南方で晴風メンバーがミーナの歓迎会をしている頃。日本本土の横須賀にある病院では……
「ーーーでは、晴風に発砲したにはなぜですか?」
「それは……」
「一歩間違えれば死傷者も出していたと思われるのに……」
と、ブルーマーメイドの隊員に色々と質問を受けていた。
「それが……覚えていないんです。…なぜこのような事をしたのか……」
「本当に分からないのですか?」
そう言っていると、病室のドアがノックされ中に真霜が入って来た。すると真霜は…
「ごめんなさい、ちょっと二人だけにしてもらってもいい?」
と言って中で古庄に聞いて、隊員を退室させた。
「……大丈夫ですか古庄先輩?随分と長い間海水に浸かってたみたいですけど……」
「後輩に心配をかけるなんて情けないわね。ありがとう」
そう言って真霜は腰をかけると古庄に話しかけた。
「すいません、調書が完成するまでここにいてもらっていいですか?」
そう答え、事実上の軟禁をすると言う報告に古庄は納得していた。
「生徒に向かって発砲したのに思い出せないなんて自分に腹が立つわね…」
古庄はこの件について責任を取れ、といわれたら教官を辞職するつもりだった。
「晴風は大丈夫?」
と古庄が聞いたので真霜は答える。
「はい、晴風の方はアメリカの留学艦が真っ先に保護をしてくれたようです」
「そう、私からも有難うと伝えてもらって良いかしら?」
「分かりました、古庄先輩」
そう言っていると、
ピピピッ!
と、真霜の携帯が鳴り。それを見た真霜は『これ差し入れです。食べていてください』と言って足早に部屋を出ていった。
同じ頃。モンタナた晴風の停泊する場所に近い場所では、東舞校所属の艦艇が武蔵を捉えた。
「……武蔵、安定して巡航中ですね」
東舞校教官艦旗艦あおつきでは副官が報告をした。
「皆、無事なら良いが…」
すると、接近するあきづき型駆逐艦に向けて主砲を旋回した。
「?」
すると突如、武蔵は警告なしに発砲をした。
「っ!?撃って来ました!!」
「何!?どう言う事だ!一体……」
直後に武蔵の46cm砲弾が着弾し、船体全体が大きく揺れる。
「四番艦から通信!機関部に被弾、航行不能!繰り替えす!機関部に被弾!航行不能!!」
仰角を上げる武蔵に一隻が発光信号を送る。
「発光信号を送っていますが、応答ありません!!」
報告を受け、東舞校教頭は困惑する。
「我々を脅威と誤解しているのか……?二番艦は接近し、音声で呼び掛けてくれ!!」
しかし、混乱する状況下で教頭は指示を出す。接近したあきづき型の艦に取り付けられた大型スピーカーから教頭の声が響く。
『武蔵の生徒諸君。我々は東舞校の教員だ。君達を保護する為に来ている。速やかに停船し、指示に従って……』ドドドォォン!!
