ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
気が付いたらアグニ神の顔が目の前にあった。
見てみれば、窓の外が明るくなっている。
どうにも、あの本を読んでいる間に寝落ちしてしまったらしい。
まぁ、中身は大人でも見た目……と言うか、体は子供だからな。仕方ないだろう。
しかし、それにしても随分と不思議な本だったな。
読んでいる間に誰かと会話していたかのような感覚が────
「……は?」
手元にあった本を開いてみると、中身が真っ白になっていた。
そんな馬鹿なとページを捲ってみるが、どのページを見てみても全て真っ白。
よく目を凝らしても、インクの跡すら見られない真新しいただの紙でしか無くなっている。
……成程、ここには使い捨ての本なんて物もあるのか。実に斬新だな。
使い捨てにする意味が全くと言って良いほど理解出来ないが、まぁファンタジーなんてそんなもんだろう。
それにまぁ、真っ白になったらなったで便利ではある。
今後はメモ帳として有効活用させて貰うと────
「おはよう!!!!」
「うおおおおおおおっ!?」
真横で爆音が轟く。
寝起きでも減衰することのない、アグニ神の大音声だ。
不思議な本に気を取られていた俺は、そんな圧倒的大音量をノーガードで、それも至近距離で喰らってしまう。
「ごっ!?」
弾かれるようにアグニ神から飛び退き、耳を塞ぐ俺だったが、生憎とここは狭いベッドの上。
昨日の光景の焼き直しが如く、鈍い音と共に後頭部から床に激突する。
「……あ?」
しかし、全くと言って良いほど痛くない。
衝撃は食らったし、痛みも多少は感じたものの、それは本当に微々たるものだった。
まるで、目に見えないヘルメットを被っていたかのような感覚だ。
……こ、これがステータスの力か。やはりとんでもないな。
「だ、大丈夫か!?」
「ああ、問題はない。だがアグニ神、寝起きと共に大音量はやめてくれ。昨日は静かに起きたのだろう」
「む! すまない! 起きていたから大丈夫かと思ってしまった!! 次からは気をつけよう!」
「そうしてくれ」
ひっくり返った体を起こし、食卓に座る。
その瞬間、凄まじいまでの疲労感が俺を襲ってきた。
……まぁ、昨日の出来事を振り返ってみれば、おかしな事ではないか。
しかし、疲労を残したままと言うのは少々……否、かなり危険だ。
子供の体なのだから、尚更だ。
非常に残念だが、今日のダンジョン探索は出来るだけ早めに切り上げるとしよう。
「……ああ、そうだ!! アイク! これを見てくれ!!」
「ん?」
アグニ神が俺に折り畳まれた羊皮氏を押し付けてくる。
これは……ステータスの紙だな。一体これがどうかしたのだろうか。
「昨日、お前が寝た後に更新してみたんだがな!! すごいぞ!! 取り敢えず見てくれ!!」
「あ、ああ……」
アグニ神の勢いに押され、羊皮氏を開いてみる。
アイク
Lv1
力:I 35 → I 35
耐久:H100 → F328
器用:I 23 → I 23
敏捷:I 1 → I 12
魔力:I 0 → I 0
魔法
【コルポデル・ヘロウ】
・操作魔法
・各アビリティ値の効果反映。
・発動妨害不可
・詠唱式『躍動せよ。その
【】
【】
スキル
【
・望む方向に成長する。
・対象が明瞭である限り常時発動。
「……………………はぁ?」
え、なんだこれ。いや、なんだこれ。
一体全体何がどうなっていると言うのだ。
いやまぁ、うん。耐久が滅茶苦茶上がっているのは、分かる。昨日のあの理不尽な襲撃で得たものだ。
だが、この発現した魔法については心当たりが全く────いや、まさか。
持っていた本に視線を落とす。
……これか? まさかこの本がこうなったのは、
しかし成程。それだったならば確かに筋は通る。
つまりこれは、魔法を覚えさせる効果を持つ、一回限りの消耗品だったわけだ。
だが、そうなるとあの痴女神がこんなものを俺に持たせた理由が……いや、そうか。
さてはあの痴女神、これで俺に恩を売ったつもりだな?
