ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
「────どうだ! アイク! これがオラリオの中心、バベルだ!」
塔の周り、
近くで見て理解したが……これは、あまりにも異常な建造物だ。
高度だけならばかつて見たスカイツリー程では無さそうだが、あれと素材からして違う。
しかもこの塔、根元から頂点の太さがほぼ一定な上、支柱すら無いとか言う変態構造になっているのにも関わらず、きちんと立っていて、機能もしていると言うのだから驚きだ。
現代の技術を以てしても、この建造物の再現は難しいだろう。
また、もし再現出来たとしても、実用化はほぼ無理のはずだ。
まぁ、夢の中で見た建造物を再現しろと言うのも酷い話だが。
「……遠くからでも高いのは分かっていたが、ここまでとはな」
「だよな! 俺も最初見た時は驚いた! やはり
アグニ神がバベルを見上げる。
その眼差しはどこか慈しむようであり、まるで子供の成長を見守る親のような…………いや、神という存在にとっての我々人間は、子供そのものなのだろう。
この
文字通り、我々と神々では住んでいる次元が違うのだ。
「……行くのなら、早く行きましょう。出来るだけ、早い方が良い」
そしてアンタは何なんだ。
いや、本当に嫌なら、戻っても全然良いんだぞ?
今の俺は確かに子供だが、だからと言って世話を焼く義務も義理も無い。
俺に構うくらいなら、もっと他に有意義な事が出来るだろうに。
「む! すまんすまん! じゃあ行くぞ、こっちだ!」
アグニ神に追従し、塔の中へ入る。
すると、広がるのは大広間。周囲を見渡すまでもなく、様々な装備、種族の人間達が溢れている。
弓を担いだ人間、杖を持ったエルフ、大槌を背負ったドワーフであろう男……本当に多種多様だ。
ただ、共通してその顔は皆一様に暗い。
……この街に、何かがあったと見ていいだろう。
「えーと……この上だったよな!?」
「ええ、その通りです」
リオンさんの案内を受けつつ、階段を登ってゆく。
……ふむ、子供の体だと、かなり段差がキツイな。
まぁ、キツイだけで特に問題は無いんだが。
それに、成長すれば良いだけの話だ。
2階を通り越し、そのまま3階にまで登る。
しかし、3階から4階への階段が見えない。
であれば一体どうやって上がるのだと周囲を見渡してみれば、壁際の方に円形の台座の方が並んでいた。
そして、その台座の上はぽっかりと穴が空いている。
…………まさか、ここから先はエレベーターってか?
「で……この……これに乗れば良いんだったかな!?」
「はい。操作は任せて下さい……ほら、貴方も」
「……わかった」
半ば確信めいた予想を立てながら、円盤の上に乗ってみる。
そして、リオンさんが備え付けられた装置を操作すると、台座が浮遊し始めた。
……もう何でもアリだな、ファンタジーと言うものは。
いやまぁ、何でもアリだからファンタジーと言うわけだが。
「おお……」
しかし、思ったよりも快適だな。
揺れはほぼ無いし、壁にはまったステンドグラスも綺麗だ。
「お、おおー! こんなものもあるのか!」
「はい、私も最初に来た時は驚きました……しかし、貴方はあまり驚きませんね」
リオンさんが驚いたようににこちらを見る。
いや、どちらかと言うと懐疑か?
神でさえ驚いたのだ。常識的に考えて、驚かない方がおかしいだろう。
「……まぁ、ある程度想像は出来てたからな」
「そ、そうですか……すごいですね、最近の子供は……」
いや、俺が異常なだけだぞ。
……と言っても、ややこしいことになるだけだろうな。黙っておこう。
そんな俺達をよそに、エレベーターは滑らかに塔を登ってゆき、4階に到着する。
リオンさんに続き、エレベーターを降りてみれば、数々の武具が目に映る。
どうやら、目当ての階層に着いたらしい。
「一応、此処で降りましたが……神アグニ、予算はどれ程ですか?」
「200万はある! が! アイクの成長を考えて、10万から15万には抑えておきたいな!」
「そうですか、では……いえ、まずこの階層で、最上級を見ておくのも良いかもしれません」
「賛成だ! じゃあアイク、好きに見てまわってくれ! 変に触ったりしたら駄目だぞ!!」
「わかっている」
成程、階層ごとに武器の品質が分かれているのか。
そして、その中でもこの階層が最高品質だと。
確かに、その辺に飾られている武器をパッと見ただけでも、明らかに業物だとか、そのような類いに分類される代物だと言う事が分かる。
まぁ、武具に関してはずぶの素人なので、しっかりとした人が見れば、また違ったように見えるんだろうが。
「……ふむ」
しかし、この中にラグネル……とは言わないが、それっぽい剣はないものだろうか。
いや、あったところで買えはしないのだが。
現在、この階層で見た武具の中で最も安い物が、手甲の400万だった。
手甲のサイズでこれなのだから、ラグネル程の物となれば、何千万、何億と設定されていても、何らおかしくは無い。
事実、大剣や両手剣と言ったものは、どれもその位の値段だ。
ふむ……ラグネルはまだ遠い……か。
「む!! アイク! 何か良いものはあったか!」
「いや、どうやらここには無いらしい」
「むぅ! そうなのか! まぁ、仕方あるまい! そういうものだ!」
「では、そろそろ上に────」
「ちょっと! うるさいわよ!」
リオンさんが踵を返し、エレベーターの方に戻ろうとしたと同時に、後ろから叱咤の声が響いて来た。
どうやら、アグニ神の声が五月蝿かったようだ。
後ろを振り向いてみると、そこに居たのは大きい眼帯が特徴的な、赤髪の女性。
ただ、赤髪の女性とは言っても、先ほどのアリーゼさんとは違い、しっかりした大人と言う感じだ。落ち着きがある、と言うのだろうか。まぁ、今は怒っているわけだが。
「貴方たち、此処がどこだと……ってあら? アグニじゃない」
「む! へファイストスか!!」
「久しぶりね……と言うか、これはどう言う組み合わせなの? そこの子、アストレアのところの子よね?」
へファイストスと言うと……ん? へファイストス?
