アドミラルティ諸島にてアドミラル・グラフ・シュペーと交戦をしたモンタナは北上し、グアム島中西部にある港。アプラ港の軍港地区に接岸する。
既に軍港には幾つものクレーン船や補給艦が多数停泊し、モンタナが来るのを待っていた。
「グズグズするな!時間がないぞ!!」
接眼した途端にタラップを大勢の作業員が上がり、早速損傷した副砲群を全て取っ払っていた。
一〇分後にはモンタナに多数のクレーンが覆い被さり、改修作業が行われ始めた。
その作業に自分達も駆り出されていた事から余程のことがあったのだろうと思っていた。
すると、モンタナに通信があった。
「日本政府より通達……貴艦は改修を受けたのちに武蔵捕縛作戦。…通称、『パーシアス作戦』に参加せよ……」
報告を聞き、いよいよ決まったのかと思わず緊張する。
横で通信内容を先に聞いていたネルが聞く。
「艦長……武蔵には艦長の友人がいると聞きましたが……大丈夫ですか?」
その問いにサクラは答える。
「心配…しないわけないじゃないか……本当は武蔵にスキッパーで突撃しいたい気分だよ……」
「……」
サクラの心情を聞き、申し訳なくなるネルに対してサクラは答える。
「だが、モカちゃんも無事だと思っているよ……」
「…艦長……」
水平線を見つめ、そう呟くサクラにネルも思わず同じ方向を見つめていた。
モンタナがグアムについた頃、明石から補給と修理を受けていた晴風では……
「晴風艦長、モンタナから詫びの品だそうだ」
そう言い、クレーンから降ろされる物を見て明乃達は驚く。
「こ、これって……」
すると納紗が写真を激写しながら興奮していた。明らかに日本らしくない鉄板をはっ付けたような量産性に長けた見た目をしていた。
「凄いです!!これはMk.16 54口径5インチ連装砲ですよ!!」
そう言うと明乃達は驚いた声を上げた。
「それって……」
「はい!これはモンタナの副砲ですよ!」
「「「おぉ〜!」」」
モンタナからのプレゼントに明乃達…特に砲術員は興奮していた。
アプラ港にて改修工事中のモンタナの甲板でヘルメットを被りながらサクラはクレーンから降ろされるミサイル発射筒を見る。
「現在、Mk.141ミサイル発射筒を搭載中。システム調整も順調に進んでいる」
「分かりました」
艤装責任者の報告を聞き、サクラは納得すると今度行われる作戦について聞いて来た。
「なんだか、フィリピン沖に艦隊をまとめて集中運用をするらしいですね」
「ええ、パーシアス作戦はそのように聞いています」
「ハープーンミサイルで武蔵を穴だらけにするんでしょうか?」
「さぁ?私はそこまでわからないです」
そんな風に話しながらクレーンから発射機が降ろされ、耐熱板に据え変えられた甲板上にエリー達がミサイル発射機をボルトと溶接で固定していた。
その頃晴風では急遽マロンの提案で赤道祭の準備がされていた。元々は柳原が言い出した事であり、補給中の暇潰しがてらに企画をしていた。
「出し物何やります?」
「えぇ〜、やるのぉ〜?」
そう納沙が言うが西崎達はあまり乗り気ではない様子であった。…と言うのも柳原と納沙以外のほとんどのメンバーは赤道祭ではなく他の好きなことを各々していた。そんな中、艦橋に黒木が上がって来た。
「艦長!き、機関長が……」
「ん?マロンちゃんがどうしたの?」
「き、機関長が…その……拗ねました……」
「「……はぁ?」」
黒木の発言に艦橋にいた全員は顔がポカーンとなっていた。
「だから!機関長が拗ねました!」
「なぜ、そんなことに……」
と、真白が言うとこうなるまでに経緯を話した。
「成程、自分の思うようにならなくて拗ねたのか……」
「そうだね、あまり任せっきりにした私も悪いね……よし、私も手伝うから赤道祭をやろう!」
と言って明乃達は赤道祭の準備を始めた。
モンナタとシュペーが撃ち合っている頃。東京にあるブルーマーメイド日本支部ではとある作戦が立案されていた。
「検査の結果、ウィルスに感染した生徒は正常に戻ったわ。モンタナが先日行った比叡への強襲。鏑木美波、シア・コトー。両名が開発したワクチンも例のウィルスに効力があることが実証されたわ」
そして映像には体調が完全に戻った比叡乗員の映像が映されていた。
「凄いですね!」
「表彰ものです!」
その報告を聞き、ブルーマーメイド隊員たちはその結果を誉めていた。
「さぁ、私たちも学生達に負けていられないわよ。まだ行方不明になっている学生艦は残っている……ワクチンの量産が済み次第、パーシアス作戦を展開するわ」
すると真霜は行方不明の艦艇の名前を並べた。
「現在、行方不明になっている学生艦は鳥海、摩耶、五十鈴、天津風、磯風、時津風。そして武蔵……」
写真が映され、全員の顔が強張る。
「そして、これらの艦艇は全てが南洋にて確認されているわ。現在、べんてんが捜索を行っているけどなるべく早く見つけるわよ」
そう言い、会議は解散となった。
パージアス作戦の内容は横須賀女子海洋学校の真雪にも伝えられた。
「今後はブルーマーメイド主導で作戦を展開するとの事ですが……学生艦にも協力の要請が来ています」
相手は武装している艦なので、作戦はあくまでブルーマーメイドの主導の下で行う事になっていた。
