ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
「おおおおおい!! 起きてくれアイク!!! 朝だぞ!!!」
「うおおおおッ!?」
突然、耳元で爆音が炸裂し、睡眠状態だった意識が一瞬で覚醒した。
あまりにも唐突すぎるそれに仰天して飛び起きると、真横にあったのはアグニ神の顔。
「うおぁっ……」
慌ててアグニ神と距離を取ろうとした俺だったが、生憎とここは狭いベッドの上。
後ろに着こうと伸ばした手は、ただ空を切るのみ。
ガクンと言う感覚と共に俺はベッドから落ち、鈍い音と共に後頭部から床に激突する。
「ごっ!?」
鈍痛と衝撃が俺を襲う。
しかし、その痛みと衝撃は、俺が想像していたよりも遥かに……とは言わないが、小さい物だった。
……ど、どうやら、【耐久】とやらのステータスはしっかりと作用しているようだ。
「おい! 大丈夫か!!?」
「……ああ、問題ない。……ところでアグニ神、出来れば寝起きに至近距離はやめてくれ。びっくりする」
「むむ! すまない! 次からは気をつけよう!!」
「そうしてくれると、助かる」
ひっくり返った体を起こし、食卓に腰掛ける。
……凄いな、もう痛くない。50近くでこのレベルか。
あの数字の横にあった
まぁ、流石にそれだと中途半端だし、仮にSの999が上限として、今の約20倍。
……これは本当にマジで勝ったんじゃないか?
「よーし! じゃあ、朝食にしよう!!」
そうやって俺が皮算用をしていると、アグニ神がそう大音量で宣言してから家の奥へと入って行った。
……今更なのだが、あの音量は朝早くから出して大丈夫なヤツなのだろうか。
近所から苦情とか来ないよな?
「さぁ!! 待たせたな!!」
そんな俺の不安をよそに、再び大音量を鳴らしながらアグニ神が帰って来た。
……まぁ、うん、多分大丈夫だろう。
きっとこの家にはファンタジーな防音材が使われてるんだ、そうに違いない。
よし、この事については考えない事にしよう。
…………しかし、アグニ神の両手で輝くあの黄金色の物は……
「……ジャガ丸くんか」
「む! すまんなアイク! 俺はこれ以外に料理が出来んのだ!! 飽きると思うが、たまには外から買ってきたり、外食にするから許してくれ!!」
「ああ、構わない」
むしろ俺的には全食ジャガ丸くんでも……いや、流石にそれは健康に障るか。
食事にあまり気を使う必要が無いとは言え、気を使わなさすぎて病気になって死ぬ、とか本当に避けたい。アイクが若くして病死とかマジ勘弁。
……はぁ、面倒だが仕方ないよな。
最低限の食物繊維とタンパク質は、こっちで勝手に確保するとしよう。
「いただきます…………ご馳走さん」
サクサクっとジャガ丸くんを食べ終え、装備を整え始める。
さっさとダンジョンに行って、体を鍛えなくては。
……っと、そう言えば、リオンさんがアドバイザーを付けるとかどうとか言ってたな。
確か……
まぁ良い。大体の容姿は覚えてる。行ってみればわかるだろ。
「では、行ってくる」
「む! 行ってらっしゃい!! 無事に帰ってこいよ!!」
アグニ神の喧しい声を聞きつつ扉を開けて、外へ出る。
早朝のまだ温まりきっていない空気が、少し肌寒い。感覚的には、春の中旬と言ったあたりの空気だな。
まぁ、この街に季節の概念があるのかは分からんが。
「…………」
……しかし、やはりと言うか何とも街が暗い。物理的にでは無く、精神的に。
街ゆく者たちが皆、辛気臭い顔をしながら下を向いている。
本当に、この街は何がどうなっているのだろうか。
現代日本のストレスに塗れた社会でも、ここまで酷くはないぞ。
恐らく同業者であろう猫の獣人がトボトボ歩いているのを見ながら、バベルへと向かう。
勿論、今日はしっかりと道を覚えながらだ。
昨日のような地獄は、出来ればもう味わいたくない。
「……む」
じっくりと看板やら建物やらを観察しながら歩いていると、いつの間にかバベルに辿り着いていた。
朝早くという事もあってか、同業者の数は余り見えない。
……ローズさんとやらを探すのなら、今のうちか。
赤髪の狼耳を探して、まずは受付の方を見てみる。
すると、お目当ての人物は丁度、窓口で書類の処理をしていた。
コツコツとブーツを鳴らしながら、ローズさんの所へ歩いて行く。
「……すまない。少し良いか」
「はい、どうも……って…… リオンと一緒にいた……【アグニ・ファミリア】の子よね?」
「ああ、昨日は世話になった」
カウンターの下にある台を引っ張り出し、その上に乗る。
「……で? 本日はどのようなご用件で?」
「やはりアドバイザーを付けるように、とアンタに伝えるよう言われてな」
「……リオン……はぁ……ったく。アドバイザーの要望はある?」
「要望?」
「ええ、こういう子が良いとか、そういうの」
何だその如何わしい店みたいなシステム。
まぁ、多分冒険者のやる気を出させるとかそんな感じなんだろうが……だいぶアレだな。
現代社会だったらセクハラとか言われるんじゃないか?
