東方訪問記   作:白い花吹雪。

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古くからこの世界を見守ってきた豊穣の女神の片割れ。
戦う力はないが、長らく多くの人間を助けてきた。
人間を愛し、妖怪を嫌っている。
妹ともども、その姿は秋にしか見せないという。


豊穣の女神の片割れ。
秋と豊作をもたらすという神も、悍ましい姿に成り果てた。
かつては豊かな自然の恵みをもたらす存在であったはずだが、もはや吸血鬼並みに恐ろしい存在と言える。


6-4 禁忌

3つのパスコードを入力し、エレベーターを起動した。

そして上の階へと登っていった。

 

その速度はなかなかのものだ。正確な値はわからないが、時速にすれば50キロくらいはありそうだった。

その速さ故か、次の階にはすぐについた。

 

 

扉が開く。

少し長めの通路の先に、不吉な気配を漂わせる赤い扉が構えている。

「なんか、嫌な予感がする…」

 

「まあ、この先になにがあるのかは知らないけど、良いことなんかまずないでしょうね」

そう言いながら、あおいは扉に手をかける。

今度は、すんなりと開いた。

 

 

その先に進むと、小さな部屋があった。

奥には扉があるが、それより前に部屋の中央付近にあった机と、その周りの研究器材が気になった。

 

それらはいずれも使われた形跡があったが、それはかなり昔のことのようで、液体がこびりついたり、カビが生えたりしていた。

そして、机の上には何かの書類が置かれていた。

 

 

「『ヒエムス』研究観察資料

 

 

私がこの世界に来て、早2ヶ月。

これまで新作のウイルスとこの世界の住民を用いたC.S.T.開発を進めてきたわけだが、此度私は人類の1つの禁忌を破った。

人にあらず、この世界のあらゆるものに干渉できるだけの力を持つ、偉大な種族…『神』を、変異体とすることに成功したのだ。

 

仮の名前として与えたコードネームは『ヒエムス』。

人間界の古語であるラテン語で『冬』を意味するこの名は、素体たる2人の神が自然の恵みと季節を司る存在であったことから来ている。

そう、今回の変異体は2人の住民がベースだ。

 

元よりこの世界の有名人物どもは、ウイルスを投与してから変異するまでの時間、即ち潜伏期間が長い傾向にあるが、こいつらはそんな中でも特にその期間が長かった。

全体では最弱レベルと言えど、やはり神というだけはあるのだろうか。

 

正直、どのような結果になるかはまったく予測できなかった。

かつて同様にウイルスを投与したやたら凶暴な吸血鬼などのように、理性も知性もない獣となる可能性もあった。

だが、今度はそうはいかなかった。

 

話を戻すと、『ヒエムス』はその行動と性質を観察する限り、それなりに有望なC.S.T.である。

複数の大蛇が絡み合った塊のようなその外見とは裏腹に素早く動くことができ、知能も高い。

頭脳である本体の頭部は、獲物を認識するとまず牙から酸性の体液を吹きかけて獲物を拘束する。

そして、本体に巻きつけている蛇の胴体を伸ばして囲い込み、その上で捕食する。

 

これ以外にも蛇の体を切り離して外敵を襲わせるなど、多様な攻撃方法を有していることを確認した。

一方で普段は蛇の体に覆われており、辛うじて人型の面影が残っている本体はやや脆弱であり、一部の属性の攻撃に弱いようだ。

防御より攻撃重視のC.S.T.と言える…が、それでも耐久力自体は申し分ないレベルであると言える。

 

その変異っぷりは他の化け物どもと比べても著しく、元の姿の面影はほとんどない。

こんなことを言うのは何だが、かつて豊穣だの秋だのにまつわる神であったとは思えないほどだ。

 

なお、この蛇の胴体は外見によらずかなり強靭だ。

本物の蛇同様に鱗に覆われているのだが、その硬度は鋼鉄にも迫るものであり、蛇のそれとはわけが違う。

先述の通り一部属性攻撃には弱いが、攻撃能力の高さもあってそれを補うには十分足りる。

かつて、ほとんどまともに戦う力のない、存在する価値のまるでない存在に過ぎなかった神は、berserk-αの力で強力なC.S.T.となったのである。

 

このC.S.T.の運用方法は未定だが、それでも有益な産物であることは間違いない。

ただし、今後も神をベースとした変異体を発生させるかどうかは、慎重に考える必要がある。

今回はたまたま、弱い神を使ったからこの程度で済んだのかもしれないからだ。   」

 

あおいはそれを読み終わると、眉をひそめた。

「2人の神、って…まさか。凛央のやつ、ずいぶん思い切ったことするじゃない」

同時に、あおいはテーブルの隅から鍵を見つけた。

おそらく、これで奥の扉が開くだろう。

 

 

扉を開いた先に、数体の化け物がいた。

槍や剣の攻撃を上手く躱し、それらを切り抜けた先で、2人は「神」に謁見した。

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