「生徒に負担はかけたくないけど、感染の拡大は何としても防がなければ……艦の現況は?」
「浜風、舞風は、既に学校へ戻って来ております。長良、浦風、萩風、谷風、明石、間宮、そして晴風とモンタナは依然、行方不明の学生艦を捜索中です」
「生徒たちの様子は?」
真雪が問うと教員は報告を入れる。
「今のところ問題はなく、ウィルスに感染している様子もありません。定時連絡、ビーコンの位置情報は共に行なっております。
それと先日、学校へ殺鼠作業に入った業者から校内における例のネズミは完全に駆除したと連絡がありました」
「そう、分かったわ。ありがとう……捜索に出ている学生艦には引き続き、行方不明になっている学生艦の捜索をたのんで頂戴」
「分かりました」
そう言うと教員は出て行き、真雪は大きく息を吐いていた。まさか、新入生の海洋実習でこんなことが普通あると思うだろうか。
おそらく、これからの海洋実習にも大きな変更があるだろうと予想しながら、真雪は疲れた様子で息をもう一度吐いていた。
アプラ港にて改修作業中のモンタナではパージアス作戦の為に艦載機にも変更が加えられていた。
既に組み立てられた二機のヘリコプターが既に岸壁に置かれていた。
甲板では操縦手のアリスとクラウ・ロムが送られて来る機体を見ていた。
「あれが新しいやつか……」
「今までよりも運動性能が抜群に良いわね……」
「まぁ、攻撃特化型のヘリコプターだしね〜…」
同機種、二機のヘリコプターを見て二人は改装中のモンタナ後部甲板を見る。
「今、甲板を増設して二機同時に発艦出来る用にするんだってさ」
「まぁ、今回だけの緊急改造らしいけどね」
そう言い、取ってつけたように溶接が行われている甲板を見ながら二人は言う。
「今度のパーシアス作戦……相手はあの武蔵か……」
「前回は晴風の艦長が飛び出した影響で活躍できなかったからな。今度は戦果を上げたいねぇ」
そんな風に言いながら二人は武蔵とタイマンでやり合ったモンタナを思い出す。
「いやはや、あれでよく無事でいたもんだよ」
そう言い、主砲塔が破壊されなかった事にアリスは奇跡だと言った。
前回の武蔵や比叡、シュペーとの砲撃で壊れた5インチ砲塔は新品に換装され、新たにファランクスが増設されていた。
「まさか、湾岸戦争の時みたいな改装をするなんて……」
「しかも武装はあの時よりも乗っけるて言うね……」
今から数十年前に起こった中東地域でのイラクによるクェート侵攻。それに起因するアメリカ、日本、イギリスを中核とした多国籍軍が石油資源を守るために起こった戦争である。
欧州動乱以降、最大規模で起こったこの戦争は同時に最大規模の戦車戦、艦砲からの砲撃を受けていた。そして、公式記録上、ヘリコプターが世界で初めて小規模だったが実践投入されていた。
洋上に展開したのはモンタナ級四隻と大和型四隻。計八隻による一斉砲撃で敵陣を木っ端微塵にしていた。
教科書で習った歴史を思い出していると二人の元にサクラがやって来る。
「二人とも、ちょっとこっち来て」
「はい」「何でしょうか?」
そう言い、サクラの呼び出しを受けた二人はサクラからある要請を受ける。
「二人にはモンタナが出航するまで、武蔵捜索のための偵察任務を陸軍の人と行って欲しいの。お願いできる?」
「分かりました」「了解です」
「負担を強いる事になるけど、宜しく頼むわ」
そう言うと二人はグアム島に存在するヘリコプター基地まで移動すると、そこでレーダー装備を乗せたOH−56ヘリコプターに乗り込み、他の偵察隊同様に離陸をしてフィリピンに向かったであろう武蔵の捜索に向かった。
サクラはアリス達パイロットメンバーに偵察命令を出し、工事中の甲板を歩く。
航海科と主計科、機関科は改修作業の手伝いを行なっており。砲雷科は新しく取り付けられたミサイル発射筒のシステム調整を行って、ミサイル発射までの戦闘訓練を行っていた。
相手はあの武蔵。大和型の堅牢さは誰もが知っており、これには一種のテストも兼ねているのだろう。
トマホーク巡航ミサイルやアスロック、ハープーンでどれだけのダメージを与えられるのかの……
なんだか事件を利用した漁夫の利のような気がして気は良くないし、モカちゃんが怪我するかもしれないと思うと積極的な攻撃は躊躇してしまう。
「はぁ〜、やれやれ。政に巻き込まれるのも癪だわ」
元々、モンタナは日本に留学することを前提として下準備がされて来た。クラスは通常より一〇人増やして四一人に増員。飛行船を撤去した後にヘリコプター搭載のための準備を整え、副砲を二基撤去してアスロックランチャーを取り付けた。
実際、ハワイのブルーマーメイド本部ではモンタナが送り届けたUHー1が試験運用を始めていると言う。湾岸戦争で実戦経験をして、その有用性は証明されている。
飛行船よりも早く、この前のしんばしの救助作業で避難民を救助した際。中型飛行船よりも小さい機体に中型飛行船と同じくらいの人数を乗せていた。
水素を使わないので爆発する可能性も低く、ガスが漏れることもない。元々水素やヘリウムを入れていた場所に燃料を入れていたので改造も簡単に終わる。おそらく来年くらいには採用が決まって調達が始まるだろう。
「いずれは変わるのかねぇ……」
そんな事を呟きながらサクラはモンタナを見ていた。