ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
薄暗いダンジョンの中を、特に何か起こるわけでも無く進んで行く。
遠くから多少の戦闘の音が聞こえはするが、少なくとも俺達は今のところ戦闘を行っていない。
正直なところ、かなり暇だ。
だがしかし、決して気を緩めたりはしない。
こう言うのは、気を緩めた瞬間に突然来るものなのだ。
そんな風に自分に言い聞かせながら歩いていると、突然リオンさんが立ち止まった。
突然だったのでぶつかりそうなったが、何とか体を後ろにそらして耐える。
「……アイク、あれを見てください」
そのおかげでバランスを崩し、倒れそうになる俺をよそに、リオンさんが壁に向かって指を差した。
バランスを立て直してからそちら見てみるが、パッと見だけではよく解らない。
しかし、目を凝らしてよく見てみると、段々と壁に亀裂が入っていくのが見えた。
「……なんだ、あれは」
「見ていれば、わかります」
何が何だかわからないまま、言われるがままにその壁を見続ける。
すると、すぐに壁の罅は大きくなり、弾けたかと思えば、犬のような二本足の怪物が2匹、飛び出して来た。
人型の犬となると、所謂コボルトとか言うやつだろう。
「あれは」
「見ましたか。……あれが、モンスターの誕生です」
「……モンスターの、誕生……」
そうか、ああいう風にモンスターは補充されるのか。
よくゲームとかで『このモンスターどっから湧いてるんだろ』とか思うようなことはあったが、こう言うことだったらしい。
リオンさんの言動から察するに、恐らく無限湧きだろうし…ふむ、であれば、経験値に困る事は無さそうだ。
「……ッ!」
だからそれ止めろって。
一体、何にそんな一々と……はぁ……まぁ良い。
「で。俺はあれを倒せば良いのか?」
「……え、ええ。先ずは私に、貴方なりの戦闘を見せて下さい」
「ああ、わかった……ふッ!」
地面を蹴り、コボルト達目掛けて走り出す。
距離は、目測にして約12歩と言ったところだ。
『『グルァッ!?』』
まず、最初の3歩で、足音を聞きつけた連中がこちらを認識する。
続く3歩。連中がこちらに体を向ける。
そこから更に3歩進めば、連中が牙を剥き出しながら迫って来た。
これで、9歩。
残りの3歩分で、剣を引き、一瞬溜めてから────
「ハァッ!!!」
裂帛の気合いで以て、渾身の踏み込みと共に、連中の首目掛けて剣を横薙ぎに振るう。
スマブラで言う横強。振り抜きの動作だ。
自分の予想以上に上手く放たれたその斬撃は、狙い通りに首へと吸い込まれて行く。
「うッ!?」
しかし、その一撃は失敗に終わった。
ゴキリと言う不気味な感覚と共に、ガクンと剣に抵抗がかかる。
見てみれば、剣がコボルトの首の半ばほどで止まっているのが見えた。
膂力不足だ。子供の体躯では、骨までは折れども、切断は難しかったらしい。
だが、その事に気付いた瞬間には、もう既にコボルトの間合いの中。
掲げられた鋭い爪が、正に俺へと振り下ろされようとしていた。
「ッ!」
咄嗟に足を踏み出し、コボルトの爪の下を潜る形で、何とか回避。
そのまま、攻撃の勢いが余り、たたらを踏むコボルトの背後へ、蹴りを入れる。
『グァブッ!?』
防ぎようのない背後からの攻撃に、顔面から転倒するコボルト。
鼻を抑えて悶える様子は少し哀れであるが、今は殺し合いの真っ只中だ。
起き上がる前に、今度はサッカーの要領で首を蹴り飛ばす。
『グ』
首が明後日の方向を向いたコボルトは、血の泡を吹いて絶命した。
……ふむ、勝ちはしたが、辛勝と言ったところか。
あと一瞬、判断が遅れていたら危なかった。
さて、当面の課題は分かったが、リオンさんに戦闘の評価を聞くとしよう。
やはり、自己分析だけでは足りないところもあるからな。
聞けるのなら、その道の専門家に聞いた方が、圧倒的に良いはずだ。
「……どうだった」
「……え、ああ、そうですね……まず、最初の戦闘にしては、素晴らしいの一言に尽きます」
