ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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二一話

比叡を座礁させ、モンタナから強襲した主計科メンバーはM3A1短機関銃を向ってくる比叡生徒に向かって放つ。

 

ダダダダダ!!

 

別名グリースガンやらケーキデコレーターと言われているその独特な見た目の短機関銃は先端にフラッシュサプレッサーとドットサイトを取り付け、現れる比叡の生徒に装填された9mmゴム弾で射撃をしていた。

 

「体と足を狙え!くれぐれも頭に当てるな!!」

 

部隊の隊長を務めるエリーが叫び、指示通り体に銃弾を当てて相手を倒す。

向こうはは生身の人間。それに対して完全武装の此方。勝てるはずもなく、次々と比叡の生徒は倒されていった。その様子はまるでゾンビ映画のワンシーンのようだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

突入した部隊からの報告をサクラは聞く。

 

「艦長、強襲部隊が機関室と艦橋を抑えました」

「了解…ワクチン投与の方は?」

「シアが晴風の船医と共に順調に進めています」

「そうか……」

 

艦橋で報告を聞くとサクラは一息吐く。

 

 

 

アメリカの海洋学校の学生艦ではもしもの際に自らを守るために生徒一人に二丁まで銃の常時携帯及び持ち込みが許可されている。それは自分用の物が大半で、かくいうサクラも学校から支給されたM1911とは別に自前の銃を持ち込んでいた。

学生艦には常にゴム弾とM3A1短機関銃が置かれ、海賊の接近戦にも備えて常に訓練をしていた。

そして十分後、新たな報告がモンタナに入る。

 

「艦長、比叡の乗員全てにワクチン投与が終わりました」

「よろしい、ブルーマーメイド艦が到着するまで艦内の鼠もどきの捕獲と消毒作業を行なってくれ」

「分かりました」

 

そう言うと、比叡に海から直接汲んだ海水が掛けられ、艦内の消毒作業が始まり、甲板ではワクチン投与を受けた比叡の生徒が横になり、突入部隊がワクチンを投与されていた。

 

「これでひと段落ですか……」

 

サクラは比叡の甲板を見ながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

比叡の艦内を突入部隊が入ったのを晴風は視認。銃声も当然聞こえていた。

 

「え?銃声!?」

 

艦内からゴム弾の銃声を聞き、西崎が驚く。

 

「まさか……あの部隊達は生徒を撃ち殺しているのか………?」

 

と言ってまさかと思っていたが、徐々に中からぐったりと倒れた様子の横須賀女子のセーラー服を着た生徒が突入したモンタナの生徒に担がれて出てくると真白達はホッとしていた。そして、そこで真白は疑問に思った。

 

「でも、何故比叡は座礁したんだ?最初にあそこを通った時、比叡は座礁しなかったのに……」

 

座礁した比叡を見ながら真白が呟いた。すると明乃が真白にその答え位を言う。

 

「それは、潮の満ち引きだよ」

「潮の満ち引き?」

 

すると明乃は納紗を見ながら言った。

 

「そう、ココちゃんのお陰だよ。オンラインの海図だったから水深の変化はリアルタイムで分かったし」

「なるほど、前に通った時より潮が引いて。水位が下がっていると」

 

ミーナが興味深く明乃を見ながら伊良子たちの作ったおにぎりを口に入れる。

 

「そこまで想定していたのか……」

 

それを聞き、真白は驚愕した表情で明乃を見ていた。

理性が落ちた事で比叡は一度通過した海域の水深が下がっている事に気づかなかったのだ。

まさに時間と運が重なった奇跡の作戦だった。

 

「私達が助けたんだよね?」

「トラック諸島と比叡と、両方とも」

「うちの艦長って、結構いけるくちなのかな?」

「その褒め方おかしいから」

 

晴風の後方で座礁し、沈黙している比叡を見てそう呟く晴風のクラスメイト達。

未だに比叡を止めた現実を受け入れられていなかった。

 

「私…今、艦長…だったかな?」

「ええ…まぁ…らしかったです…幾分ですけど……」

 

そう言うと真白は遠くからやって来る一隻のインディペンデンス級沿岸戦闘艦を確認する。

 

