ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか?   作:かい

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世界が俺に、アイクになれと言っている

 ────知らない天井、と言うやつか。

 しかし、今時の病院にこんな木の屋根などあるわけが無い。

 いや、あるかも知れないが、少なくとも救急車で運び込まれるような所には無いだろう。

 となると、これはまだ夢の続きであると────

 

「おおおおおお! 起きたか!!」

「うおおおおおおおおおッ!!?」

 

 突然の大声に飛び起きる。

 見てみれば、俺の寝ているベッドの横に、見知らぬ男が居た。 

 ……しかし、どう言うファッションなんだ、それは。

 真っ赤なヒラヒラの服に、ド派手な蓮の飾り。

 一体何処の民族衣装ですか? って感じだが、そのくせ顔はめちゃくちゃ整っているのが苛立たしい。

 何だ? イケメンならどんなファッションでも似合ってるってか?

 その通りだよ! すげー似合ってるよ! クソが!

 

 ……いや、今はそんなくだらない事にキレてる場合じゃない。

 

「……誰だ?」

「む! おお! すまんすまん! 俺はアグニ! 神だ!」

 

 アグニ……?

 アグニ……アグニ……ああ、火神(アグニ)……ん?

 

「神だと?」

「おう! 神だ!!」

 

 そう言うと共に、オーラ的な何かが放たれる。

 上位者の圧と言うか、力の波動と言うか……そんな感じの何か。

『この人には絶対に敵わない』と、強制的に解らされる。

 どうやら、彼が神であるというのは事実であるらしい。

 

 しかし……いや、まぁ、夢なんだし荒唐無稽でも全然構わないんだが……

 それにしたってアグニ神とはなぁ……炎繋がりか?

 ってか、アレか。その服インドのヤツか。

 確かに、そう言われてみればどことなくインドを感じる。

 

「そうか……ところで、此処は?」

「ああ、そうだそうだ……此処は迷宮都市オラリオ! 世界の中心だ!」

「……オラリオ?」

「そう! オラリオ! そしてこの場所は俺のホーム!」

 

 何処だオラリオ。何だ迷宮都市。

 何だ? 迷宮(のように入り組んでいる)都市ってことか?

 それとも迷宮(で有名な)都市?

 どっちにしろファンタジーだな。

 いや、もう神が目の前にいる以上、バリバリにファンタジーなんだが……

 と、言うか、だ。

 

「……で、俺は、どうすればいいんだ?」

 

 なんか知らん都市の中にある、インドの神様の家に連れ込まれたら、その後にどうすれば良いか、なんてさっぱり解らんのだが。

 

「む! それなんだがな!」

 

 アグニ神はそれだけ言うと一旦言葉を切り、両手を大きく広げて俺に語りかける。

 

「君! 英雄になる気はないか!?」

「…………英雄?」

 

 唐突かよ。

 しかし、英雄というと、あれか。ヒーローか。

 ふむ、確かに、男なら誰しも英雄を夢見た事はあるだろう。

 かく言う俺も、あの蒼炎の勇者に憧れた。

 ……だがしかし、何だ? これは? 今、俺は何の勧誘を受けている?

 

「そう! 英雄だ!」

「偏に英雄と言っても、色々あるだろう。どんな英雄なんだ」

「怪物を討ち倒し、迷宮を制覇し、富と名誉を恣にする、そんな英雄だ!」

 

 成程、どうやら英雄は英雄でも、漫画やアニメとかに出てくるタイプの英雄であるらしい。

 …………ふむ。

 

「壊れない両手剣はあるか」

「モンスターを倒して、金を貯めれば買える!」

「燃え盛る炎は出せるか」

「魔法が発現すれば、容易い事だ!」

「飛ぶ斬撃は放てるか」

「そう言うスキルか、魔法が発現すれば夢じゃない!」

 

 ……まぁ、そうだな。折角、そう、折角だ。

 どうせ此処は一夜の夢。醒めれば忘れてしまう、都合の良い夢の世界。

 夢の中でくらい、本気で英雄(アイク)を目指してみても、誰も咎めやしないだろう。

 

「……なる」

「む!」

「なると言ったんだ。俺は成る、英雄(アイク)に」

「〜〜ッ!! よくぞ! よくぞ言ってくれた! 歓迎しよう! 我が眷属(ファミリア)に!」

 

 ファミリアと言うのはよく解らんが、取り敢えずアイクになれるのなら何でも良い。

 ……しかし、アグニ神はスキルやら魔法やらと言っていたか。

 一体、どうやってそれらを発現させれば────

 

「では! 極東に曰く、善は急げと言うやつだ! 早速上を脱いで、うつ伏せになってくれ!」

 

 なるほ…………ん?

 

「何故だ?」

「今から恩恵(ファルナ)を刻む! お前にステイタスを授けるんだ!」

 

 おお! ステータス!

 かなりファンタジーだとはわかっていたが、まさかステータスもあるとは!

 となると、スキルとか魔法とかは、レベルアップで出る感じかな?

 

 兎に角、ステータスをもらえると言うなら、拒む理由は無い。

 上の服を脱ぎ、うつ伏せに……うわっ、流石アイク。

 子供の頃から腹筋がバキバキだ。やはりグレイル団長に鍛えられたのかな?

 

「ううん! 良い肉体! では、少し大人しくしていてくれよ……!」

  

 アグニ神が俺の背中の上で何かをし始める。

 何をしているのかは見えないが…………ん?

 今、なんか背中で変な感覚が……

 

「お? おおおおお!? これは!?」

 

 え? 何?

 

「これは……これはすごい……これはすごいぞぉ……ッ!!」

  

 なんか知らんが、アグニ神が大興奮している。

 正直、真後ろで騒がれるとかなり五月蝿いので、静かにして欲しいのだが……

 

「よぉしッ!! 出来たッ!」

「そうか、出来たか」

「ああっと! 少し待って欲しい! まだ作業が終わってないんだ!」

「……わかった」

「すまんな! 初めてだから少々手間取っているんだ!!」

 

 成程、そうだったのか。

 まぁ確かに、何事も最初は初めてだ。

 そりゃあ、神だってそうだろう。

 

「よし、よしよしよし……これで大丈夫だ! もう立って良いぞ!」

「ああ」

 

 アグニ神からの許可を得て立ち上がる。

 ……うん、やはり子供とは思えないほど筋肉が発達している。

 

「いやー! 素晴らしい! すごいぞ! 君! 最初からスキル持ち、しかも確実にレアスキルだ!」

「……レアスキル? 何だそれは?」

「珍しいスキルのことだ!」

 

 いや、それは分かるが。

 

「む……ああ! 効果を知りたいんだな!?」

「ああ。教えて欲しい」

「じゃあ、これが君の初ステイタスだ! しっかりと見てみてくれ!!」

 

 アグニ神が一枚の紙を……うわ、何だこの紙。すげーゴワゴワ……ああ、アレか、羊皮紙ってヤツか。

 何気に初めて触ったな、羊皮紙。

 いや、重要なのは紙自体じゃなくて、その中身なわけだが。

 まぁ、取り敢えず見てみよう。どれどれ……?

 

 アイク

 

 Lv1

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 魔法

【】

【】

【】

 

 スキル

蒼勇夢想(アイク)

 

 ・望む方向に成長する。

 ・対象が明瞭である限り常時発動。

 

 

 …………成程な。

 どうやら世界は俺に、アイクになれと言っているようだ。




 
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