このまま戻っても仕方ないので、さらに奥へと進む。
すると、ある所から急に内装がガラリと変わった。
「あら、なんか急に風情な内装になったわね…」
「まるで高級旅館ね。いや、東方っぽいって言えなくもないけど…いきなりこんなガラッと変わられると、違和感すごいわ」
障子張りの扉や襖、豪華な絨毯の敷かれた床とさながら「和風」をコンセプトにした旅客施設のような内装の空間が続く。
凛もこういうのは割と好きだが、あおいの言う通り、こうもいきなり大きく変わられると違和感を感じざるを得ない。
相変わらず化け物が出てくるが、途中から妖怪ではなく人間の変異したものが出てくるようになった。
それらは斧や棍棒を持っており、妖怪由来のものと同じようにまとまった数で現れるが、動きが大振りなため攻撃を避けて倒すのは難しくない。
「こんなに人間いたのね…」
「意外といるもんねえ。でも、化け物になったんじゃ意味ないわね」
あおいは言いながら、化け物の顔をストレートでぶち抜く。
それはあおい自身の力もあるが、化け物自身が骨が多少脆くなっているのもあった。
「それで、2つ目のパスコードはどこかしら」
「どっかにはあるでしょ。とにかく探しましょ」
「いや、そりゃあどこかにはあるでしょうけど…」
言っている間に、ガラスの扉が現れた。
そしてそこを開いた先には、大きなプールがあった。
和風の空間が続いた後にこのようなものが出てくると、やはり違和感がある。
何か得体の知れない生物を象ったジャグジーがあり、そこからプールの中に向かって水が噴き出している。
それは温水でもなんでもない、ただの水だ。
「なんでプール…?」
「さあね。…あれ?」
あおいは、プールの真ん中あたりの底に何か沈んでいるのに気づいた。
それは、何かの模様が描かれた透明な板に見えた。
「…2つ目のパスコード、あったかも」
凛も、やがてそれの存在に気づいた。
「確かにそれっぽいけど…水没してて大丈夫なのかしら?」
「読み取れれば問題ないんじゃない?とりあえず、取りに行きましょう」
プールの中はそこそこ深く、それでいて水がしっかり入っていた。
足が長く、身長が2メートル近い凛でも、腰の上あたりまで水に浸かる。
しかも、プールの中に入って進もうとした途端に化け物の群れが現れ、プールサイドにずらりと並んだ。
「…!最低ね!」
あおいは鞭を振り上げ、フレイルのように大きく振り回す。
「[パラダイス]!」
それでプールサイドに立つ敵の大半を吹き飛ばし、中央へ向かっていく。
何体かの生き残りがあおいを狙って弓を射ってくるが、凛が魔弾を放って対処する。
そうして、あおいは見事たどり着いた。
光の屈折によりはっきりとは見えないが、それでもやはりパスコードのように見える。
息を止めて腰を曲げ、水中から拾い上げたそれに端末をかざすと、しっかり読み取ってくれた。
「オッケー!2つ目回収!」
それと同時に、凛のプールサイドの敵の残党の掃除も終わった。
その後一応あちこちを調べてみたが、もうこのプールエリアには何もなさそうだ。
そして、もうこれ以上化け物は現れなかった。
プールサイドの奥に扉があり、その奥にはまた和風内装の部屋が続く。
その部屋を出るとすぐに化け物たちの襲撃を受けた。
先ほどプールにいたものと同様に弓を射ってくるが、技を出してくるわけでもないので避けるのは造作もない。
あとはほぼ一直線の道になっており、迷うことはなかった。
…しかし。
「あれ?」
途中から、2人は迷うことになった。
というのも、2人はプール横の部屋を抜けた先の通路を真っ直ぐ行き、怪しいところを片っ端から探したのだが、3つ目のパスコードが見つからない。
それだけでなく、そのまま進んで行った結果、1つ目のパスコードを見つけた部屋の前の通路に出たのだ。
「なんかおかしいわね。ここ、さっきも来たわ?」
「ええ…しかも、どこにもパスコードがない。もしかして、隠し通路とかあるのかしら」
凛たちが今いるのは、プールを抜けた先の部屋。
この部屋だけではなく、あちこちに木製のタンスや本棚、机がある他、高級感のあるソファもある。
またこの部屋に3つある机のうち、真ん中の机の上にはタバコの吸い殻入れも置かれている…が、辺りのタンス共々、使われた様子はない。
「使わないものも置くなんてね」
「ほんとね。…?」
凛は、それとなくその吸い殻入れに触れた。
すると重い感触がし、持ち上げるとゴトリという音がした。
「えっ…?」
そしてそのまま机が動き、下に隠されたはしごが露わになった。
「おっ!お手柄ね凛さん。最後のパスコードは、この先にあるに違いないわ!」
あおいは張りきって、はしごを降りてゆく。