「げっ……!?」

 

その艦影を見た真白は顔が引き攣っていた。

 

「ま、まさか………」

「?」

 

すると接近してきた漆黒のインディペンデンス級の甲板から黒いブルーマーメイドの服を着て、マントを羽織る一人の女性が飛び出した。

かなりの高さがあったと言うのに痺れひとつ感じさせない着地に、明乃達は驚いていた。

 

「私はブルーマーメイド強制執行課の宗谷真冬だ。後はまかせろ……」

 

すると自己紹介をした真冬は明乃達の後ろで顔を俯かせている真白を見つけた。

 

「おお!真白ぉ!」

「ね、姉さん………」

「シロ、久しぶりだな、おい!」

「ね、姉さん……やめてよ!」

 

ねちっこく妹に絡むその姿はまるで面倒な上司に酒を押し付けられる部下のようだった。

 

「なるほど、名字が同じですしね」

 

納沙は真白と真冬の名字が同じであり、真冬と真白の目元が似ていることから、二人が姉妹であることに納得できた。

 

「二人とも仲がいいなぁ~」

 

明乃は真冬と真白の二人の様子を見て、仲のいい姉妹であると感想を言った。

 

「縮こまりやがって、姉さんが根性を注入してやろうか?」

「根性…注入?」

 

初めて聞く言葉に疑問に思った明乃。

 

「いらない!!根性注入なんて!!」

「お願いしてもいいですか?」

「ば、バカやめ………」

 

明乃の上進に真白は冷や汗を掻く。

 

「おう!任せとけ!」

 

真冬は既にやる気満々の様子。しかも、何故か拳を鳴らしていた。

 

「覚悟はいいな?」

「はい!!お願いします!!」

 

周囲のクラスメイトたちは緊張した面持ちで、事の成り行きを見る。

 

「よ~し!!まずは回れ右だ!!」

「はい」

 

クルリと体を回すと真冬は手を拡げる。

 

「行くぜ……」

 

真白は何やら気合を入れて構える。すると…

 

「根性……注…入―――!!」

 

真冬は明乃のお尻目掛けて両手を前に出す。

すると、お尻を揉み出す。

 

「根性、根性、根性……ってあれ?何で?シロが?」

 

妹の真白は当然、姉である真冬の『根性注入』がなんであるか知っている。真白は、明乃をかばい代わりに犠牲になった。

 

「こんな辱しめは、身内で留めておかないと……」

「ふ~ん、お前がいいなら構わねぇが……船乗りは尻が命だからな!!」

「ちょ、やめて!!」

「おお!?ちょっと柔になってね~か?この尻!」

「やめて!!姉さん!!」

「こんな、尻じゃシケる海を越えられねぇぞ!おらおら、根性!根性!」

 

本来の目的である明乃へ根性を注入する筈が、妹の真白に代わってしまったが、それでも真冬は止めなかった。

 

「おらおら、根性!根性!」

「止めて!!」

「もう、一根性だ!!」

「姉さ〜ん!!」

 

結局、真白は真冬に尻を揉みくちゃにされていた。

 

「ごめんね……シロちゃん」

 

明乃は庇ってくれた真白に最大限の敬意を称した。すると甲板に怒声が響く。

 

「ゴルアァアア!!何、ミケちゃんに晒しとんじゃぁああ!!」

 

その怒声を聞いて思わずビクッとなり、その方を向くとそこには両手にM3A1短機関銃を持ったサクラが口から息を吐き出していた。

 

「あ……不味い……!!」

 

明乃はサクラが怒っているのだと理解した。

おそらく内火艇からこの様子を見ており、真白が明乃の代わりにセクハラを受けている事に気付いて居なかったようだ。

 

「サクちゃん!違う!違うから!!」

 

咄嗟に明乃は言うとサクラは明乃を見た。

 

「え?」

 

明乃を見てサクラは持っていた短機関銃をしまった。

 

「代わりにシロちゃんが犠牲になってくれたから……」

「あ、そうなのね……」

 

絶賛尻を掴まれた状態の真白を見てサクラは状況を理解した。

 

