雨と求めて霧の中に入ったモンタナと晴風だったが、嵐になってしまい。船体が揺れる中、晴風副長室で明乃はロケットを眺めながら雷が苦手な理由を話していた。すると……
『艦長!救難信号です!』
明乃の代わりに艦橋に上がった納紗が報告を入れた。
モンタナ艦橋ではサクラが飛び込み、報告を聞いた。
「何処からだ!?」
「しんばし商店街船です!!リバティー改造船で、全長135m、総トン数14000t。現在左に傾斜し、船内に浸水している模様!」
艦種と報告を聞き、サクラはさらに聞く。
「避難は?」
「現在、乗員乗客五五二名が避難しているとのことです」
「他の船は?」
「現状、我々が最も近いです」
報告を聞き、サクラは指示を飛ばす。
「ブルーマーメイドに連絡!それと、海難救助用意!!」
「艦長、ヘリコプター発進許可を求めます!!」
「ヘリコプターか……そっちの方が足が速いか……よし、直ちにヘリコプターを全機発艦!救助にあたれ。内火艇も準備出来次第発進させろ!」
「「「了解!!」」」
艦橋で指示を出すとサクラは聞く。
「ネル、しんばしと通信できる?」
「少々お待ち下さい」
そう言い、艦内電話を手に取り、通信をすると受話器をサクラに渡す。
「……出来ました。どうぞ」
そう言い、受話器を受け取ったサクラはしんばしの艦長と連絡を取る。
「こちらサンディエゴ海洋学校女子部所属、モンタナ艦長のサクラです」
『こちらしんばし。現在、ウルシー環礁ファラロップ南東13マイル地点で暗礁に乗り上げました。座礁時刻は一五分前、現在も船体中央部に亀裂が出来、そこから浸水しています』
「怪我人はいますか?」
『確認した限り十人ほど……』
その後、サクラはマニュアル通りに艦長に聞く。
「浸水はどのくらいですか?」
『左舷側の下部は浸水し、機関は停止……通信も照明の維持もいつ限界が来るかわかりません』
「艦内及び船外で火災は発生していますか?」
『まだ確認していません』
確認を終え、サクラは最後に艦長に言う。
「こちらも全速で向かっています。後10分ほどで新型高速飛行船が到着します。それまでに軽傷者を一ヶ所に集めてください」
『分かりました』
「艦長!バリスタ1が離陸します!!」
「艦長!ブルーマーメイドより通信!到着まで後四時間だそうです!」
通信を切り、サクラは的確に指示を出す。そしてサクラは周辺海域の地図を見ながらやや渋い顔をする。
「不味いな……」
「サクラ?」
救助部隊の指揮官として現場に赴くケイリーが準備をしながら聞く。
「ここの海域は水深が浅くてこの船では入れない」
「ではスキッパーも出しますか?」
「ええ、すぐに準備して」
「了解」
サクラの考えている事を予想しながらケイリーは準備を進めていた。
幸いにも先程の嵐は西に去って行ったので今の波は穏やかだった。
モンタナや晴風に先発してモンタナより発艦したHー2ヘリコプターのパイロット、アリス・マーキュリーは視界に座礁して転覆している艦影を捉えた。
「しんばし発見!これより救助作業に入ります」
「了解、ハーネス下ろします」
扉を開けると下では係員らしき人が指を指していた。
ハーネスが降ろされ、怪我人を救助用ハーネスに乗せてそのまま吊り上げる。そして収容限界まで載せると扉が閉じた。
「これより、モンタナに戻ります。治療の準備をお願いします」
そう言うとヘリコプターは反転し、急速にモンタナに戻って行った。
その様子を眺めていたしんばし艦長は、かつてないほど早く戻っていくHー2を見て呟いた。
「なんて速さだ……あれが例の新型飛行船か……」
SHー2が救助活動を行い、引き返している所を海上でボートを出していた真白達は見る。
「もう、救助活動が始まっているのか……」