音声をかき消すように武蔵の副砲である60口径15.5cm三連装砲が発射される。
その砲撃で接近していた二番艦の真横に着弾し、一発は艦首付近に被弾。浸水が起こる。
「放水作業、急げ!!」
これまでに二隻が被弾し、内一隻は航行が出来なくなった。その結果や、武蔵の戦闘力を鑑み、教頭はある決断を下す。
「……攻撃を辞めさせよう。……どこかに穴を開けて傾斜させれば。砲は使えなくなる」
大和型戦艦の46cm砲塔はその駆逐艦並みの重さ故に船体傾斜が五度まで広がると砲旋回が出来なくなる欠点があった。教頭はその欠点を利用しようとした。しかし……
「生徒の艦を……撃つ事になります……!!」
副長が驚愕の色を見せる。相手は戦艦だが、乗っているのは女子高校生。生徒相手に攻撃するなんで前代未聞だった。
「砲を撃てなくしてから……生徒を保護する…!」
教頭の決断に副長もそれが現状の最善策であると判断し、了承した。
「了解……対水上戦闘用意!」
副長が戦闘命令を出し、艦隊は戦闘態勢に移行する。
『対水上戦闘用意!』
『主砲、配置良し』
次々と報告が上がり、戦闘体制が整った。
「各部配置良し、非常閉鎖良し。対水上戦闘用意、用意良し!」
その間も絶えず武蔵からの砲撃は続き、艦隊の一隻に被弾する。
「三番艦被弾!!」
報告が上がるも、教頭はそのまま攻撃を指示した。
「対水上戦闘!噴進魚雷、攻撃始め!!」
「噴進魚雷、発射始め!」
その直後、あきづき型駆逐艦の前甲板にあるVLSから上空に煙を上げながら噴進魚雷が各艦一発ずつ発射される。
発射された噴進魚雷は空中で分離、海面に着水した短魚雷が武蔵に一直線に向かった。
ドドドドォォォン‼︎
計七本の魚雷が命中し、水柱を上げる。
「命中しました!目標……速力変わらず!主砲動いています!!」
「演習弾では無理か…!!」
するとお返しと言わんばかりに主砲が発射され、艦隊に襲いかった。
武蔵と東舞校艦内が戦闘を行っている頃、ミーナの歓迎会を開いていた晴風では……
「ミーナさん、もしかしてあの映画シリーズ全部見たんですか?」
「見たぞ」
「私、四作目が好きで!!」
「おおぉ!!あれかあれはええのぅ~」
納紗とミーナがまさかの同じ趣味を持っていた事を知り、すっかり意気投合をしていた。そんな二人を他所に、甲板の端では明乃とサクラが晴風の柵に乗っかりながら話していた。
「懐かしいね……あの頃が…」
「うん……また、どこか一緒に行きたいね」
そう言うと明乃はしまっていたロケットの蓋を開ける。そこには明乃ともえかが肩を組んでいて、その上から乗っかる様に写真に映り込むサクラの姿がおり、その更に後ろには大和が映っていた。その写真を見てサクラも同じように銅色のロケットを出すと、同じ写真の入ったロケットを見せていた。
「そうね…また一緒に……」
と言い、続きを言おうとした時だった。
キィィィイイン!!『艦長!学校から緊急電です!!』
今までずっと船内に篭っていた八木が報告をした。
その報告を聞き、サクラは晴風を飛び出し、モンタナに緊急で戻って行った。
「ーーー増援八隻到着。陣形、整いました!!」
あれから日も暮れ始め、夕刻になった。艦隊は武蔵からの砲撃を避けつつも、攻撃を行っていた。増援が到着し、東舞校艦隊はこれで総勢一四隻となった。
攻撃の質で勝る武蔵に対し、艦隊は噴進魚雷の本体の運用方法である飽和攻撃を行おうとしていた。
「凄い……」
「流石は優等生が乗るだけあって動きが綺麗だ……」
学校からの指示を聞き、該当海域に到着した晴風とモンタナはその光景を眺め、思わず唖然となっていた。
艦橋が静まり返る中、サクラは大声で指示を出す。
「こちらも武蔵の砲火が来る可能性がある!対水上戦闘用意!」
「た、対水上戦闘用意!各員配置につけ!!」
「学校からの指示は交戦を避けつつ、武蔵の監視!艦を武蔵の左舷に!面〜舵!」
「宜候!面舵!」
船体は晴風と挟み込む形で動いた。展開する途中、モンタナの全ての砲門は常に武蔵を狙っていた。
「ヘリコプターは直ちに発艦し、ホワイトドルフィンの救援に迎え!!」
『了解』