いや、高校生の俺にはまだよく分からん話だが。
「……特にそう言ったところにこだわりは無いな」
「そう……じゃあ、私で良いわね……ちょっと待ってて」
そう言うと、ローズさんは奥の方から本を3冊程持って来る。
タイトルは……『アドバイザーマニュアル』『冒険初心者の手引き』『階層別モンスター一覧』……と。
成程、やはりアドバイザーとは本来のチュートリアル役だったわけだ。
「さ、こっちよ」
ローズさんの後に着いて、幾つかある扉の一つに入る。
中は小さい部屋になっており、机と、それを挟む形で椅子が置いてあった。
……中々に上等な椅子と机だ。どうやらギルドはかなり金を持っているらしい。
「ここに座って」
「ああ」
指示に従い、ローズさんの対面に座る。
……足が床に着かん。
「じゃあ改めて、私が、今から君の迷宮アドバイザーを務めさせて貰うわ。ローズよ」
「アイクだ。よろしく頼む」
「ええ、よろしく……さて、じゃあ最初に迷宮アドバイザーとしての決まり文句を言わせてもらうけど……冒険者は、冒険をしてはいけないわ」
……ん?
「……何故?」
「死ぬからよ。リオンからも言われなかった?」
……いや、死ぬって……それは当然だろう。
危険を冒すというのは、つまりそういう事だ。
それを分かってこっちは冒険者になったと言うのに、それが駄目とは、だったらなんで冒険者なんてやっているんだって話にはならないのか。
「……分かった」
「……どうにも分かっていなさそうだけど、まぁいいわ。それじゃあ、今日は初日だし、ダンジョンについて色々と勉強してもらおうかしら」
『冒険初心者の手引き』の本をドンと机の上に置く。
……ダンジョンに潜る予定だったのだが、まぁ、こう言った勉強も大事だよな。
「まず、冒険者として覚えておかないといけない事を教えるわ」
「ああ、それで頼む」
「じゃあ、最初に────」
────そんなわけで、ダンジョンに関する勉強が始まったわけだが……拍子抜けと言うか、何と言うか……正直なところ、超簡単だった。
日本の教育水準で難易度を換算すると、大体小三くらい。
『冒険初心者の手引き』は本当にほんの一瞬で覚えられたし、『階層別モンスター一覧』も、元々知ってる名前のモンスターが居たりしたから覚えるのは簡単だった。
別に知らない名前でも『名は体を表す』的な感じだったから、特徴か名前かのどっちかを覚えられたら普通に大丈夫とか言う優しい仕様。
「……アンタ、誰かに教えてもらってたりしてたの?」
「いや、一切教わってないが」
「……はぁ、どんな天才よ……まぁいいわ。こっちとしては楽だしね」
ローズさんは本を閉じ、立ち上がる。
「これで勉強は終わりよ。これ以外に何か困ったことだったり、聞きたいことがあったら聞きに来て」
「ああ、わかった」
そう言って扉を開けて出て行くので、俺もそれに追従して部屋の外に出る。
時間が経ったからか、外は同業者達がごった返していた。
「では、ダンジョンに行って来る」
「そう。じゃ、精々死なない事を祈ってるわ」
そう言って、雑踏の中にローズさんは消えて行った。
……よし、では俺もダンジョンに行くか。
今日はとにかく【力】を鍛える。
さっさと【力】を上げて、デカい剣を使えるようにしなくては。
Q:成長補正は無いんか。
A:原作開始時にLv20くらいになってて良いなら付けるけど。
そんなわけで、次回はダンジョン回だ!!
夏休みに入ったからバリバリ書けるぜ!!
そんなわけで、評価と感想、くれ!!