「ごめん……」

「ううん。紛らわしいことした私も悪いし……大丈夫だから……」

 

そう言い、取り敢えず大惨事になる事は避けられた。

それを見た真白達は……

 

「「「(サクラさんを怒らせちゃ絶対にダメだ………)」」」

 

そう感じていた。その後、サクラは嫌そうな表情を浮かべながら真冬に報告をして、真冬に怪訝な目をしながらそのまま帰っていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

サクラの暴走寸前まで行った所を明乃が収めた後、真冬と明乃は面と向かう。

 

「これから、比叡は他の艦艇が寄港する。お前達はどうする?」

「如何しますか、艦長?」

 

真冬の問いに真白が今後の方針を明乃に聞く。

 

「私たちの任務は行方不明艦の捜索です、クラスメイトに依存がなければ私たちは引き続き捜索を行います」

 

明乃はそう答える。

 

「よ~し、よく言った!ただ無理はしない様な!無理だと思ったら、すぐに連絡を入れて避難しろ。本来これは、私たちブルーマーメイドの仕事だからな」

「はい」

 

すると八木が甲板に上がって報告をした。

 

「艦長!!広域通信に行方不明になっている学生艦らしき艦船の目撃情報が複数入っています!!」

 

八木から渡された通信文の紙を明乃と真白、真冬の三人は見る。

 

「南方200マイル。アドミラルティ諸島と北東300マイル、トラック諸島方面か……」

 

場所を聞き、少し考えた後に真冬が言った。

 

「よし!我々は、トラックへと向かう!すまないが、近場のアドミラルティ諸島を確認して貰えるか?」

「分かりました!」

 

こうして、晴風はモンタナと共にアドミラリティ諸島に向かっていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

トラック諸島から出発した晴風艦橋では……

 

「よーし!やるぞ~!」

「単位よーけ貰えるぞな!」

「ねぇねぇ!ひょっとして、私達って結構やるんじゃない?」

「そうそう!比叡って、すっごい艦なんだよね。それを止めたって凄くない?」

「下剋上…」

 

比叡を止めた事実を受け止め、興奮状態になっていた。そんな興奮状態の晴風を真白が宥めていた。

 

 

 

 

 

同時刻 モンタナ 艦橋

 

トラック諸島から出港し、アドミラリティ諸島に向かっているモンタナの艦橋ではある通信を受けた。

 

「そうか……」

 

報告を聞き、サクラ達艦橋メンバーは寂しく感じる。

 

「グアムへの寄港命令……」

 

次のアドミラリティ諸島での戦闘を終えた後の行動についてだった。

この命令でもサクラが直接働きかけて、本来の予定から数日遅らせての事だった。本来はトラック諸島を出た後すぐにグアムへと向かう予定だった。サクラはそこで報告を聞き、相手がシュペーだと確信した上で晴風には荷が重いと言って上に説得をして予定を伸ばしてもらっていた。

 

「まぁ、そろそろ始まるからね……」

 

通信を聞き、エマは納得の色を見せる。

 

「……武蔵捕縛作戦…ですか…」

「「「……」」」

 

ネルが言うと全員の顔が曇る。

事前にブルーマーメイドやアメリカ政府及び日本政府からの通信でモンタナもその武蔵捕縛作戦に参加することが既に決まっていた。

武蔵に対抗できる戦力の中核としてモンタナはグアムのアプラ港で改修作業に入る事が決まっていた。

主な改修内容はミサイル発射筒の増設と、システム調整にアスロックランチャーの改装だった。他にも艦載機の変更なども行う予定となっている。

 

「まぁ、ウチらもずっと損傷したまま航行できんしな」

 

そう言いながらブルーシートに覆われた一基の五インチ連装砲を見ながらルイーザが言う。

前の武蔵戦闘時に破壊された連装砲はずっとボロボロの状態で放置されていた。武蔵の直撃を受け、完全に破壊されており、直ぐにでも修理しなければならないが、よくここまで頑張っていると思っていた。

 

「まぁ、シュペーが見つかるまでウチらは出来ることをしよう」

 

サクラの一言に全員が頷いていた。

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