ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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二〇話

トラック諸島近くにて比叡を捕捉したモンタナと晴風は作戦行動に移っていた。

現在、晴風・比叡・モンタナの順番で航行しており、比叡は前砲塔を晴風に、後部砲塔をモンタナに向けて撃っていた。

囮役を買って出た晴風ではけたたましく砲弾が着弾する警告音が鳴り響き、比叡の砲弾が着弾する。

避けるのは得意と言っていたが、近くで着弾した時の衝撃や音で知床は涙を流していた。

 

『比叡発砲!』

「ここらがかなり浅くなる……万理小路さん!海底までの報告を詳しくして!」

 

環礁地帯に入ったことを確認した明乃は指示を飛ばす。

 

『承知しました、ここから先はかなり浅くなっております』

 

すると機関室から問いかけがくる。

 

『おい、いつまで一杯なんでぇ!!そう長く持たせられねぇよ!!』

『油も馬鹿喰いしているんだけど!? 』

 

晴風自慢の高出力でも、長時間の全速運転。それも比叡の砲撃から逃れる為。回避行動をしながらでの全速運転では、そう長くは持たないと報告が入った。

 

「もとより航続距離は向こうが上ですし、こちらは無理な動きを続けていますからね…」

「次の手を打たんと…此方がやられる……」

 

機関室からの報告を聞き、かなり不利な状況であると納沙も感じている。すると真白は表情を強張らせながら言う。

 

「ここで止めるしか無いんじゃないか……?例え、比叡を沈める事になっても……」

「「「「!?」」」」

 

真白の衝撃的な意見に艦橋にいた全員が驚く。真白の意見を聞き、納紗は持っていたタブレットで比叡の諸元を確認する。

 

「比叡の舷側装甲は武蔵のおよそ半分……砲撃では無理ですが、魚雷なら可能です……」

 

すると西崎が魚雷と聞いて声を上げた。

 

「よっしゃ来た〜!来たよ私の時代!良いですよ!私が謹んで沈めさせて頂きます!!」

 

最も危険でブルマーに突き出した方が良さそうな発言をするが、真白は苦笑しながら言う。

 

「誰も沈めろとは言っていない。仮定の話で、あくまでも比喩表現だ」

「えぇ〜……」

 

そう言うと明らかに気を落とす西崎だった。すると明乃は比叡を見ながら西崎に言いつけるように言う。

 

「比叡に乗っているのは、うちらと同じ同級生なんだよ。もしものことがあったら……」

「しかし……このままでは……」

 

真白が晴風のことも鑑みながらそう言うと、明乃は言う。

 

「なんとかして、比叡を無傷で止めないと……」

「シュペーの時と同じ事をするのか?しかし、あの時ですら無理だったんだぞ」

 

そう言い、真白はシュペーのスクリューを撃ち抜いた時と同じ事をするのかと聞く。すると納紗が比叡に搭載されている副砲を見て二人に言った。

 

「比叡の副砲が両舷に七門ずつあります。此方が接近する前に蜂の巣ですね……」

 

そう言い、艦橋で比叡の対処方法を考えていると、艦橋下の海図室から勝田の声が聞こえてくる。

 

『あ〜、もう邪魔ぞな〜!』

 

そう言うと多聞丸の鳴き声と共に本来海図などを直接艦橋に渡す筒から多聞丸がスルッと出て来る。

 

『お前も邪魔〜』

 

そう言うと多聞丸の後に五十六が顔を覗かせるが、デブ猫の部類に入る五十六はそのままつっかえてしまった。

その様子を見て、明乃は閃いた。

 

「っ!比叡を…止められるかも……ココちゃん、例の海域のデータを見せて!!」

「はい、どうぞ」

 

納沙は現在、晴風が逃げ回っている海域のデータが記されたページが乗っているタブレットを明乃に差し出す。

 

「すごいね、これ」

 

そこには事細かく書かれた海流図や潮の満ち引きの時刻などがあった。

 

「データはより多くより新しくがモットーでして。個人的に収集していますから!」

「お主やるではないか」

「このへんでええとこ見せんともう舞台は回ってきませんけぇ」

「間尺に合わん仕事かもしれんなぁ」

 

こんな状況下でも任侠映画のセリフを吐く納沙とミーナだった。

 

「……」

 

そんな二人のやり取りをスルーしながら、明乃はジッとタブレットを見る。

 

「……これなら、いけるかも」

 

