モンタナにグアムへの寄港命令が出てから数日後
アドミラルティ諸島北海域
通信を受け、現状武蔵の次に強い火力を持つアドミラル・グラフ・シュペーに対処する為にモンタナと晴風は向かっていた。
「艦長」
深夜、モンタナ艦橋で当直のケイリーが片手にコーヒーを持ちながら声をかける。
「あぁ、有難う」
ケイリーからコーヒーを受け取り、同じく当直のサクラは飲んでいるとケイリーが聞く。
「ねぇ…シュペーと戦闘になった時。どうする?」
「そうねぇ…確か、晴風にはシュペーの副長がいたっけ?」
「はい」
通信を受け、サクラは少し考える。晴風には荷が重いと言って半ば無理やりついてきていたモンタナ。実際、晴風は一度戦って逃げるのに精一杯だった。そこでサクラは少し考えた後に呟く。
「明日……晴風の所に行くか…」
そう呟くとサクラは舵を握りながらミーナをこちらに移乗させて晴風を離れさせようかと思っていた。
翌朝 晴風 船内教室
翌朝、ミーナを移乗させる為にサクラは晴風に乗り込んでいた。
「今日は、皆に話したい事がある」
朝食のために全員が集まったところでサクラは口を開く。
「これから捜索を行う艦艇がアドミラル・シュペーだった場合。向こうの火力と練度、安全を優先して晴風には退避してもらおうと思っている」
「「「えぇー!!」」」
サクラがそう言うと全員が驚いた声を上げる。その中には不満を漏らす者もいた。するとサクラは事情を話した。
「君達も知っているだろうが、シュペーは巡洋艦並みの船体に直教艦並の砲を備えている。おまけに相手は私たちと同じ二年生。向こうのほうが晴風よりも練度が高い。恐らく……いや、この前の比叡よりも危険だろう」
そう言うと晴風メンバーは驚いた声を上げた。
「えっ!?サクラさん。二年生だったんだ……」
「じゃ、じゃあミーちゃんも?」
「てっきり同学年かと思っていた……」
そう言う晴風メンバー。するとサクラはミーナを見ながら言った。
「……と言うわけですので。ヴィルヘルミーナ副長、もし発見した艦艇がアドミラル・シュペーだった場合。我々のモンタナに移乗する事はできますか?」
「あ、あぁ……」
晴風のメンバーやミーナにも納得してもらい、サクラは次に明乃と真白を呼び出していた。
「サクちゃん、どうしたの?」
「何故、私たち二人だけを呼び出したのですか?」
晴風に止めたスキッパーの前で二人はサクラに聞く。スキッパーに乗る直前に、サクラは二人を見て言う。
「……今回のアドミラルティ諸島でシュペーの奪還作戦を終えた後に我々はアプラ港に寄港することになった」
「「えっ…!!」」
サクラから伝えられる事実に二人は驚く。サクラはその訳を話した。
「いずれ行われるであろう武蔵奪還作戦の為の下準備と、修理を行うことになっている」
「武蔵の……」
いよいよ始まるのかと明乃達は息を呑む。
「……今まで、色々と有難うございました」
すると真白はすぐに頭を下げた。思えば最初の叛乱疑惑の際、真っ先に駆けつけてくれたのがモンタナだ。それからと言うもの新入生の自分達を身を挺して守ってくれたのもモンタナ。感謝しきれないほどモンタナには助けられてきたのだと、二人は思いながらサクラに頭を下げた。
「サクちゃん。今まで、助けてくれてありがとう」
明乃がそう言うとサクラは二人を見て優しく微笑みながら言った。
「『海の仲間は家族』……それを教えてくれたのはミケちゃんでしょ?」
「……うん」
明乃は少し微笑みながら答えるとサクラはそのままスキッパーに飛び乗る。
「じゃあ、私はこれで帰るから」
「うん……」
そう言うとサクラのスキッパーは晴風から離れて行った。
アドミラルティ諸島近海に入り、モンタナと晴風は警戒をする。するとモンタナのレーダーに反応があった。
『レーダーに反応!数一!』
『射撃指揮所からも艦影見ゆ!識別帯は白と黒!ドイチュラント級直教艦です!!』
「見えたか……!!晴風に通信!それと、UH−1発艦用意!総員戦闘配置!」
「「了解!!」」
艦橋でサクラは叫ぶ。すると突入の為に完全武装した生徒達とシアは後部甲板に集まり、UH−1に搭乗していた。
「主砲配置よし」
『機関、いつでも全力発揮可能だ!!』
「ヘリコプター。発艦準備整いました」
『応急班、いつでも行けます』
「艦内緊急閉鎖良し、戦闘配置につきました」
報告を聞き、サクラは少し息を整えて命令を出す。
「よし…このままシュペーに接近し、砲撃開始する。アスロック全弾発射用意」
「アスロック発射用意!CIC、全部撃って!」
『了解しました。アスロック、全弾発射します!』
CICから報告が入るとサクラは被っていた艦長帽をケイリーに渡す。
「副長、ここを預けるわね」
「はい、お任せを…!!」
そう言い、サクラは艦長帽をケイリーに渡すと艦橋を降りる。そしてそのまま走って後部甲板に出るとそこではブレードが回転するUHー1と、その前で髪の毛を抑えながら待っていたミーナがいた。彼女はシュペー発見とほぼ同時にモンタナに移乗してもらっていた。
「ミーナさん。誘導を宜しくお願いします」
「ああ、任せろ」
そう言うと二人はヘリに乗り込み、ヘッドホンをつける。
