東方訪問記   作:白い花吹雪。

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6-5 変わり果てた神

そこにあったのは、少なくとも3匹のどす黒い蛇が絡み合ったように見える塊。

蛇はいずれも、頭をこちらに向けている。

 

2人を見つめる6つの目。

それらは、昏く生気のないものだった。

 

 

なによ、薄気味悪い。

そう思った直後だった。

 

 

蛇たちは不気味な音を立て、解散した。

そしてその中心、蛇たちに絡まれていたものの全容が見えた。

 

それは、全体が真っ黒で…

頭部にあたる部分に青色の丸いものがある、人型をした物体だった。

 

 

いや、恐らく生物…この蛇たちの本体、あるいは片割れなのだろうが、そう思えなかった。

何というか、生物であるという感じがしなかった。

 

しかし、そう思って動きを止めたのは凛だけ。

葵は、間髪入れずに鞭を振るった。

 

青色の部分を叩くと、鈍い音とともに液体が飛び散った。

それは青くドロッとしていて、血のようには見えなかった。

 

「気持ち悪い…」

 

凛が声に出すと、葵は鼻で笑った。

 

「何を今更」

 

 

と、その青色の部分のすぐ上が開いた。

牙が並んでおり、ここが口であるように思えた。

 

そしてそこから、濁った茶色の液体が飛び出してきた。

また酸性の液体かと思い避けたが、床を溶かすようなことはなかった。

 

凛は、床に飛び散った茶色の液体を警戒しながら、わずかに身を引いた。酸ではないとはいえ、何かしらの危険があるかもしれない。

 

葵は鞭を引きながら、目の前の異形を睨みつける。青い部分を打った手応えはあったが、決定打ではない。まだ動ける。

 

「凛、どうする?」

 

「どうするも何も、倒すしかないでしょ。でも、あれ、本当に生き物なの?」

 

凛は、一歩踏み出しながらも戸惑いを隠せなかった。あまりに「生物らしさ」が欠けている。血の代わりに青い液体を流し、動きもどこか人形じみている。

 

その間にも、異形は再び口を開き、茶色の液体を吐き出した。今度は勢いよく、広範囲に向けて——。

 

「っ…!」

 

葵は瞬時に跳び退き、凛もそれにならう。液体は床にべったりと広がり、じわりと染み込んでいった。

 

「…毒かもね」

 

葵が呟く。床を溶かさないが、吸収された様子が不気味だ。もしこの部屋が生き物の体内だったりしたら…。

 

「じゃあ、これ以上長引かせるのは危険ね」

 

凛は短剣を構え、葵は再び鞭を握る。

 

異形は微動だにせず、ただ青い目のような部分を光らせて2人を見つめていた。

 

「次の攻撃で決める!」

 

葵が低く叫ぶと、2人は一斉に駆け出した。

 

 

異形が反応したのは、そのわずか一瞬の間だった。

 

青い目のような部分が一際強く光ったかと思うと、全身の黒い体表が波打つように脈動し、そこから無数の触手のような細い蛇が飛び出した。

 

「来るわよ!」

 

凛が声を上げる。だが、葵は怯まない。

触手が鞭に絡みつく前に、鞭を素早くしならせて一閃。空を裂く音と共に、数本の蛇を叩き落とした。

 

その隙に、凛は滑り込むように異形の懐に踏み込んだ。躊躇いを振り払うように、手にした剣を突き出す。

 

突き刺さった。青い球体のすぐ脇、かろうじて柔らかそうに見える黒い部分へ。

 

ぐちゃっ、と濁った音。青黒い液体が凛の腕に飛び散り、ぬめりとした感触が肌を伝う。

 

「効いてる…!」

 

凛が確信したその時、異形の口が大きく開いた。今度は声のような音が漏れた。

悲鳴なのか、ただの振動なのか判別できない、機械と生物の中間のような、気味の悪い音。

 

「凛さん、下がって!」

 

葵が叫ぶと同時に、鞭を大きく振るう。異形の脚部に絡みつけ、そのまま力任せに引き倒した。

ずしん、と鈍い衝撃。その巨体が床に激突する。

 

「今よ!」

 

ふたりが声を揃える。

 

凛は最後の一撃として、青い球体へと剣を深々と突き刺す。葵は鞭を振り下ろし、頭部らしき部分に勢いよく叩きつけた。

 

異形がビクリと痙攣したあと、再び沈黙した。

 

しばらく、何の音もしない。

 

凛は息を切らせながら、剣を引き抜く。その刃には青黒い粘液がまとわりついていた。

 

「……終わった?」

 

凛が呟くと、葵は周囲を警戒しながら頷く。

 

「たぶんね。けど……油断は禁物。こんな奴が出てくるなんて、今までとはレベルが違うわ…いろんな意味で)」

 

「ええ。あんなのがまだいるなら……」

 

言いかけて、凛は視線を床に落とす。茶色い液体が完全に吸い込まれ、まるで最初から何もなかったように床は乾いていた。

 

「やっぱり……ここ、生きてるんじゃない?」

 

「やだ、気持ち悪いこと言わないでよ」

 

沈黙が落ちる。

 

それは、戦闘の終わりを告げる静寂ではなく、新たな不安をもたらす不気味な静けさだった。

 

 




あおい「投稿、だいぶ間が空いちゃった。ごめんなさいね」

凛「言い訳はしない。
あやうくエタるところだった。
これからまた、毎週投稿を目指します」

あおい「あたしたちのストーリーは、もうしばらく続きます。何卒、よろしくお願いします」。
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