明乃は何か作戦を思いついたと思い、無線電話の受話器に手を伸ばした。

 

『岬艦長!無事!?』

「こっちは大丈夫……それよりサクちゃん。お願いできる?」

『ミケちゃん……何をするの?』

「さっき海図を見て思いついたの」

 

そう言うと明乃はサクラに作戦概要を伝える。

 

『ーーーそうね……それなら安全に比叡の足を止められる。でも、晴風も大丈夫なの?』

「うん、こっちは大丈夫。それよりも、モンタナの方が喫水が深いから注意して」

『……了解』

 

通信を切るとサクラはケイリーに肩を叩くと言った。

 

「……ケイリー、私は操艦に集中するから砲撃は任せる。通信は公開するから、状況に合わせて砲撃をして」

「了解」

 

そう言うとサクラは艦橋を出て行く。するとサクラは艦内電話で医務室に繋げた。

 

「シア、ワクチンって何本ある?」

『うーん……大体一クラス分はあるわ』

「了解……もしかするとすぐ使う事になるかもしれないから準備お願い」

『了解』

 

医務室のと通信を終え、サクラは今度艦内通信で連絡をする。

 

『比叡を停船させた後に艦内制圧を行う!手隙の者は強襲準備を始めろ!』

 

そう言うと主計科を中心としたメンバーはM3短機関銃や防弾チョッキやプロテクター、ヘルメット、ゴーグルを装備して強襲準備を始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

環礁海域を航行する晴風は座礁ポイントに辿り着く。

 

『比叡、第一ポイントへの誘導へ乗りました!』

「ここで座礁させれば沈めずに足を止められる……!」

 

野間の報告に明乃は一筋の汗を掻く。

明乃の考えた作戦はこの浅い環礁地帯を利用して比叡を座礁させる事だった。

モンタナの砲撃は比叡にダメージを与えられるので避けざるを得ない。それを利用しての事だった。

 

「比叡の左舷側に撃って!ただし、当てない様に」

「中々難しいねぇ〜」

 

モンタナ艦橋で、ケイリーとルイーザが話す。難しいと言いながらもちゃっかりと放った砲弾は比叡の左舷側スレスレに着弾し、六つの水柱が比叡の真横に綺麗に上がる。しかし比叡は晴風を追いかける。

 

『比叡、第一ポイントに誘導しました!』

 

シルフの報告にサクラは射撃指揮所上の見張り台から機関室に通信をする。

 

「機関長、バラスト排水」

『了解!だが……これ以上バラスト排水すると主砲が撃てんくなるよ?』

「大丈夫」

 

こっちが座礁する方がよっぽど問題だ。主砲が撃てなくなっても副砲で射撃すればいい。とにかく撃てるだけ撃って比叡を座礁させる必要があった。

 

「主砲、撃てるまで撃って!副砲、機関砲、撃てる場所から射撃開始!」

 

ケイリーが艦橋で叫び、副砲群の射撃が始まる。その様子を眺めながらサクラは内心冷や汗を掻いていた。

 

 

 

 

 

比叡の砲撃を受けている晴風では明乃が艦橋から身を乗り出して片手に双眼鏡を持って比叡を見ていた。

 

『右舷に着弾!』

「と~りか~じ!」

『と~りか~じ!』

 

野間の報告を聞き、艦橋のハッチを開けて明乃は比叡を見ながら指示を飛ばし、寺内正道中佐のような行動をしていた。

 

「もど~せ~!」

『もど~せ~!』

 

明乃の指示を行い、真白が復唱。そして知床に伝えられる。そして比叡の砲弾は晴風の右舷後方に着弾する。

 

「シロちゃん、砲雷撃の指示。お願い!」

「分かった!!」

 

明乃の指示を聞き、真白は西崎に目標を伝える。

 

「戦闘。右、砲雷同時線。発射雷数二。比叡の左舷を狙え」

 

真白は西崎に雷撃の指示を出す。

 

「でも、あくまでも目的は比叡を座礁させる事、比叡に当てないように。それと、後方にいるモンタナにも当たらないように」

「なかなか、難しいねぇ〜」

 

そう言いつつも嬉しそうな声が漏れている。

 

「主砲、抜けないから当てるつもりで撃っていい。ただし、左舷よりに着弾させて少しでも右に誘導して!」

「うぃ」

「よし…攻撃始め~!」

 

晴風の二番・三番砲塔が火を吹く。

 

放たれた砲弾は比叡の左舷スレスレを着弾する。

比叡もお返しと言わんばかりに砲弾を撃ち返す。

 