「世辞は良い。率直な意見をくれ」
「いえ。本当に素晴らしかったですから。特に、最初の一撃は見事でした。狙い通りにこそなりませんでしたが、動きはほぼ完璧。……どこかで、学んだのですか?」
「……ふむ……」
やはり、あれは良い動きだったのか。流石はグレイル流剣術と言ったところだ。
……しかし、どこで習ったと聞かれても、どう答えたものか。
馬鹿正直にスマブラだなんて答えたところで、分からないよな。
……見た目はアイクだし、
「……親父の技だ」
「…………そう、ですか。さぞ、立派な御仁だったのでしょうね」
「ああ」
よくわかるじゃないか。正しくその通り。
グレイルは最高に立派な父親で、素晴らしい団長だった。
あれほどの人を見つける事は、至難を極めるだろう。
「話を、戻しましょうか。……失敗した後のあの回避と、攻撃についてですが、あれも見事です。剣を手放す判断は、早々出来るものでは無い」
「そうか」
「しかし、毎回これと同じようにやる訳にもいきません。危険すぎるし、何よりあれでは剣がすぐに壊れてしまう。今の貴方は斬ることではなく、突くことを意識した方が良い。そちらの方がより強く、効率的だ」
「わかった」
……ふむ、言われてみれば、確かにそうだ。
元来、グレイル流剣術はこう言った細い剣ではなく、それこそラグネルやら何やらと言うような、太く頑丈な剣で相手を叩き斬る術。
そもそも、この剣が戦い方に合っていないのだ。
であれば、今のところはリオンさんが言うように、突きを主体にして戦うべきだろう。
……いやしかし、アイク志望の身としては、やっぱり豪快に戦いたいんだよなぁ……
だが、今の俺では腕力が足りないし……
「では、次です」
リオンさんが俺の隣を通り抜け、コボルトの死体の方へと近づいて行く。
「…………なぁ」
「……どうかしましたか?」
「俺は力が欲しい。どうすれば良い」
「……ッ!」
はいはい、いつものいつもの。
もうあれだ。この人はこう言うものだと認識しよう。
「……急ぐ必要は、ありません。貴方は、まだ子供なのですから」
「いや、そうもいかん。俺が
「貴方は!!」
俺の言葉を遮り、リオンさんが震えた声で怒鳴る。
「貴方は、まだ子供なのですよ!? 急ぐ必要など何一つない!! いくら急いだところで、その体ではただ死ぬだけだ!!」
リオンさんがこちらを振り向く。
その瞳に、涙が溜まっているのが見えた。
「先程の戦いも危なかった! ほんの一瞬、あと一瞬回避が遅れていたら、貴方はあの爪に貫かれていた!!」
「……だから、俺は力が欲しいと言っている」
「ッ……! 何故ですか……何故、わかってくれないのです……!」
「わかるも何も、今のでわかったから言っているんだ」
「なッ……」
「今の俺には、必要最低限の力も無い。だから、今の戦いでも死にかけた。
せめて、両手剣を扱えるくらいには腕力が欲しい。
アイクのように片手でと言うのは当分無理だろうが、きちんと両手で扱う分の力ならばすぐに手に入るだろう。
だってファンタジーだし。レベルなんて概念もあったし。
「………………そう、ですか」
リオンさんは下を向き、黙り込んだかと思うと、2匹のコボルトの胸の辺りから紫色の水晶を引き摺り出した。
すると、コボルトの体が灰になり、崩れ落ちる。どうやら、あれがモンスターのコア的なやつだったらしい。
そしてリオンさんはその水晶を持ったまま、入り口の方へ戻り始めた。
「……地上に戻りましょう。私が、直接相手をします。そちらの方が、効率が良い」
「わかった」
何事かと思ったが、どうやらそう言うことだったらしい。
まさに願ってもいないことだ。格上との戦いは、絶対に俺の糧となってくれるはず。
リオンさんの後に続き、地上へと戻って行く。
さて、実に楽しみだ。
日刊一位ありがとう!
なんか最初の村の剣はどうしたんだってコメントが来るが、あれはただの導入用の剣だ!
最後にぶん投げた時にぶっ壊れたぞ!
と言うわけで、評価と感想、くれ!