チビトランクスに憑依したのでパパ超えを目指す 作:リーグロード
ヨッス!オレトランクス!!
突然だが、俺はドラゴンボールのトランクスに憑依してしまった。
前世の記憶を思い出したきっかけは俺の未来の姿である未来トランクスを赤子の時に見たからだ。
そこで、自分が本編のドラゴンボール世界に産まれたのだと赤子ながらに悟った。
そこから先は激動の日々と言っても差し支えない出来事が続々と舞い込んできた。
原作を知っている俺からしたらストーリーの流れなんて分かっているというのに、俺はインフレ漫画のデタラメさに圧倒された。
才能のあるサイヤ人ボディのお陰か、俺には前世の記憶と共に気を探る能力を身につけた。
その能力で周りのZ戦士を探ればポカーンと口を開いてしまうほどの巨大な気を感じてしまった。
その中でも特に巨大な気を放っているのが、この世界の主人公でもある孫悟空。
この神の神殿内において次元の違う強さと呼べる気を持つこの主人公に、この時の俺はいずれ俺もあのくらい強く!と胸を燃やしていた。
たが、次の瞬間にはその思いは綺麗さっぱりと消えてしまった。
突然、その孫悟空を超える気が神殿の奥から現れたからだ。咄嗟に母親であるブルマの服を掴むと不思議そうにどうしたんでちゅか~?と語りかけてくるが無視だ。
俺の関心は神殿奥から現れた存在の気に釘付けになっていたからだ。
そして現れたのは、俺の父であるベジータだった。
そう、このシーンは精神と時の部屋から修業を終えて出てくる場面だったのだ。
「あう~」
無意識に近づこうとする俺の反応に母さんが気付いてベジータに近づいていく。
「ほ~ら、アンタのパパよ、トランクス」
「あぅ!」
「……なんだ?」
強い!こうして近づくとなおの事ハッキリ感じる。未だスーパーサイヤ人に変身していないにも関わらず、父さんの戦闘力はこの場の誰よりも高い。
まず間違いなく今この瞬間において、地球…いや、宇宙最強は父さんだ。
それから父さんは俺に触れることなくセルを倒しに去っていった。
これに対して母さんはぶつくさと文句を垂れていたが、俺にとってベジータというキャラはそういったぶっきらぼうな人物なのだから別に構いはしなかった。
それから遥か彼方の地でセルを圧倒していた父さんだが、18号を吸収して完全体に至ったセルのパワーは父さんを超えていた。そのセルによって父さんも未来の俺もやられてしまう。
後日、完全体になったセルによって、セルゲームが開催された。俺は赤子である為、直接その試合を見ることは出来なかったが、人造人間編で病に倒れた悟空が寝ている間に夢で全部見ていたという特殊能力が俺にも備わっていたようで、俺は母さんにお昼寝させられている間、遠くの方で開催されていたセルゲームを夢を通して観戦できた。
そこで初めて見たドラゴンボール世界の超次元バトルは俺のサイヤ人の本能に直撃した。
──闘いたい!そんな思いが沸々と湧き上がってくる。
セルと悟空のバトル、その後の覚醒した悟飯の蹂躙ともいえる無双。更に復活してパワーアップを果たしたセルとのかめはめ波のぶつかり合い。
非力な赤子である俺にとっては文字通り雲の上の戦いとも呼べるものだった。
だがそれでも、俺の心にあるのはあの日、精神と時の部屋から出てきた父さんの姿。
その日、確かに俺の胸に刻まれた憧憬ともいえる憧れは俺の人生の指針を確定させた。
俺の夢は父さんを超える最強の戦士になることだ。
あれから1年後、俺のライバルキャラでもあり親友になる悟天が誕生した。
産まれたばかりの悟天を前に母さんから「アンタの方がお兄さんなんだから、悟天君の見本になるような男になるのよ~」と言われた。
そんなこと言われるまでもない。俺は父さんを超える為に強くなろうとすれば、きっと悟天も真似して強くなろうと努力する。
それに引っ張られて俺も強くなれば悟天もまた更に強くなろうとする。
これぞジャンプにおけるライバルキャラを持つ主人公の王道的なパワーアップ法だろう。
事実その通り、俺と悟天が成長して修業が出来るくらいの年齢になれば互いにお遊びではあるが組み手をし、子供ながらにドンドンと成長を実感できるくらい強くなっていった。
原作では俺は舞空術を使えたが悟天は使えないといった展開だったが、俺は悟天には俺に負けないくらい強くなって欲しかったので、俺が舞空術を習得すると同時に悟天に舞空術を教え込んだ。
「うわ~!出来た出来た!やっぱり凄いやトランクス君は!!!」
「へっへ~ん!そうだろ!!」
宙に浮いてはしゃぐ悟天に、俺は鼻の下を擦りながら自慢げに胸を張る。
まだ体が子供の為か、精神的にも幼くなってしまっているが、褒められて嬉しくないわけではないので、ここは素直に受け取っておく。
「よ~し!次はスーパーサイヤ人の変身を習得するぞ、悟天!!」
「お~!!」
フリーザ編以降のバトルはこの変身を習得していなければまともに戦えないと言っても過言ではないほどに敵は強くなっていく。
だから、俺達もそれに置いていかれないように、こうしてスーパーサイヤ人に変身出来るように修業をこなしている。
「いいか!スーパーサイヤ人になるには怒らなくちゃならないんだ。だからこうして。なんか嫌なことやムカつくことを想像して──っ!はぁぁぁっ!!!」
前世の頃の記憶にあった嫌な奴にされたムカつく事を思い出して怒るが、どうしてもスーパーサイヤ人に変身出来ずにただ気が膨れ上がるだけに終わる。
「クッソォ!!全然スーパーサイヤ人になれねぇ!!!」
これは悟天も同じようで、俺と同じ様に気が膨れ上がるだけでスーパーサイヤ人にはなれないでいた。
やっぱり、そう簡単にスーパーサイヤ人には変身出来ないようだ。
原作なら、組み手で負けて悔しいって思いでスーパーサイヤ人に変身できたようだが、俺達は何度も組み手をしてるが一回もスーパーサイヤ人になれる兆しを感じられない。
やっぱり、俺が原作と違ってセルゲームを見たことで戦闘における経験値が高いぶん、俺が悟天よりも断然強いからそこまで悔しい思いが湧いてないんだろうか?