『既定のコースを進んでください。海底に障害物はありません』

 

万里子小路が報告を入れ、納紗がタブレットを見ながら鈴に指示を出す。

 

「勝負どころじゃあ…狙うもんより狙われるもんの方が強いけぇ……」

「後がないんじゃあ!!」

 

納沙とミーナは台詞どころか表情も任侠の様な顔をしていた。

 

「あ、当たりそう~……」

 

後方から降って来る比叡の砲弾に震えながら舵を握る知床。

 

「魚雷、左右に一発ずつ!」

「頼むから通ってよ〜!!」

 

魚雷が発射され、比叡は回避行動に移る。そして座礁ポイントに入った。

しかし、比叡は止まる事なくポイントを通過した。

 

『比叡、座礁ポイントを通過!!』

「抜けられた!?」

 

すると比叡は晴風に砲撃を行う。

 

「撃ってきた!と~りか~じ!」

「と~りか~じ!」

 

比叡の砲弾は晴風の左舷後方の付近に着弾。至近弾だったため、着弾の衝撃波が晴風に襲い艦橋にいる全員がよろけた。

 

「至近弾!左舷後方に着弾!」

「損害は!?もう少しだけ頑張って!」

 

同じ頃、機関室では圧力計の針が振り切れてバルブが吹っ飛んで高温の水蒸気が出て来る。

 

「バルブ破損!!」

「ヤバイって!これじゃ速力維持出来ないよ!」

「わ~ってる!……まだか艦長!」

『マロンちゃん!!あと、一〇分!!一〇分だけ持たせて!!』

「分かったけどよぉ!!本当に一〇分で片を点けねぇと、エンジンがぶっ壊れるぞ!!」

 

そう言い、晴風の機関も徐々に限界が来ていた。もともと試験的に載せられていた高圧缶は壊れやすく、駄々をこねることが多かった。

 

「比叡、第二ポイント。侵入を確認!!」

「艦長!今度も抜けたらどうする!?」

 

真白が明乃にそう尋ねる。

 

「まだだよ!!まだ終わってない!!」

「しかし、艦長!もう……!」

「越えられない嵐はないんだよ!!」

「……」

 

明乃の叫びに真白は何かを感じた。

すると真白はある事に気づく。

 

「っ!?さっきと同じ場所に戻ってる!?ここでは座礁しなかったぞ!?」

 

晴風と比叡は交戦しながら環礁地帯をぐるりと回ってきていた事に気づく。まるでハムスターの回し車のようにこのまま逃げ回るつもりなのかと思っていると明乃が叫んだ。

 

「ひめちゃん、今!!」 

『了解!!』

『バラスト排水!!』

 

和住と青木が明乃の命令を聞き、船底部のバラストを捨てる。

 

「艦長、バラストを排水したら安定性が……!!」

 

真白は明乃にこのまま旋回に失敗すれば転覆の恐れがあると進言するが、明乃は無視して鈴に言う。

 

「鈴ちゃん!!速度一杯で!!」

「は、はい〜!!」

 

そう言い、知床は舵を握る。その間も砲撃は続き、比叡は回避をする。

 

「比叡、先程と同じコースに入りました!!」

 

すると山下が報告を入れる。その光景はモンタナでも確認した。

 

『比叡が先程と同コースを通過中!!』

「バラスト排水!撃てる砲は主砲以外全部撃て!!」

 

モンタナと晴風に挟まれながら航行する比叡の近くに二隻の砲弾が着水する。

晴風の機関室から悲鳴の声が上がり、限界を越え始めていた。距離が縮まった影響でより精密な射撃を行うようになり、比叡はさらに舵を切る。

 

 

 

 

 

そしてそのまま晴風を追いかけようとした時、比叡の水平だった艦橋が轟音と共に左に傾く。

 

『比叡の座礁を確認!!』

『傾斜角一〇度を越えました!!』

『比叡の機関停止を確認!』

 

報告を聞いてサクラは射撃指揮所から叫ぶ。

 

「強襲部隊、突入用意!バラスト戻せ!本艦を比叡の真横に!!」

『『『了解!』』』

 

そして喫水が戻り、比叡の真横に止まるとモンタナの甲板から簡易タラップが渡され、比叡に完全武装した強襲部隊が突入した。比叡の主砲は座礁時の衝撃で安全装置が作動して全ての武装が使えなくなっており、脅威はないに等しかった。

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