「随分と大きい音じゃのう……」
ミーナは思わず耳を抑えたくなるほど大きかったヘリコプターを見て呟く。
「でも、すっごい速いよ!!」
「あ、また来ました」
そう言い、入れ替わる形でやって来たUHー1を見た。
「私たちも急ぐぞ」
「「はい!」」
それを見て真白はしんばしの救助活動を開始した。
しんばしまでギリギリまで接近したモンタナはそこで投錨すると内火艇やスキッパーを下ろしてケイリーを筆頭にしんばしに向かった。
「モンタナ副長、ケイリー・ウィアイムズです」
「晴風副長、宗谷真白です」
「機関部、船底部の避難は完了し、居住区の方も九割完了しています。損害状況は未だに正確なところは掴めておりません」
しんばしの船員は船の損害確認よりも乗員の避難を優先していた。
「分かりました。引き続き、避難活動を続行します」
「宜しくお願いします」
そう言うと後ろではUH−1がギリギリまで人を乗せてしんばしを離れて行った。
甲板で和住と青木が乗り込んできたモンタナの乗員から教えて貰いながら内火艇やボートに人を乗せていく。
「ボート繋いだ?」
「準備OK!」
「よし、すぐ出して!」
そう言うと木製ボートを内火艇と繋ぎ、しんばしからはなれる。
船内ではケイリーや真白達がライト片手に通路を歩いていた。しかし、船内を歩いていると異変を感じた。
「スプリンクラーが作動していない……故障か?」
「え!?じゃあ、非常用システムがやられちゃったってこと!?」
「そう言うことになるな」
と言ってしんばしの非常用システムが動いていないことに危機感を抱いた。
「それって……」
「この船って……」
「火災が起こると直ぐに火だるまね、さっさと避難させちゃおう」
と言って残っている人たちの避難を始めた。
救助活動が行われる中、モンタナCICにも続々と報告が入る。
「船体は左舷中央部から亀裂が入っており、既に第三区画は浸水している模様で、今後も破口からの浸水規模は大きくなると思われます」
「火災は?」
「現在まで、火災は確認されていませんが。非常用システムが動作不良を起こしています」
「晴風はしんばしと接舷し、救助者をそのまま晴風に収容する模様です」
「わかった。晴風にも暗礁に気を付けるように通達」
「了解」
続々と上がる報告にテキパキとサクラは指示を出す。
「艦長、医務室より怪我人の治療が完了したと報告が上がりました」
「了解、救助した人には温かいものと毛布を配って」
「はい!」
「それと、なるべく急いで動いて。全員晴風には乗せられないだろうから」
「了解しました!」
指示を出し、CICの空いた席に座るとふと思う。
「(艦長としてここに居なければならないけど……本当は目の前で直接指揮を取りたい……命を張っているクラスメイトがいると言うのに……)」
報告によると現在救助活動の指揮をとっているのが晴風副長だと言う。つまり明乃は艦橋に残っていると言う事だ。
「まぁ、これでミケちゃんも分かるだろうね……残された人の感情っていうのが……」
そう呟くとサクラは次の報告が来るのを待っていた。
「慌てないで!ゆっくりと進んで!」
「決して海に飛び込まないでください!!」
どんどん傾いていくしんばしの上で声を上げる。その先には内火艇や牽引されているボートに乗り込む人々。
船内ではケイリーが階段に最後の民間人を誘導していた。そして避難が終わろうとした時……
「あの…多聞丸がいないんです」
「えっ?」
「気がついたら傍にいなくて……」
一組の若夫婦らしき二人が家族がいないと言う。
「小さい子ですか?」
「「はい」」
「捜索していないのは第五区画……飲食店地区だ」
「よし!行こう!」
真白は若夫婦の言っていた子を探しに飲食店区域へと走っていた。
