっていること、その中に浮かんでいるのは塔のようなものであることがわかった。
そしてその入り口を探すと、ほぼ最下部にそれっぽい大きな扉があった…のだが、押しても引いても開きそうにない。
破壊するにも時間がかかりそうなので、素直に別の入り口を探す。
しかし、それはすぐに見つかった。
扉のしばらく右上に窓があり、そこが開いていたのだ。
しかも、ちょうど人1人が通れそうな大きさがあった。
そこを通り抜けて塔の内部に入ると、まっすぐな通路が現れた。
しばらくそこを進むと、さっそく敵が現れた。
複数体現れた化け物の中に元が人間と思しきものはおらず、ほとんどが妖怪由来と思われるものだった。
あおい曰く、この世界の妖怪は人間の数十倍の数はいるとのことで、それだけ犠牲になったものも多いのだろうなと凛は思った。
やがて、形状からしてエレベーターのような扉が現れた…のだが、動かない。
そのすぐ横に、何やら記号のパスコードを打ち込むところがあることにあおいは気づいた。
「あ、パスコードだわ。…なるほど、これでロックが解除されるようになってるのね。しかも3つ。ってことは、まずはこれをやらなきゃね」
「でも、どこにあるのかしら。またガイド魔法使う?」
「あ、使えるの?さっきのみたいに、元手はないわよ?」
「いや、あれは…まあ、できないこともないのよ」
凛は、その名の通りガイドの魔法を使った。
これは先ほどのものとは違い、捜索物にかけられている魔法には関係なく、必要なものを探し出してくれる。
白い光が伸び、矢印を作り出したのは、エレベーターの左側にある細い通路。
この先に、3つのパスコードがあるのだ。
その通路は入り口は細かったが、いざ内部に入ってみるとそうでもない。
とは言え2人がかろうじて通れる程度の広さであり、しかも通路の左側の壁が動いたと思ったら、そこからわらわらと敵が現れる。それも、皆総じて盾を持っている。
盾持ちは面倒だ…と思っていたら、あおいがムチを真っ直ぐに伸ばして敵をまとめて貫いた。
忘れがちだが、あおいのムチは先端にトゲ付きの鉄球が仕込まれた「モーニングスター」といういかつい武器だ。
そんなものをあおいなアホみたいな力で振るう…と考えると、この結果は納得だった。
ちなみに、この通路は左側にスライドドアで開く小部屋が複数あり、その中には2段式ベッドとロッカーが並んでいた。
しかしそれはかなり乱雑に扱われていたのか、ロッカーは歪んでいて開かないものや倒れているものが多く、開くもののほうが少ない。ベッドも、布団やシーツがめちゃくちゃになっているし、床は酷く汚れている。
「まさか、ここで生活してたの?」
「暮らしてた…って言うよりは、押し込められてたんじゃない」
開いた瞬間に一斉に出てきて、凛たちを襲ってきたと考えるとそれは十分にあり得る。
「この部屋には何もなさそうだから、隣の部屋に行きましょ」
そうして部屋を漁っていったのだが、相変わらずめちゃくちゃになった狭い部屋を見せられるだけで何の収穫もなかった。
しかし、本当に何も得られなかったわけではない。
「あれ?あおいさん、見つけた!」
3つ目の部屋を1人で見回していたあおいだが、凛の声を聞いて前に戻る。
そして床に落ちていたものを見、凛は端末で確かにそれであることを確認した。
「これでまず1つ目ね。あと2つ…簡単に見つかってくれるといいんだけど」