ダンジョンで蒼炎の勇者を目指すのは間違っているだろうか? 作:かい
「……やっとか……」
「ええ、やっとです……こんなことになるのなら、アグニ神からホームの位置を聞いておけば良かった」
既に日が完全に落ち、辺りも真っ暗になった頃、ようやく俺は記憶と一致する店の看板に出会う事ができた。
……いや、この看板覚えてて本当に良かった。
危うく一生この街を彷徨うことになるところだったぞ。
「……すまんな、助かった。模擬戦のも兼ねて、今度何か礼は用意しよう」
「……いえ、それには及びません。当然のことをしたまでですので」
長い時間連れ回してしまったリオンさんに、感謝を込めて頭を下げる。
本当にお世話になったので、後日何かお礼がしたかったのだが、しかし、リオンさんは涼やかな声できっぱりとそれを断る。
……まぁ、大分正義感とかは強そうな人だからな。
実際にこれが当然の事だと思っているのだろう。
……お礼はアリーゼさんから、間接的にリオンさんに渡して貰うか。
「そうか……じゃあ、これで失礼しよう。予定が空いたようだったら、その都度伝えてくれ」
「ええ、わかりました……では……ああ、そうだった」
「ん?」
リオンさんと別れ、路地の中に入ろうとした時、何やら思い出したような声が聞こえた。
振り向くと、リオンさんがこちらへ小走りで向かって来るのが見える。
どうにも、何か伝え忘れたことがあったらしい。
「……何かあったのか」
「……アイク、明日ギルドへと向かったら、ローズと言う赤髪の
「言えば良いんだな?」
「はい、お願いします。ではまた」
それだけ言うと、リオンさんは颯爽に去って行った。
……さて、アドバイザーとは何だろうか。
字面から推測すれば、何かしらのアドバイスをくれる人なのだろうが……もしかしてアレか? 本来のチュートリアル役の人か?
まぁ確かに、俺は運が良かったから
普通ならそうもいかないから、アドバイザーって人に色々教えて貰うのだろう。
……まぁそれは良いとして、さっさとアグニ神の家にまで行くとしよう。
どれだったか……確か、この家の隣だったはず────
「よく帰って来たね! さ! 中へお入り!!」
「うおぅ!?」
ドアをノックしようとした瞬間、勢いよく扉が開かれ、アグニ神が飛び出して来た。
あまりにも突然のことだったので、驚いて尻餅をついてしまった。
尾てい骨が痛ぇ。模擬戦の時ほどじゃないけど。
……しかし、アグニ神は何故俺が帰って来たとわかったのだろうか。
やはり、神ともなれば足音やら気配やらで、個人を特定出来たりするのだろうか?
もしくは恩恵とやらを授けた者にはGPS的な何かが作動するとか、そんな感じかな?
……まぁ、どっちでも良いか。
ファンタジーだし、どっちだったとしても何ら不思議じゃないからな。
取り敢えず、そう言うものとして認識しておこう。
「……あー……失礼する」
立ち上がり、家の中に入ろうとする。
すると、何故かアグニ神が俺の前に立って、玄関を塞いだ。
「……どうした」
「『ただいま』だ!!」
……成程。つまりそう言うことらしい。
「……ただいま」
「うむ!!」
アグニ神と共に、アグニの家改め、自宅の中に入る。
……しかし、アストレア神の館はちょっとレベルが違いすぎてアレだったが、こう言う普通の民家を見てみると、やはり文明レベルの違いが如実に分かるな。
机とかベッドとか、質感からして全く違う。
なんかガサガサしていると言うか、自然の形がまだ原型を残していると言うか……そんな感じだ。
「いや、よくぞ無事に帰って来てくれた! では、早速ステイタス更新だ!!」
「……ステータス更新?」
「ああ! ステイタス更新だ!! 上を脱いで、そこのベッドに横になってくれ!!」
取り敢えず、言われるがままに上を脱いで、ベッドに横たわる。
「さぁ! 行くよ!」
すると、アグニ神がまた俺の背中で何かをし始める。
恩恵を刻む時とほぼ同じ感じなのだが、ステータス更新となると何かが違うのだろう。
いや、何が違うのかはさっぱりわからないんだが。
「むむ! むむむむむむむ!!!」
そしてやはりアグニ神が最高に五月蝿い。
本当に頭が痛くなってくるので、もうちょっと静かにできないだろうか。
何だ? 火神だから熱苦しいってか? やかましいぞ?