「多聞丸ちゃんは任せて!お二人は避難を!」
ミーナとケイリーは真白を追いかけ、多聞丸を捜しに行った。
「乗員の救助完了」
「ダイバー隊も帰還しました」
「了解……あとはブルーマーメイドの到着を待つだけか……」
サクラは一息吐こうとすると続報があった。
「艦長!現在しんばしで副長らが艦尾方向に捜索を開始したとの報告あり!」
「何ですって!」
報告を聞き、思わず持っていた無線機を手に取って叫ぶ。
「ケイリー!聞こえる!?」
『……はい、よく聞こえています』
通信をするとサクラは叫んだ。
「急いで!!傾斜が進んで沈むわ!!」
『りょ、了解!!』
多聞丸を探している真白は第五区画のコンビニの中にいた一匹の子猫を見つける。首にはローマ字で「TAMONMARU」と彫られた首輪をつけていた。夫婦の子とはこの子猫の事だったのだ。
真白はミーナとケイリーに多聞丸が見つかった事をトランシーバーで伝えると、多聞丸を連れて甲板に避難しようとする。
すると、通風孔から浸水した海水が溢れ、真白に迫った。
「艦長!しんばしが沈みます!!」
急激に転覆し始めたしんばしを見て見張り員が叫ぶ。
「晴風は!?」
「曳航縄を切って離脱しています!」
「救助隊は?!」
「副長とミーナさんは海に飛び込んで脱出しました……しかし、晴風の副長がまだ中に……」
「っ!!」
思わずサクラは真っ二つに折れて沈んでいくしんばしを見る。すると上空を飛ぶ飛行船を確認し、海上を猛スピードで疾走する影を見た。
「ブルーマーメイドです!!」
すると救助にきたブルーマーメイドはそのまま沈んだしんばしに向かい、残った真白を探しに向かった。
その頃ダクトを通っていた真白は胸元に救助した多門丸を入れると懐中電灯をつけて進んでいた、すると懐中電灯の電池が切れて灯が消えてしまった。
「うう、ついてない…………クソッ!」
と言って懐中電灯を上に叩きつけた。その音を聞き、新橋に乗り込んだブルーマーメイドは…
「何か叩くもの!なんでもいい!急いで!!」
と言ってハンマーで船体を叩き続けた。
そして真白は船底部に開けられた穴を通ってブルーマーメイドに救助された。
「そうか……救助されたのか……」
報告を聞き、サクラや頭にタオルを巻いていたケイリー達はホッとする。
「無事でよかった……」
そう思いながらサクラは艦橋から晴風の上で真白に抱きついていた明乃を見ていた。
「シロちゃぁぁぁぁん!よかった、無事で……」
「艦長…」
「よかった、心配したんだよ!」「大丈夫?」「よう行きとったの、我」
晴風に戻った真白は次々と明乃達から声をかけられる。
「ニャー」
「助かったにゃ~、よかったにゃ~」
「なんで、猫言葉になっとる?」
短い時間ながらも生死を共にした真白は多聞丸と共に生還を喜ぶ。すると、何故か彼女の口調が猫語になっていた。
「多聞丸。無事救助しました」
「ありがとうございます」
そう言い真白は夫婦に多聞丸を差し出すが……
「ニャー」
「多聞丸……」
多聞丸は真白の足元に擦り寄る。
「あの、よかったら…」
「面倒……みてもらえますか?」
「艦長……」
「いいんじゃないかな?」
真白は明乃に訊ねると、明乃はあっさりと了承した。
「……わかりました、引き取らせて頂きます」
こうして、晴風にまた一人メンバーが増えるのだった。避難民をブルーマーメイドに受け渡している途中、ブルーマーメイドから蒸留装置のパーツを貰い、モンタナから補給する形で真水確保もされていた。
その時、シアと美波の両名はブルーマーメイドの隊員に封筒と製作した抗体のサンプルを渡していた。
モンタナでもワクチンの生産は出来るが、量産には至らない。そこで本土に送って量産してもらう事にしていた。