こういうのは接戦してあとちょっとのところで負けるっていうのが一番悔しいってのは分かってるからな。
でも、手加減して強さを抑えて戦うってのもなんか違うし……、あっ、そうだ!あの方法があった!!!
「そうだ!背中のゾワゾワだ!!」
「なにそれ?」
「スーパーサイヤ人に変身する方法だよ!感覚としては背中の方にゾワゾワってざわつかせるように力を込めて広げるイメージ……だったかな?」
確か、第6宇宙のカリフラって女のサイヤ人が変身した方法だったけど。ゾワゾワだったけ?ざわざわだったかも?
そもそも、背中だったのかな……?もしかしたら、頭だったかもしれないし……?
「え~?それ本当?」
「う、うるさいな!俺だってこれで変身できたかどうかうろ覚えなんだよ!!とにかくトライ&エラーでやってけばスーパーサイヤ人に変身出来るかもなんだし、やってみるぞ!!」
「お、おー!」
こうして俺と悟天は試行錯誤しながら色々と試してみるが、中々上手くいかない。
やっぱり、漫画みたいに上手くはいかないか……。
「あーもー!!全然上手くいかないじゃん!!トランクス君の噓つきぃ!!!」
「なんだとぉ!!俺が噓つきじゃなくて、悟天が下手くそなだけだい!!!」
「そう言うトランクス君だって変身できないじゃないかぁ!!噓つき!噓つき!」
「カッチーン!もう怒っちゃったもんね。この弱虫悟天!!!」
「なぁ!僕弱虫なんかじゃないもん!!」
「べー!いつも組み手で負けてべそかいてる弱虫く~ん!!!」
「なによぉ~!」
「なんだよぉ~!」
売り言葉に買い言葉、いつものお遊びの組み手ではなく、本気の喧嘩という名の闘いが始まった。
相手の怪我なんて知ったこっちゃないの全力バトルに発展し、互いの服が破れ、肌に切り傷が出来ても構わずに殴り合い、蹴り合う。
そして、互いにボロ雑巾のように転がると、同時に起き上がって睨み合い、また掴みかかって取っ組み合いの喧嘩になる。
「悟天の──」
「トランクス君の──」
「「バカヤロウ──!!!」」
互いの不満をぶつけた瞬間、全身から黄金のオーラが爆発するように吹き荒れた。
「「ハァ、ハァ、ハァ……?」」
突然の相手の変化に呆気に取られて見つめていると、その変化は俺と悟天の両方に起きていた。
「ご、悟天、お前その姿、スーパーサイヤ人じゃないか!?」
「トランクス君も、スーパーサイヤ人になってるよ!?」
互いに指差しあいながら、目の前で起きた現象に驚いていると、俺達は互いに目を輝かせて飛び跳ねるように喜んだ。
「「イヤッたぁ~~!!!」」
へ~い!とハイタッチを交わして即興の喜びのダンスを踊ったり飛んだりと、さっきまで喧嘩していたことなんか忘れてスーパーサイヤ人に変身出来たことに喜んでいる。
「これがスーパーサイヤ人か!スゲェ、気がドンドン溢れてくる!!」
「ねぇねぇ、これならさ大人達もビックリしちゃうじゃない?」
「するする!絶対するぜ!!って、あ……」
「??どうしたの、トランクス君?」
「悟天……今の俺達の格好をよく見てみろ……」
スーパーサイヤ人に変身できて頭に上った血が下がって冷静になった俺は、冷や汗をだくだくに流しながら自分の服を確認する。悟天も同じように確認するが、頭に?を浮かべて首を捻っている。
「いいか、悟天。今の俺達の服はボロボロで全身傷だらけだ……」
「うん。だってさっきまで喧嘩してたもん」
「これ、帰ってママ達になんて言って誤魔化す気だ?」
「あっ!」
ここまで説明して悟天もようやく事の重大さに気が付いたようだ。
そう、いくらスーパーサイヤ人に変身できていようが俺達はまだまだ子供。怒ったママの説教は死ぬほど怖いのだ……。
その日の晩、結局家に帰った俺達は母親に喧嘩したことがバレてしまい、説教とお仕置きのお尻ペンペンを喰らうハメになったのだ。