ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
さて、唐突だが、アイクと言うキャラをご存知だろうか。
知らないと言う人に説明すると、ファイアーエムブレムと言うゲームの内、『蒼炎の軌跡』と『暁の女神』と言うシリーズタイトルに登場する主人公の一人だ。
俺は、そんなアイクの事をスマブラで知った。
もっと具体的に言えば、スマブラXにおけるストーリーモードである、亜空の使者でだ。
当時幼稚園生だった俺は、あの初登場時の『天空』に、とんでもなく強い衝撃を受けてしまい、そこから、アイクのファンになったわけだ。
スマブラでのメインファイターはXからSPまで全部アイクだったし、蒼炎の軌跡と暁の女神もプレイした。
覚醒やifと言った作品でも、アイクだけは絶対に仲間にした。
勿論、アミーボも買った。
ヒーローズでも、アイクだけは確実に引くようにしていた。人生初課金もアイクだ。
よく、スマブラやヒーローズのアイクはアイクじゃないと言われているが、俺はあれも全てひっくるめてアイクだと思っている。
まぁ、兎にも角にも、俺はアイクと言うキャラが大好きだったのだ。
しかし、そんな俺が────
「…………冗談だろう?」
幾らアイク好きだとは言え、アイクになっているとは思わないだろうが。
何度も何度も確認してみるが、水面に映る俺の顔は確かにアイクのものだ。
いや、多少リアルにこそなっているものの、この青い髪と青い目、幼いながらも精悍な顔立ちは、ヒーローズに登場する子供アイクそのもの。
一体、何がどうなっていると言うのだろうか。
ふむ……そうだな、まずはこうなる前の状況を思い出してみよう。
俺は確か、昨日もスマブラのオンラインに潜って、そのまま……歯を磨いて寝て……それだけだな。
と言う事は、これは夢なのか?
しかし、それにしてはリアルすぎる気もする。
感覚はちゃんとあるし、何と言うかこう……明瞭と言うのだろうか、夢はどこかぼやっとしているというか、それこそ現実味が無いというか、そんなところがあると思うのだが、今はそれが無い。
だとすると、これは現実と言うことに……いやいやいや、流石に有り得ない。
どうせすぐに起きる。
起きて、この事を忘れて、いつも通りに学校へ行くのだ。
そしていつも通り、クソ程にもつまらない日常を過ごすことになる。
……そうだな、だから、今くらいは精一杯この体を楽しんで良いだろう。
恐らく8歳か9歳くらいの体なので、出来る事は限られるだろうが、まぁ、問題ない。
ひとまず、そこらを探索してみるとしよう。
取り敢えず見て分かることは、ここが何処かの廃村であるらしいと言う事だ。
家々はどれも朽ちて、畑は草が生え放題。
気になるのは所々にある巨大な爪のような跡と、焦げたような跡か。
……この村が廃村になった理由に、どこか関係がありそうだ。
次なる痕跡を探すべく、村の中心の方まで行ってみる。
が、特に何も────いや、何かがあるな。見てみよう。
これは……剣だな。錆び付いた剣が地面に刺さっている。
ふむ……この体で抜けるだろうか?
……いや、アイクならいける。何故ならアイクだから。
「ぐぅっ…………!!」
地面に突き刺さった剣の、恐らく柄だったであろう場所を両手で掴み、引き上げる。
……どうだ? 抜けるか?
剣と地面との接触部を見てみれば、少しずつだが、剣が持ち上がっているのが見えた。
これは……いける! 抜ける!
「おおぉぉぉぉぉりゃあああああああああッッ!!」
声変わり前の甲高い声で雄叫びを上げ、全力で引っ張ると、ボコっという音と共に刀身が地面から飛び出して来た。
……っしゃあ! 抜けたァ!! 流石はアイク! 子供でも強い!!
