ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか?   作:かい

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我がステータスの糧となれ

 六階層。

 出現するモンスターが大きく変わり、初心者には危険とされる階層にまで、俺は潜っていた。

 と言うのも、一から四階層は、俺と同じ駆け出しの冒険者が多く居たので、どうも効率が悪かったのだ。

 多少効率のいい狩場を見つけても、同業者が直ぐに入って来て追い出されるし……

 

 ……いやまぁ、ぶっちゃけるとモンスターが弱すぎたってだけなんだが。

 うん、リオンさんの攻撃に慣れてしまった後だと、ゴブリンだのコボルトだのの攻撃がマジで遅い。回避が簡単すぎる。

 それに加えて突きの殺傷力が強すぎて大体一撃で終わってしまうので、倒すのも簡単。

 あまりにも余裕すぎてステータスの伸びを感じないと言うわけで、ここまで潜って来た。

 

 しかし、この判断はまさしく正解だったと言えよう。

 俺はこの階層で、素晴らしいモンスターと出会うことができた。

 

「フンッ!!」

『…………』

 

 それがこのウォーシャドウ。

 全身真っ黒の、人間に似た体の構造をしているモンスターなのだが、コイツが中々に強い。

 この辺りの階層の中では群を抜いた攻撃力と速度。それと長いリーチ。耐久力もかなりある。

 まさに強敵だ。しっかりと防御を固め、隙を見つけて攻撃。これを何度もしないと倒せない。

 つまり、【力】と【器用】、それと【耐久】のステータス稼ぎには、もってこいの相手であると言うことだ。戦わない選択肢というものが無い。

 

「ぜぇッ!」

『…………』

 

 そんなわけで、ここに来てからもう既に30体近くのウォーシャドウ、それとダンジョンリザードとかフロッグシューターとかを少々狩って来たわけだが、ここで魔石とドロップアイテムを入れるための袋がパンパンになってしまった。

 ローズさん曰く、魔石はしっかりと取っておかないと強化種とやらが誕生して、色々と厄介なことになると言う話だったので、そろそろ帰っておくべきだろう。

 まぁ、その強化種とやらには少々興味もあるにはあるが、今は少々傷を負いすぎている。

 ポーションを持って来ていれば強化種と戦っても良かったのだが、生憎と俺は金を持っていなかったので、買えなかった。

 

「グゥ……ッ!?」

『…………』

 

 と言うわけで、名残惜しいがこのウォーシャドウを本日最後の相手と定めることとする。

 さぁ、貴様も俺のステータスの糧に────

 

『…………!?』

「ッ!?」

 

 鋭利な爪を振り下ろそうとしていたウォーシャドウの体が、真っ二つに割れる。

 左右に分かれたその体がゆっくりと倒れ伏すと、目の前に現れたのは金色の何か。

 新手のモンスターかと身構えるが、よく見ればそれは同業者(人間)の少女だった。

 金色の長髪に、これまた金色の瞳。俺と同じ程度の背格好。

 その手には明らかに上物だとわかる、模様の特徴的な剣を握っている。

 どうやら、これでウォーシャドウ(俺の獲物)を真っ二つにしやがったらしい。

 

「大丈夫?」

 

 そんな事を聞きながら歩み寄って来る少女。

 

「……まぁ、大丈夫ではあるが」

「本当に?」

 

 更に近づいて来る少女。

 ……いや、近い近い近い。距離感しっかりしろ。

 

「おいアイズ! 一人で先に行くなとあれほど……む?」

 

 俺が少女の距離感に困惑していると、誰かが小走りでこちらへ向かって来た。

 緑色の髪に緑色の瞳の、エルフだ。

 先程の言葉から推測するに、この少女の保護者らしい。

 成程、確かに母性と言うか、それに準じた何かを感じる。

 

「リヴェリア。この人、酷い傷」

「……確かに酷い傷だな。少し待っていろ」

 

 リヴェリアと言うらしい保護者エルフは俺に手を翳す。

 ……もしかしなくても、魔法か。

 

「……いや、別に大丈夫なんだが」

「まぁ、そう言うな。ここで見逃して後で死なれたら、こちらもバツが悪い」

 