「よし! 出たぞ!! これが今の君のステイタスだ!!」
そんな下らないことを考えているうちに、ステータス更新とやらを終えたらしい。
アグニ神が俺に羊皮氏を渡して来たので、寝転がりながら中身を覗く。
さて、ステータス更新とは、一体どう言う……?
アイク
Lv1
力:I 0 → I 12
耐久:I 0 → I 49
器用:I 0 → I 10
敏捷:I 0 → I 1
魔力:I 0 → I 0
魔法
【】
【】
【】
スキル
【
・望む方向に成長する。
・対象が明瞭である限り常時発動。
……成程、こう言うシステムか。
しかし、これは……もしかしなくとも勝ったか?
「結構耐久が伸びてるな! 相当にダメージを喰らったのか!?」
「ああ……まぁ、そうだな……なぁ、アグニ神。これはつまり、努力した事柄に対応する値が伸びると言う事で、良いのか?」
「ああ! そうだ! 力を使えば使うだけ【力】が! ダメージを受ければ受けるだけ【耐久】が! 走れば走るだけ【敏捷】が伸びるぞ!!」
「……成程な」
ふむ、これは勝ったな。(確信)
つまりこれアレだろう? 休養とか栄養バランスとか、そんなの一切考えなくても、動けば動くだけ勝手に強くなって行く感じだろう?
しかもこれ、筋トレとは違って鍛えた部位とかも関係なさそうだし、余計なこと考えずにただ動くだけで良いとか、最高じゃないか。
よし、じゃあアレだ。明日はダンジョンに行ったら、力をメインに鍛えよう。
取り敢えず、出会った敵に片っ端から全力で突きをお見舞いすれば、かなり伸びるはずだ。
いや、好きな数値を好きなだけ伸ばせるアイクとか最強だろ、マジで。
「よし! ステイタス更新も終えたところで、ご飯にしようか!」
っと、飯か。
まぁ、細かく考えなくて良いとは言え、動くためにはどうしても栄養が要るからな。
……しかし、夢で食う飯とは、一体どんな感じになるのだろうか。
味がしないのか、知っている味に変換されるのか、訳の分からん味になるのか……かなり気になるところではある。
「さぁ! 召し上がれ!!」
服を着つつ食卓に着き、夢内初の食事を楽しみにしていると、アグニ神が奥の方から皿を持って来た。
どうやら、台所は向こうの方にあるらしい。
まぁ、家の構造は後で改めて把握するとして、一体どんな料理が……ん?
「……コロッケ?」
「ジャガ丸くんだ!!!」
ジャガ丸……まぁ、名前は違うが多分コロッケだな。
名前からしても、確実にジャガイモは使っているだろうし。
この衣の感じからしても、確実に揚げているだろうし。
……しかし、これまた炭水化物と油の化物みたいな料理だな。
だが、これならばエネルギーとしては申し分無いし、サイズ的に携行食としても使える。
栄養素を特に気にする必要も無い現状では、最高の料理だろう。
「うむ! 美味い!!!」
そんな風にコロッケ……もとい、ジャガ丸を評価していると、アグニ神はもう既に食べ始めていた。
食前の挨拶らしきものが何も聞こえなかったので、どうやら、この街にいただきますの概念は無いらしい。
まぁ異国だし、当然と言えば当然か。
「……いただきます」
ジャガ丸くんを手で掴み、一口齧って見る。
……うん、ソース無しのコロッケ。
だが、どうやらかなり塩気が効いている。
かなりサクサク食べる事ができる。やはり、携行食として素晴らしい活躍が見込めそうだ。
と言うか、元々携行食として作られたという説まであるぞ、これ。
「ふぅ! 食べたな!!!」
「……ああ。美味かった」
「それは良かった!! よし! では寝よう!!」
そう言うと、アグニ神はさっさとベッドに入ってしまった。
…………ん?
「…………俺は?」
そこ以外の寝る場所が見つからないんですが、俺は何処なんですかね?
「ここだ!!」
ポンポンと自分の横を叩くアグニ神。
……確実に子供扱いされているな。
俺、もうこのくらいの年には一人で寝てたんだが……まぁ、いいか。
鎧の類いを外してから、アグニ神の隣に寝そべる。
…………うわぁ、すげぇあったかい。しかもめっちゃ良い匂い。
なんかこれに安心感を感じてしまうのが少し癪だが、取り敢えず今は眠────
「よし! じゃあおやすみ!!! スヤァ!!!!」
……これ、寝れるだろうか。
Q:これリューさん一瞬で追い抜かれるんじゃね?
A:何のための曇らせタグだと思う?
そういうわけだ!!
そんなわけで評価と感想、くれ!!