俺の記憶が正しければ、へファイストスは女神じゃなくて男神だったと思うんだが。
確か、アフロディーテと結婚したんだよな?
……まぁ、神だから性転換くらい出来るか。
「いや何! さっきアリーゼちゃん達と話をしてな! コイツとダンジョンに潜ってもらう事になったんだ!」
「へぇ、この
「…………いえ、神へファイストス。その子はヒューマンです」
「ふーん、ヒューマン……え!? ヒューマン!?」
へファイストス神がまるで手本のような二度見でこちらを見る。
そして、しばらく呆然としていたかと思うと、突然凄い剣幕でこちらに詰め寄り、まじまじと俺を観察し始めた。
……いや、怖いんだが。美人な分、余計に。
「……ねぇ、今の、本当なの?」
「本当かどうかはわからんが、少なくとも、俺はそのパルゥムとやらを知らん」
「……嘘は、ついてないわね。
ふむ、『ついてなさそう』じゃなくて『ついてない』か。
彼女の言動から推測するに、どうやら彼女は人の嘘を見抜けるらしい。
まぁ、へファイストス神ならそのくらい出来たところで、何らおかしくは無いな。
「そうなると、君は今何歳なの?」
「8か9だ」
「8か9……まぁ、ロキのところの子も同じくらいの年齢だけど……」
「ああ、【戦姫】ですか……」
「ええ」
ほう。俺と同年代が居るのか。
是非とも会ってみたいところだが、しかし、ロキとなると大分心配だ。
会いに行ったら殺されたりしないだろうか。
「うーん……ねぇ、君」
へファイストス神が屈み、俺に視線を合わせながら問いかけて来る。
「なんだ」
「なんで、冒険者になりたいと思ったのかしら?」
「俺が、
「……そう」
俺がそう答えると、へファイストス神は沈黙し、何やら微笑みながら立ち上がる。
……なんだ? やはりこの台詞って人に効くものなのか?
「じゃあ、私は止めないけれど……ねぇ、欲しい武器って、あったりする?」
「欲しい武器?」
「ええ、欲しい武器」
再びへファイストス神が俺に目線を合わせたと思えば、そんなことを聞いて来た。
……ふむ、欲しい武器となるとラグネル一択だが……ただラグネルと言っても伝わらないよな。
「……剣だな。金色の剣。両手用だ」
「……へぇ……」
若干驚いたような表情を見せた後、指に手を当て、考え込むような仕草を見せる。
冷や汗が額に浮かんできた。……何か、拙いことでも言っただろうか。
「そうね…………12歳」
「12歳? 12歳がなんだ」
「そう、12歳になった時、貴方が生きていたなら、私がその剣を打ってあげるわ。勿論、相応の対価は貰うけれど」
「……いいのか?」
へファイストス神が直接打った武器って、だいぶヤバい代物だと思うんだが。
所謂、神造武具ってやつだろう?
まぁ、作ってくれると言うのであれば、遠慮する理由なんて無いが。
「ええ。生きていたら、の話だけれど」
「願ってもない事だ。よろしく頼む」
「任せて頂戴。とびっきりの物を用意してあげるわ」
そう言うと、へファイストス神は奥の方へ戻って行った。
「やったな!! アイク!!」
「うおっ!?」
その後ろ姿を見送っていると、後ろから背中を叩かれる。
何すんだと言う気持ちを込めて振り向いて見れば、やはりそこに居たのは目を輝かせたアグニ神。
リオンさんは、何やら後ろの方で驚いている。
「あのヘファイストスが直接武器を打ってくれるなんて、まず無いぞ! これは生き残らなくちゃならない理由ができたな!」
「……ええ、本当に、驚きです……」
お、おおう……まさか、約束一つ取り付けるだけで、ここまで感動されるとは……
いや、まぁ、うん、悪い気はしないな。
しかし、約束を果たす為には、生き残る事が必須事項。
何と言っても、俺のラグネルがかかっているのだ。反故にするわけにはいかない。
此処で死んだらどうなるかは解らんが、やはりそれでも万全の対策をした上で、慎重に行動することを心掛けよう。
その為にも、先ずは装備を整えなければならない。
さて、では、次の階層に行くとしよう。
感想欄でなんか「アイクの恋人は戦場と剣なんだよ!」派と「もうヒロインにしてしまえ!」派が戦争を繰り広げているが、まだ俺は決める事ができていない!
取り敢えず、感想と評価はくれ!