しかし、随分とボロボロだな、この剣。
ここまで錆び付いて風化しているとなると、この村が廃村になったのは随分と────
「グギャア!」
「うおッ!?」
突然、背後から何かの鳴き声が聞こえ、反射でバッと振り向く。
するとそこに居たのは、緑色の肌をした小人。
有体に言えば正にゴブリンと言ったような風体であり、棍棒を掲げ、今まさにそれを振り下ろそうとしていた。
「んなっ……グゥッ!?」
鈍痛が走る。視界が揺れ、後頭部から地面に倒れ込んでしまう。
ここで俺が本当のアイクなら避けられたのだろうが、俺はガワだけだ。本当のアイクではない。
ろくに体を動かすことも出来ず、棍棒を喰らってしまった。
ぼやける視界の先で、再びゴブリンらしき小人が棍棒を振り上げるのが見える。
……これは、死んだだろうか。
夢の中で死んだら、どうなるのだろ。
よくある話では、心臓発作で現実世界でも死んだりするが、実際のところ………………
いや、違う。駄目だ。
「ッ…………ラァッ!」
未だ手に掴んでいた剣を気力と根性でぶん回し、棍棒を弾き飛ばす。
……いくら夢の中とは言え、これは
こんなことで負けるなど。まして死ぬなど、アイク本人に申し訳が立たない。
「ふぬぅッ!!」
気合いと共に、渾身の力で以って剣を振り上げる。
どんなに錆び付いた剣でも、重量はあるのだ。
高く持ち上げさえすれば、後は重力に任せて振り下ろすだけで良い。
それだけで、人間一人の頭蓋をカチ割るだけの威力はあるはずだ。
「グガプッ!?」
短い断末魔が響く。
狙い通り、俺の剣は小人の頭蓋を破壊した。
その小さい頭から血が吹き出し、脳漿が飛び散る。
べちゃべちゃと体にそれらが付着するが、感覚はない。
そろそろ、起きる時間が近いのだろうか。
夢特有の、どこかぼやっとした感じもしてきた。
「ギギッ! ギャッ!!」
「グギッ!」
……おっと、群れだったのか。
ふむ、確かにゴブリンと言えば群れるものだと相場が決まっている。
どんな作品でも、敵としてのゴブリンが単体で登場してくる事は、早々ない。
まぁ、ファイアーエムブレムにゴブリンは居ないが。
数は……4。まぁ、いけるだろう。
「ふっ!!」
大股で踏み込み、剣を斜め上に振り上げる。
確か、逆袈裟斬りと言うのだったか。
「グゴォべッ!」
先頭の1匹、その首に命中した剣は、ポキッという軽い音と共に、骨をへし折った。
ゴブリンはこれまた短い断末魔を上げ、変な方向に首を捻じ曲げながら倒れる。
これで、まずは1匹。
次のゴブリンは、振り上がった剣をそのまま下ろし、殺す。
「ゴギッ」
これで2匹。
そして、残ったのも2匹。
「グギャア! グギャア!」
「ゴゴガァア!!」
2方向からの一斉攻撃が飛んでくる。
しかし、どうにも遅い。
まるでスローモーションのようだ。その動きが鮮明に捉えられる。
無論、甘んじて受けるつもりは無い。
腰を捻り、足を回し、振り上げた剣をぶん回しつつ、振り上げる。
所謂、回転斬り。
圧倒的な慣性によって動く剣はゴブリン2匹を巻き込み、その体を強かに廃屋へと叩き付けた。
「グボァッ!?」
「ガアアァァァッ!?」
そして、残った慣性でもう一度回転しつつ、剣を放り投げる。
「ゴギョッ!?」
「グベァ!」
飛んで行った剣は、狙い通りにゴブリンへ着弾。
その錆びついた身体と引き換えに、紅い花を咲かせて見せた。
「…………ふぅ」
何とか勝った…………が、どうにも眠い。
体の感覚が無い。目が回る。
これは、もう起きると言うことなのだろうか。
「─────」
まぁ、満足はした。
ほんの少しだけだったし、ただの幻想ではあったが、アイクの体を使えて嬉しかった。
「────ッ!!─────ッ!!!?」
……さて、じゃあ、起きるとするか。
目を閉じる。すると、意識が一瞬で遠のいてゆく。
「─い───か─郎ッ!!───じゃ─ぇッ!!?」
遠くから声が聞こえるが、気にしない。
五月蝿ぇ、俺は起きるんだ────────
はい、アイクになったぞ!
ここで注意だ!
この小説では主人公がガチのアイクファンって感じに書いているが、筆者はただのアイク好き止まりとなっている!!
だからこの小説を書くにあたって勉強はしているが、解釈違いポイントが多数含まれているだろうと思うので、その時は『ここ解釈違い!!』と感想欄にぶち込んでおいてくれ!!