 俺の遠慮を退け、保護者エルフは声高に詠唱を開始する。

 

「【フィル・エルディス】!」

 

 詠唱が完了し、保護者エルフの手が光ると、一瞬で体の痛みが消えた。

 ……ふむ、これが回復魔法と言うやつか。

 

「……すまない、助かった」

「何、気にするな。こちらが勝手にやっただけだからな」

「そう言うわけにもいかん、何か礼を……」

 

 あっ、待て。滅茶苦茶良いこと考え付いた。

 

「……そうだな、この袋の中身、全てでどうだ」

 

 丁度傷も癒えたし、これでこの袋を空に出来れば、また戦える。

 相手も金を稼げるので、まさに一石二鳥。実に天才的なアイデアだ。

 

「はぁ……礼は要らんと言っているだろう。我々には十分な余裕が……って、アイズ? 何処へ行った?」

 

 俺の差し出した袋を突っぱねたと思えば、保護者エルフが慌てて周囲を見渡し始める。

 釣られて周りを見てみれば、先程の少女が居ない。

 

「おい!? アイズ!? 何処へ行った!? ……ええい! 失礼する!!」

 

 と、そのまま走り去ってゆく保護者エルフ。

 ……ううむ、良い案だと思ったのだが……まぁいい。地上に戻ると────ん?

 

 ビキリ、と。周囲の壁に大きな亀裂が入る。

 亀裂は見る見るうちに大きくなり、そして────

 

『『『『『…………』』』』』

 

 一気に5体ものウォーシャドウを生み出した。

 ……成程、これがローズさんの言っていた怪物の宴(モンスターパーティ)と言うやつか。

 しかし、完全に囲まれているな。逃げられない。

 ……まぁ、多少の傷は仕方ないとして、一気に仕留めよう。

 

「ふッ!!」

『…………』

 

 まず、一番近くのウォーシャドウの首を叩き切る。

 生まれたばかりと言うこともあり、周囲の状況を把握できていなかったウォーシャドウは、なす術なく首を刎ねられ、死んだ。

 同様に、その近くにいた2匹目の首も飛ばす。

 これで、少なくとも一方向は安全地帯を確保できた。

 

 そこでやっと敵の存在を認識したウォーシャドウ共は、俺を殺そうとそれぞれが腕を伸ばし、爪を繰り出して来た。

 俺はそれを安全地帯の方向へバックステップで回避してから、俺から見て一番左側のウォーシャドウへと走る。

 ウォーシャドウは咄嗟に爪でガードしようとするが、そんなことは既に折り込み済み。

 

「ハァッ!」

 

 剣を振るい、ウォーシャドウの爪を切り落とす。

 そして、無防備になった胸へ全力で剣を突き刺せば、何かを砕いた感触と共に、ウォーシャドウの体が灰になった。

 兎に角、これで3匹。残りは半分以下だ。

 しかし、全力で突きを放った俺は、生き残った2体のウォーシャドウへ、遮蔽物も無しに隙を晒してしまう。

『居合い』でも覚えていればここでいっぺんに倒せていたのだが、贅沢は言っていられん。

 

「ぐっ!?」

 

 ウォーシャドウの爪が、俺の肩から胸にかけてを切り裂く。

 切断とまでは到底いかないが、かなり深い。骨もやられていそうだ。

 だが、既に多少の傷は覚悟した身。この程度では怯んでいられない。

 

「ッ……ラァッ!!」

 

 もう一度、全力の突きをウォーシャドウの胸に放ち、その体を灰に変える。

 最後に残ったウォーシャドウの爪で胸を裂かれるが、肺には届いていない。

 

「ぬぅッ!!」

 

 最後のウォーシャドウも胸を突き、灰に変える。

 さて、これで勝ち……だが、割と満身創痍だな。

 さっさと帰って、ポーションなりなんなりで治療しなくては。

 

 しかし、これだけやればステータスの伸びも期待できそうだ。

 着実に一歩一歩、アイクに近づけている実感がする。

 さぁ、明日もダンジョンでウォーシャドウ狩りだ。

 

 





 学校の課題バカ多いが……?(戦慄)

 それはそれとして感想と評価、くれ!!
 
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