「お気をつけて」
そう言うと扉が閉められ、アリスが操縦桿を握ってモンタナから離陸する。その様子を晴風ではバッチリと眺めていた。
「UHー1の発艦を確認しました!!」
「凄い、あんな風なんだ……」
「改めて近くで見ると凄い音ですね……」
「うぃ〜」
艦橋にいたほぼ全員が興味津々でUHー1を見ていた。両脇に備えたガトリング砲は少しだけ畏怖を与えていた。
「サクちゃん…ミーちゃん……」
しかし、明乃は飛び立ったUHー1を見ながら作戦が無事に成功する様に祈っていた。
一方サクラから指揮権をもらったケイリーはシュペーの動向に警戒していた。既にブルーマーメイド及び横須賀女子海洋学校から交戦許可は取っており、先制攻撃ができる状態だった。
「シュペーの様子は?」
『未だ武装は動いていません』
「まだ気づいていないか……主砲旋回!目標アドミラルシュペー!攻撃用意!」
「全砲門開け、射撃用意!」
砲塔が周り、仰角が付く。すると射撃指揮所から報告が入る。
『シュペー主砲旋回!撃ってきます!!』
「やはり気づいたか……」
「まぁ、この図体ですしね」
ネルがこの巨艦を言うと、続報が入る。
『シュペー発砲!』
「面舵!」
「宜候、面〜舵!」
直後にシュペーの28cm砲弾が着水。水柱が上がる。
「機関、最大船速!シュペーに近づけ!!」
「宜候!機関、最大船速!」
「主砲砲撃開始!撃てぇ!」
ドドドドォォォン‼︎
そしてお返しと言わんばかりにモンタナの16インチ砲一二門が一斉に火を吹く。そして、主砲発射と同タイミングでアスロックが発射される。
シュゴゴゴゴゴォォォォォオオ!!
一斉に放たれた一六発のアスロックは海面に着水し、シュペーに向かう。
「くれぐれも燃料パイプに当てるな!爆沈するぞ!!」
「了解」
どんどん接近していくモンタナすると船体に大きな振動が走る。
「うわっ!?」
「状況を報告!!」
『右舷前方に魚雷が命中!!』
「魚雷!」
シュペー後方の魚雷発射管から発射された魚雷がモンタナに命中する。
「聴音!魚雷に注意して!!」
『了解です!』
「艦長達は?」
ケイリーはここでサクラ達を乗せたヘリコプターの居場所を聞く。
『現在、島の奥で超低空飛行を行っています!あと二分後にシュペー上空に到着します!!』
「了解……砲撃続行!」
「副長!アスロック到達まであと五秒!!」
ルイーザがそう叫ぶとシュペーに演習用の短魚雷が命中する。
「アスロック!全弾命中!!」
「射撃指揮所!シュペーは!?」
すると報告が入った。
『……砲身、まだ動いています!!』
そして撃ち返してきたシュペーを見た。
「副長!あと一分でヘリが到着します!!」
「ヘリコプターが飛び出したのと同時に砲撃するわよ!!ネル、逐一報告!!」
「了解、照準。シュペーの左舷に調整します!」
ルイーザが報告を聞き、少し照準をずらした。
「到着まであと三〇秒!……二〇秒!……一〇秒!」
「撃てぇ!」
ドドドドォォォン‼︎
ヘリコプターが島の影から飛び出した直後、モンタナが発砲する。
UHー1ではシュペーの真横に出た直後にエリーがUHー1に取り付けられていたドアガンであるM134ミニガンを発射する。
ブォォォォォォォォオオオンンン!!
毎分2000発の速度で放たれる.280ブリティッシュ弾は甲板にあった37mm砲を破壊する。
「うわっ、凄い弾薬消費量」
その後ろでエリーと同じ主計科の突入班が排俠袋に溜まっていく空薬莢とクリップを見ながらそんな事を呟いていた。
そしてそのままUHー1はシュペーの右舷側の真上にホバリングするとアリスが言う。
「降下開始!!」
「了解、これより降下する」
そう言うとサクラを含めた八人はハーネスを降ろし、そこからエリー達が最初に降りる。そして最後にサクラとミーナがロープを手に持つ。
「ミーナさん、行きますよ」
「う、うむ……」
空中からの降下にミーナは冷や汗を掻きながら答える。うちも初めはこんなんだったなと思いながらサクラはミーナと共にロープを伝ってシュペーに降りようとした時。
「っ!?不味い、高角砲です!!」
「「!?」」
シュペーに搭載されていた10.5cm連装高角砲がヘリを狙っていた。
「っ!?しまっ!!」
サクラ達は死を覚悟した。その時……
ドガァァアアン!!
ヘリコプターに向けられていた連装砲が突如爆発した。爆発した後、黒煙が上がる中。サクラは震えながら言う。
「い、今のは……」
するとアリスがバックミラー越しでその正体を言った。
「艦長!晴風です!!」
「ミケちゃんが!?」
思わず海を見るとそこには急速に接近してくる晴風の姿があった。
シュペーの副砲である15cm単装砲はモンタナからの激しい攻撃の影響で動いていなかった。
「ミケちゃん……」
サクラは予想外の増援にホッとしながら呟く。
「離れてって言ったのに……」
しかし、その表情はどこか嬉しそうでもあった。
お知らせ
裏方さんの指示で広告をするよう言われたのでここに書いておきます。
オリジナル作品で一応戦記物です。裏方さんが自分のアカを使って書いているので読んで欲しいです。
作者のボタン押して見つけてください。