サクラは指示を飛ばし、戦闘区域にヘリコプターを飛ばした。
モンタナでヘリコプターの発艦準備が行われている頃、東舞校艦隊貴艦あおつきでは教頭が汗を掻きながら命令する。
「何としても足を止めなければ……!噴進魚雷、攻撃はじめ!!」
するとあおつきのVLSの発射口が開き、噴進魚雷が発射されるがその全てが滅茶苦茶な方向に飛んで行く。
「何!?」
「教頭!増援艦隊との通信が途絶しました!!データリンクも止まっています!!」
突如起こった通信途絶に教頭は唖然としてしまう。
「バカな…!!一体何が…「着弾します!!」ぬぁああ!!」
一瞬の混乱の隙に武蔵の砲弾が旗艦付近に着弾、航行不能に陥る。これで東舞校艦隊は全滅、全ての艦艇が航行不能になっていた。
『東舞校艦隊、全艦航行不能!!』
「嘘でしょ……」
「これが武蔵の力……」
一四隻全てが航行不能に陥った事実に驚愕せざるを得なかった。ヘリコプターからの報告を聞き、サクラは武蔵を見ながら重い口を開く。
「……主砲、模擬弾装填」
「艦長!?」
突然の指示に驚愕する他全員。するとサクラは武蔵を見ながら言う。
「武蔵をここで足止めする。主砲、発射用意!」
「ま、待ってください!!相手は学生艦…それも……日本の学生艦です!!もし怪我人が出れば…国際問題に……」
エリーが思わず異論を述べるとサクラは通信員に連絡する。
「ええ、だからこそ武蔵と同等の火力を持つモンタナが相手をしなければならない……」
「「「………」」」
サクラの意見に全員がこの艦艇が造られた来歴を思い返す。
モンタナ級戦艦は大和型戦艦が完成した後。46cmという破格の砲口径に狂乱したアメリカ政府が18インチの砲撃に耐えうり、尚且つ応戦できるよう設計された戦艦だ。その為装甲も18インチ砲弾を弾き返せるように設計されていた。
50口径16インチ砲一二門の火力は世間一般的には大和型の45口径46cm九門に負けず劣らずの火力があると言われている。
武蔵の主砲がモンタナに指向する中、艦橋要員は決断する。
「……分かりました。横須賀女子海洋学校に連絡!戦闘許可を取って!!」
「主砲、砲撃用意!弾種模擬弾、用弾始め!目標、武蔵主砲塔!」
もえかが乗っている武蔵。しかし、ここで躊躇しては後々に面倒になる。サクラは生徒達に怪我が無いように祈りながら返答を待っていた。すると、通信員から報告が入る。
『……来ました!戦闘許可命令です!!』
「よし、主砲発射!目標、武蔵の全砲塔!撃てぇ!!」
サクラが叫ぶと艦全体を衝撃が走る。砲撃をした後、ケイリーが嘆くように言う。
「クソッ、こうなるんだったらトマホークかハープーンを持ってこればよかった……!!」
「そもそも使えないから無理ですよ」
そう言いながらケイリーとエマは艦橋下に設置されている四角い箱を見ていた。
そこにあるのはMk.143装甲ボックスランチャーと呼ばれる四連装のミサイル発射システムだった。艦橋下に二つ、後部艦橋下に四つ。計六個、二四発のミサイルを格納できるそれは現在使用不可能だった。理由はモンタナが日本に出航するまでにシステム調整が間に合わなかったのだ。その為、装甲ボックスランチャーの中には何も入っておらず、現在は空っぽだ。中にはアメリカが開発した対艦用ミサイル『ハープーン』や巡航ミサイル『トマホーク』が搭載可能だった。
ケイリーが悪態を吐いているとヘリコプターから通信が入る。
『こちらロングボウ1。晴風からスキッパーの発進を確認しました』
「なんですって!?……誰が乗っているの?」
あらかた予想できたが、報告を聞き頭を抱える。
『……目視で確認!乗っているのは晴風艦長です!!』
「Shit!!やっぱりか……!!」
やりやがったと言う感情を抱くとルイーゼが報告する。
「艦長!このままでは砲撃に巻き込まれます!!」
「ええ、分かっている!ロングボウ1は晴風艦長を追いかけて!」
『了解!』
報告を聞き、サクラは的確に命令を出す。
「それと、晴風に通達!『晴風は東舞校艦隊の救援に迎え』と!!」
「了解!」
砲撃の最中に起こった出来事にモンタナでは緊張が走っていた。