それで、この事を理由に俺を自陣営に引き込むつもりなのだろう。
しかし、残念ながら俺はこれを恩だと思う事はない。精々が慰謝料だ。
それはそれとして感謝はする。
「どうだ、すごいだろう!! 魔法だぞ!!」
「ああ、まさか発現するとはな。幸運だった」
「っていうか! 俺としてはこの異常に上がっている【耐久】が気になるのだが!!」
「気にするな。現に今、俺は無事だ。それよりも早くこの魔法を試したい」
「むむぅ!! ……まぁ、それもそうか!! では今から飯を持ってくる!!」
アグニ神がベッドから立ち上がり、歩いてゆく。
そう言えば、昨日は夕食も食えずに寝てしまったからな。
ここでしっかりと補給しておかねば。
◾️
「……こう、で良いのか?」
剣を振るい、ダンジョン三階層の正規ルートから外れた
なんでも、こうする事でダンジョンはモンスターの生成よりも壁の修復にリソースを割くため、壁の修復中はモンスターが湧かないのだとか。
正直聞いた時は休憩くらいにしか使えなさそうだなと思っていたが、こう言った事にも使えそうだ。
何せ『操作魔法』とか言うよく分からん魔法だからな。
まずはこう言う安全なところで試し撃ちをしておきたい。
「あー……確か…… 『躍動せよ。その
……成程、これが魔法を詠唱すると言う感覚か。
体の方は何ともないが、精神力を詠唱にごっそりと持って行かれる。
魔法を唱えながら動く『並行詠唱』とやらが難しいとされるのは、これが理由らしい。
しかし、やろうと思えば出来ない事も無さそうだ。
子供の脳は柔らかいからな。マルチタスクもなんのそのだ。
だが、それを試すのは今ではない。取り敢えず魔法を発動させてみるとしよう。
「【コルポデル・ヘロウ】」
待機状態にあった魔法を解放し、発動させる。
すると、光の糸のような物が俺の体に巻き付き、すぐに消えた。
そして………………ん? あれ? それだけ?
いやなんか、ちょっとした違和感みたいなものは感じるが、それ以外は──
「げぶッ!?」
突然、体が物理的に有り得ない軌道を描いて仰向けになり、そのまま倒れる。
痛くは無いが、驚きが強い。
「な……何が起ごぉッ!?」
立ち上がろうとした瞬間、体が引っ張られるように壁に激突した。
「ええい、使い勝手が悪いにも程が……ぐおっ!?」
今度は立ち上がる事こそ出来たものの、体が突然上に跳ね、天井に頭をぶつけてしまう。
今のはかなり痛かった。流石にこのくらいになると痛みを感じるらしい。
……しかし、今ので大体の効果は把握した。恐らく、これをこうすれば……
「おっ……とと」
体が跳ねるように起き上がり、そのまま床に二本足で立つ。
そして、こうすると……
「お、おぉぉぉぉお……ぐっ!?」
体が数メートル程正面に平行移動し、その直後にビターンと床に叩きつけられる。
……よし、思い通りにはいかなかったが、これで大体の効果は把握した。
恐らくだが、この魔法は『自分の体にコントローラーをつける魔法』だ。コントローラーは操作盤と言い換えても良い。
つまるところ俺は今、自分の体を自分で動かしながら、外付けの操作機構でも自分の体を動かしている状態にあるわけだ。
しかし…動かすのがべらぼうに難しい。
何せ二つの体を同時に動かせと言われているようなものだ。
急にやれと言われて出来るわけがない。
だが、使い熟せれば確実に強いはずだ。これは練習あるのみだな。
効果を解除し、
すると、背後の方からゴブリンの鳴き声が聞こえて来た。
流石に稼ぎがないのも何だし、少しくらいは狩って帰ろうかと後ろを振り向く。
すると、そこにはナイフを振り上げ、今にも俺に突き立てようとする男がいた。
記念すべき初魔法!!
名前考えるの難しすぎて滅茶苦茶悩んだよ畜生が!!
そんなわけで評価と感想、くれ!!