ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
買ったポーションをカチャカチャと鳴らしながら、真っ直ぐに家へ帰る。
家の位置は既にバッチリと覚えたので、もう迷子の心配はない。
この『豊穣の女主人』とか言う酒場の二つ先の路地が、家のある路地だ。
……合ってるよな? ……うん、合ってる。
「おかえり!! よく無事……じゃない!!! 大惨事だ!!!!」
「ただいま帰った。傷は治っているので問題は無い」
昨日と同様、こちらが扉に触れる前に扉を開けたアグニ神の横を通り、家の中へ。
俺を見たアグニ神が飛び上がって驚くが、まぁ、帰って来た子供が血塗れになっていたとあらば、この反応が正常だろう。
立場が逆であったなら、俺もこうなる。
「なななっ、何があったんだ!? すごい血の量だぞ!!? 服もこんなだ!!」
俺の体をペタペタと触るアグニ神。
ちなみにだが、アグニ神が言った通り、今の俺の服は血でかなりヤバいことになっている。
マントの下はまだ無事だが、前の方にはもう元の色の部分が殆ど無い。
しかも、【ディアンケヒト・ファミリア】での説教中に変色し、もうほぼ真っ黒な上に乾燥してカッチカチ。
恐らく街中で騒ぎにならなかったのは、もはやこれが血の汚れだとわからない程にまで、服が染まっていたからだろう。さっさと洗って血を落とさなくては。
「少しダンジョンでな。もう一度言うが、傷は治っている。問題は一切ない。あとこれは今日の稼ぎだ。好きに使ってくれ」
「も、問題は無いと言ってもだな!? っとと……むむむ!!? すごい稼いでる!!?」
いつもながら騒がしい神だな本当に。
しかしまぁ、すごい稼いでいると言うのは俺も同意ではある。
1ヴァリス=1円だとしても、朝5時くらいから14時くらいまでの7時間で70000近く。
時給にして約10000。最低賃金の約10倍だ。
危険手当だとかそう言うのも入れても、大分割りは良いと言える。
しかも、これでまだ六階層での稼ぎなのだから恐ろしい。
十階層辺りにでも行こうものなら、どれだけ稼げてしまうのだろうか。
「むむむむむ……まぁいい!! 生きて帰ってきてるならそれで万事オーケーだ!! さぁ! 早速ステータスを更新しよう!! でもその前に体は洗ってくれ!!」
「わかった」
まぁ、うん。流石にこの汚さでベッドは俺も無理だ。
アグニ神から布を貰い、水に浸してから体を拭く。
うぅん、汚れまくり。一瞬で布が真っ赤になった。これはもう体を拭く用にしよう。
ある程度汚れを落としたら、ベッドに寝そべる。
……なんかどっと疲れが出てきたぞ。やはり子供。体力が無い。
「良い加減俺も3回目だからな!! もうだいぶ慣れてきたぞ!!」
そんな俺をよそに作業を始めるアグニ神。
なんか知らんが、この作業にはもう慣れたらしい。
だが、言われてみれば、確かに最初の方に比べて大分手際がいい気がする。
「よぉし! これが新しい君のステイタスだ!!」
おお、早い。どうやら本当に慣れたようだ。
さて、どれくらい伸びたか……
アイク
Lv1
力:I 12 → I 35
耐久:I 49 → H100
器用:I 10 → I 23
敏捷:I 1 → I 1
魔力:I 0 → I 0
魔法
【】
【】
【】
スキル
【
・望む方向に成長する。
・対象が明瞭である限り常時発動。
……よしよしよし、狙い通り【力】と【耐久】がちゃんと伸びてる。
しかし【敏捷】は伸びなかったか。まぁ、あの戦い方だったら伸びないのも当然なんだが。
だが、【敏捷】は重要なステータスだ。【敏捷】がfeで言うところの【速さ】にあたるのならば、尚のこと。
後で走るなり何なりして、伸ばしておくとしよう。
「むむぅ!! やはり【耐久】の上がりが凄まじいな!! 三日でHとは!! まぁあれだけ怪我してるんだから、そりゃそうだよなって感じだが!!」
「まぁ、そうだな。俺はもっと【耐久】が欲しいんだが」
「死なないようにだけ気をつけろ!! 死ななきゃ安いんだからな!!」
「ああ、そうさせてもらう」
ふぅむ、やはり、神にもそう言う認識はあるのか。
しかしまぁ、そうだよな。ここにはポーションなんて言うチートアイテムがあるのだ。
死にさえしなければ、本当にどうにでもなってしまう。
四肢欠損だとか、粉砕骨折だとか、現代では治療が難しいとされることでも、多分治そうと思えば治せてしまうんだろう。
……ということは、死ぬ直前まではまだ平気ということだ。
よし、明日はもっと自分を追い込んでみよう。
……ああ、いやしかし、死ぬ直前までやり過ぎて、治療が間に合わずに死ぬというのはあまりにも間抜けだよな。
そうなると、俺が倒れても治療してくれる仲間が欲しくなってくる。
アイクのあの強さも、ティアマトやボーレと言った仲間の存在によるところが大きい。
俺がアイクを目指して強くなるのならば、いつかは絶対に仲間を作らねばならないだろう。
しかし……うーん……いや、今はまだ俺一人でいいや。
こんな状態で仲間を作ったところで、俺が弱過ぎて迷惑をかけてしまうだろうからな。
まずはしっかりと基礎能力を作っていかなければならない。
「……ところでアグニ神、服を洗いたいのだが」
「む! それならばこっちだ! こっちに井戸が掘ってあってだな! この中から水を汲んでくれ!! ちなみに排水溝はそれだ!!」
そのためにも、まずは洗濯だ。
基礎能力云々の前に、病気になって死ぬなんて、笑い話にもならないからな。
井戸の中から水を汲み、桶の中にぶち込む。
そこに服を入れると、擦るまでもなく一瞬で水が真っ黒になった。
……これは、骨が折れそうだ。
何度か水を組み直しつつ、ゴシゴシと服の血を落とす。
大体5回目くらいの水交換で、やっと水が黒く染まらなくなった。
念の為にその後も数回程擦ってみるが、水は綺麗な状態を保っている。
「……よし、これで十分だ」
「じゃあそれは、そこからこうやって干してくれ!!」
言われるがままに、服を干す。
……些か日当たりが悪すぎる気もするが、まぁ立地的に仕方がない。
何はともあれ、これで病死の可能性は限りなく低くなったと言えよう。
「……では、アグニ神。俺は少々走りに行ってくる」
「走り?……ああ! 【敏捷】か!! 頑張ってこい! ただ最近はこの辺物騒らしいからな! 気をつけろよ!!」
「ああ」
家から出て、適当な方へ走り出す。勿論、道は覚えながらだ。
……しかし、やはりと言うか、この街には今、何かが起こっているらしい。
できることなら、俺には関係のないことであって欲しいが、多分無理だろう。
いつ何が起こっても良いように、準備だけはしておくか。
ポーションなんてモンがある世界、マジで死ななきゃ安いと思うんだ。
それはそれとして感想と評価、くれ!!